コネクト  創造する世界

AAA

創造する世界 仕掛け 

 NPCの調整はできた。


「……」


 重要そうな所には招待状は配り終えたし、嫌がらせみたいなギミックはある程度は終わっている。


「……い、……」


 残り後5日まだ微調整は効く。まぁ今更参加条件の最低プレイ1440時間にできるゲームもなく。後は適当にたちの悪い奴を増やしていくだけだ。


「おい、大空」


「あっ、なんだ」


 こいつは同期の、渡利わたり。大学の同期で数少ない話し相手だ。


「なんだじゃないだろ。お前本当に大丈夫か? 共同研究だがせいだと思うが、大分やばい奴にみえるぞ」


「まぁ、やばい奴なんだけどな。毎日医者に診察を受けてるし」


「日当3万で3食寝床つき。やることはVRにこもり続けるだけって、その辺の怪しいバイトよりも危ないぞ」


 まぁ、同期にそう言われても仕方が無い。


「付け加えると、睡眠時間もVRで、食事以外や今日みたいな講義以外はVRに居ないと罰則金だけどな、食事も胃が弱くなりすぎて流動食しかくえんし」


「でも、論文に連盟でのって、さらに2ヶ月で200万、そして3ヶ月目も金はいるんだろ。今度は3食まともで」


「ただし今度はVR禁止だけどな」


 浪人前の受験時ぐらいか、そんぐらいVRやらないの。


「まぁそこはいいだろ。しかも単位も貰えるんだろ優で」


「まぁ、それぐらい貰わないと結構きついからな。朝起きると体重いし、あと管も繋がれて何かやばいって感じるし。俺はこれでプラシーボ効果を知った」


「へぇ~でもその分、試験が終わったら旅行に行くんだろ」


「あぁ、金剛グループの就職だから福利施設で安くなるんだっけ? 」


「そう、おかげで学費と生活費を含んでも余裕だからな」


 まぁこれは、半分本当で半分嘘なんだけどな。


 論文の連盟とかは本当、だけど金は体の維持費に使っているから殆ど残らない。


 金剛グループに就職は本当だが、別に金剛グループの施設は使わない。


 そもそもこれだって、体のいい言い訳ができるように、研究しませんかと持ち込んだのであって本来ならばやっていなかったことだ。


 まぁそのおかげで仮想にこもれるし、日当も全て安全に全振りしたおかげで体の調子はすこぶる最悪だ。


 仕様的に酷いが、現実の環境を限りなく良くすることで、仮想世界での反応が上がることがこれまでの実験でわかった。また現実で体の維持を機械に任せると【現実に復帰したときに体の動かし方を忘れることが実験でわかった】


 その結果、VRでの身体の向上は【脳の無意識領域】を利用していることがわかり、生命機械学との関連性がこの度の研究でわかった。


 つまり健常者が機械に維持を任せる事により、今までの人という都合で限界だった何かが変わる可能性が出始めた。


 まぁようは、薬や極限状態でなくても自分の意思で体の限界を超えられる可能性が出てきたというわけだ。これにより体も限界に合わす形で作り替えられるかもしれない。


 あるものはこれを人類の進化といい、これを今論文に書いている教授は少なくとも何かしらの賞は取れるだろうと言われている。


 今回のこの実験には、医学、生命機械学、心理学、人間科学と結構な数の専攻が参加し。その中の幾つかの分野で論文に名前を載せる許可ようは連名の許可を貰っている。


 まぁ、連名にしたとしても生命機械学ぐらいしか、使えなそうだけどな。


「……、おい、またか」


「あぁ、悪い」


「たく、気をつけろよ、ぶっちゃけお前【他学科の移行も有力視されてるし】特に心理学部の方は他大学の教授と話し合いを初めて、学長との話し合いも始めてるらしいし」


 痛い誤算だよな、こっちの疎かにしすぎてあっちに集中したばっかりに航空宇宙工学科からの印象は悪いし、部活サークル系は少なくとも何人かはそっち系の大学に行くし。


「というか、コネクトが何でもできるからって、他大学と共同研究を始めたらそら教授も引き抜くわ」


「いや、でも学科も違うし」


「学科どうこうではなく研究にまで発展させて、しかも連名に載ったらそらそうなるよ。俺たちまだ1年生よ。おまけにその研究がでかい賞を取る可能性もあるし」


 まぁ正直今になって思えばやりすぎたわな。でもなぁ……


「まぁとりあえず、試験終わりはお前持ちで飲み会な」


「くっそ高いところにして恥を掻かせてやるから覚悟しとけよ」


「はん、何人も呼んでバイト代を溶かしてやるよ。それじゃあ俺は次の講義をとってるから」


 そういい、渡利はどこかに行く。


「もう少し馴染むのが早ければ、付き合って貰ってたのだからな」


 自分に対する印象がわかるのは、こいつと、この前研究室で青ざめ居た奴ぐらいだ。他のはどうでもいいか、関わりたくないか。まぁどちらでも変わらないだろう。


「後、3時間か」


 本来は合間に他大学の講義をとっていたが現状がこれなので、出席を不問にされている……というか実験に付き合う代わりに単位を貰っているから行く必要性を感じない。


「金剛やロックにも招待状を送ってるしな」


 わかっていたとは言え、話し相手もやることも終わらせれば暇だな。


「かといってサークルに言ってもこの時間帯は誰も居ないし……まぁ暇だし向かうか」


 そう独り言を呟き、サークル室へと移動していく。


 構内を歩けば、数人程度はひそひそとこちらを見て会話をする。


「あれが例の……、……」


「……、何でも……」


 関わりの無い人間の何が面白いのか。


 そうして部屋につき。誰も居ない部屋で考え事を始める。


「ふぅ」


 運動しないからか、10分程度の移動でも疲れがみえてしまう。


 とりあえず、サークル用のPCで現状を確認する。


【NPCを守る会】1月前にできたそれは色々と物議を醸している。


 内容はこうだ。今回のイベントで【各ゲームから何人かのNPCを借りた】当然その間そのNPCは居なくなる。


 借りたNPCはおおよそ2000人、そのNPCに感覚共有を行い【五感を覚えさえた】


 五感の覚えさせは簡単だった。NPCがPCと感覚を共有している間に本来は無かった部分を全て覚えさせただけだ。                              


 まぁそのせいでNPCの容量はかなり増えたが、問題にはならないだろう。


 問題はNPCの物語だ、NPCを利用する上で脚本家に専門のシナリオを作って貰った。


 またNPC個々にフレーズを数十作って貰い、1日数回元の世界と喋れる機能をつけた。


 またNPCが居るゲームにイベント専用クエストを作り、そこでNPC強化イベントを作った。


 問題はその強化イベントを快く思わない連中がその周辺地域を破壊したことだ。


 数百のゲームのうち30を超えるゲームが襲われ、その全てが瓦礫となった。


 勿論その情報は日本中で公開放送され、また【それように作ってあった別イベントも動き出すことになった】


 ギミックは2つ、1つ【シミュレーションによる未来学習】もうひとつは【NPCのコネクトシステムの適用】


 未来学習は簡単だ、NPCの行動原理や成長を数百倍のスピードでまわし、それを戻すだけだ。


 当然戻した場合、時間軸にズレが生じる。簡単に言えば、日時設定を弄った異物が存在することになり、ネットワークで自動日時設定を行っている場合、修正の対象となる。


 だから修正されないように、グラフィックを変更しシルエット状にし、それを適用した。これで仮に【未来から来る人物が居てもシルエットで表示されることになった】


 続いてコネクトの接続、いつも通り、わかりやすいTRPGのシステムの幾つかをNPC2000人分に付与した。


 またゲームのイベントも変わった。NPCが死んだことや町が破壊されたことにより、そのゲームでPCが明確な敵と認定され、以降【そのゲームのアカウント持つ場合敵対されるようになった】


 そして一番の問題は、このNPC達に対して可哀想と訴えてきた団体が出てきたことだ。これがNPCを守る会だ。


 こいつらの活動は簡単で、まるでペットを見るかのように可哀想、可哀想といい。こんなことは辞めるように訴えかけて来ている。HPでは潰されたゲームの写真を載せ、その場所で『NPC反対』のプラカードを掲げている。


 当然そんなのは通るはずもなく。むしろ懇切丁寧に教えた結果【こちら側についてくれた】


 HPを読めば今日もまた、潰そうとしたのを防衛した等の記事があり、また強化クエストへの参加も持ちかけている。


 ここで問題になったのは【現実世界への影響】だ。かたや、数億の借金【不正による罰金】が現実的にありそれをやり過ぎだと思った団体が少しでも返せる可能性を高くしようとして行動し、かたや、不正利用をした犯罪者のせいで自分のやっていた世界のキャラクターが奪われ、それを取り戻そうとする行為。


 さてどっちが正しいのか。それは今も議論されている。


 ここまで話題が大きくなったのは金剛空海、スカイアースのイベントだからではない。映画のように物語を作り、それを周りに認知させたからである。


 NPCを守る会でもその動画は見られる。無理矢理送られて戸惑うNPC、告げられる容赦のない説明。強制でやらされる訓練。最近では村を滅ばされたときのNPCの叫び声や怨嗟の声も上がっている。


 ようはここの奴らは映画同様、【NPCに感情移入してしまったのだ】当然この団体にも招待状は届けているし、ライト層の招待状もどちらかと言えばNPCを保護するプレイヤーに行き渡っている。


 ようはここに来て、味方が増えたのだ。だから自分もたまに見てはコメントを残し、NPCを救うようにモチベーションを上げさせている。まぁどうせ【全て居なくなるんだし】後のことはそのゲームの運営に任せているがさてどうなるか。


「さてどうするか」


 現状はほぼ整いきってる。【必要な物】は揃えたし、もうステージも【満杯になっている】


「やることがないんだよなぁ」


 まぁしいて言うなら……


 手の感覚を確認する。


 グーパー、グーパーと手を動かす。そして……


 チョキの動きをしようとしても手が殆ど動かない。


 1つの指を動かせるのは人差し指ぐらいだ。他の手は指と連動してしか動かすことしかできない。


 これは最終調整の弊害だ。【人間の壁を越えようとしたら、うまく動かせなくなった】


「まぁなんとかなるだろ」


 一応、医者に診せてギリギリ大丈夫と言われる程度のラインをせめている。


「……」


 確認したところで何にも変わらないがそれでも指を動かし、元通りに動かそうとする。


「実際はどうなるんだろうなこれ? 」


 自分より優れた人間なんて腐るほど見ている。自分が追い付けない存在というのも知っている。


 それを先読み先読みで潰していっただけだ。それでも、協力者の知恵にはかなわないし。今この瞬間でさえ、抜けはないかと確認しないと、恐怖で体が震えるときがある。


 NPCを使った結果、大惨事になったらどうするのか?


 仮に植物人間が出たらどうするのか?


 そもそも人が集まらなかったらどうするのか?


 途中でやられたら? バグって進めなくなったら? 強制終了がかけられたら? 


 考えれば考えるほど不安が増す。それで過剰な防衛をする。ここ数日はその繰り返しだ。


「……」


 振り替えるには遅すぎる。もう代償を払っているのだ、なら後はもう進むしかない。


 それがわかっていても、体は否定を始める。


 こんなことは辞めろと、諦めろと。


 そういう思考になる度に顔を叩き思考を治させる。


 恐らくこの考えは直前まで持ち続けるだろう。


 ……


 夢を見ている。最近は同じ内容なのでいい加減記憶してしまった。


 自分は狭い空間に一人ポツンといて、上から大量の群衆に見世物にされている。


 自分が見えるのは上だけで、下も左右も自分の昔の映像が流されている。


 自分はただその空間に存在し、目が覚めるまでこの嫌な感じは続く。


 そして時間がたつと、上が暗くなり目が覚める。


 緊張やストレスから来てると診断医は言うが、どうもそれには納得できない。


「もう時間か」


 そろそろ講義に行かないと。


 ドアを開け一歩でる。


 いつもの景色とは違った景色が見える。


 あぁ、疲れているんだろう。一歩踏み出せばまた普段と変わらない景色に戻る。


「VRのやり過ぎか」


 そう思いながら最後の講義へとでる。


 そうして講義は順調に終わり、またいつもの場所に戻る。


 電車からタクシーのり、ホテルに着く。


「やぁ、楽しかったかい? 」


 帰ってきて早々、医者との面談だ。


「診察中にお酒はいいんですか? 」


「別にいいよ。スパスパと切る訳でもないしね」


 グイッと、ウィスキーのボトルを飲む。


「……それで、幻聴や幻覚は? 」


「えぇ……」


 講義の前に起きたことを話す。合間に薬も飲まされ、眠る準備もしておく。


「ふんふん、まぁまともだね。もっと草を刈ってお金を手に入れるとか、ゴミ箱に光る物があったから漁るとか、とりあえず殴ってみるとか」


「そんな人が居たんですが」


「良く居たよ。昔の新聞を読んでみればもっと面白いのもわかるよ。ヒーローセットで屋上から飛び降りたり、トイレや井戸に埋まったり」


 それはまた……なんともいえないな。


「まぁ時期にそうなっていくよ。その時はまた勤務年数を増やされるかな。知ってるかい? 昔は60でお役御免だったんだよ。ようやく半分勤務が終わった僕からしたらなんて素晴らしい世界だと思ったね」


 確かこの先生は50ぐらいか。


「75でしたっけ。精神科医は」


「酷いもんだよね、外科はまぁしかたがないとしても、内科も僕より5年早く終わるのに」


「じゃあ、そっちを選べばよかったじゃないですか」


 少なくとも外科は60……いや55には終えて、医者専用の年金で過ごせるはずだ。


「あんな、機械頼りの診察なんて僕には務まらないね。細かい物を見ると気持ち悪くなるし」


「医者に向いてませんね」


「そうかな、他人の領域にズカズカと入り込めるから精神科医や心理療法士には向いてると思うけど」


「それって医者の意味あります? 」


「薬とか多めに出すよ。精神上悪いっていってお酒を飲ませるから、ご老人とか患者にはかなり受けはいいよ、他はそんな権限ないしね」


 グイッともう人のみボトルで飲む。度数は確か45はあるはずだ。


「よく学会から追放されませんでしたね」


「逆逆、追放されたから好きかってできるの。まぁ、今回はこのぐらいかな」


 気づけばもう1時間程度は経っていた。


「それじゃあ、酒の肴程度に観察してるから何か不安定になったらいってね」


 そういって部屋から出ようとする。


「管はまたやってからですか」


「そうだね起きたらまた拘束具の状態かな。なんならボールギャグでもつけようか」


「遠慮しときます」


「じゃあ、また適当に装着して開始して、後のはこっちで処理するから」


 そういい彼は出て行く。


 こっちは、介護服(オムツや脱ぎやすい服装)に着替えVR装置を装着する。


「さて、今回は本当にどうなるかね」



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品