コネクト  創造する世界

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創造する世界 玩具箱5

 ……静かだな


 あの後、普通にコネクトに戻ってきたはずだ……はずだ。


 あたりを見渡しても人が見えない。


 自分のステータスを確認する。もしコネクト空間ならこの場所ロビーと出るはずだ。


 ……現在地はロビーと出ている。念の為解析も入れるが、それでも結果は変わらない。


「何かあったのか」


 とりあえず博士の所へ向かう。


「こっち」


 誰かに呼ばれるこの声は……


「アイか」


 振り向いた先にいたのはアイとは似ているが、アイではなかった。


「こっち」


 彼女はこちらの返答を聞かず歩き……


「ん……」


 彼女の足下を見れば薄れぼやけている。まるで幽霊を見ているようだ。


「あんなアバターあったっけな」


 とりあえず、現状を理解できないので彼女の元をついて行くことにした。


 歩く……無言のままただひたすら。


 その道は半年間通ってきた自分でも知らない道だった。


 柱の中をすり抜け。ゴミ箱の中を入り。待って出てきた渦の中に入る。


 場所を調べれば途中までは??? だったが、今は&%'%'G(%&&%等のもはやバグか何かの名称へ変わっていった。


 歩けば歩くたび、場所がおかしくなる。彼女は薄くなる。自分の体はどうなっているか見えないが体に違和感がある


【緩やかに変わる変化】は飽きを感じさせず。時折ぼやける彼女を探すので退屈からさめる。


 そうやって【よく分からない時間】を歩いた後


「ここ」


 案内していた彼女が止まる。


 彼女の指差す先にはなにもなかった。


【斑模様の色彩】におかしいところもなく、【高低音交わる音】 もおかしくなく、【常にする異臭】も変ではない。


【正常】だ、あぁ正常なはずだ。


 一歩、彼女の指差す方に向く。


 一歩一歩また一歩ゴールを目指して歩く。


「……」


 一歩また一歩、そうして、彼女の隣を過ぎようとした時。


【体の何かが光始めた】


 うっ。


 まず感じたのは強烈な臭いだ、ただ人を不快にする臭いそれが【自分の目の前にある】


 不協和音が響く。まるで直接脳へ響いているように、コメカミを爪で潰したくなるようなそんな音だった。


 目の前に広がるのは極彩色の斑模様。その色彩は人を拒絶する。


 そうして、横を見れば。ぼやけた化物が浮かぶ。


 薄ら笑いを浮かべ。早く先に行けと顔で合図を送る。


「はぁ」


 自分の甘さに怒りを覚えた。


「不正者を発見、不正者を発見」


 よく聞けば常にシステムの警告音がなる。耳を済ませば自分が危険だと音楽が伝えている。


 体の違和感は気づいていた。つい最近これに近い状況に陥って敗北しそうになった。


「承認を確認しました。ナイトメア起動します」


 最適化が行われる。斑を無くし、無音にし、臭いを消し。そして今見える案内役に照準を合わす。


「……」


 女性の面影だった何かはもう何も言わない。


 対ウィルス用の装備を用意する。


「……」


 バンと何も言わず銃を発砲する。


 何かは簡単に消え去り残るは指差していた極彩色の入り口。


 入り口の前にたつ。銃を発砲する。入り口が鏡のように割れる。


 パンパンと何発もうつ、入り口のヒビは大きくなり。数十発後には粉々にくだけちる。


 入り口はくだけちり、残ったのは入り口だった空間のみであった。


 それに入る。


 下に横に上にと落下していく。そうして最終的には。


「な・な・な・なんでアールか」


 会いたかった博士に会うことができた。






 ……


 お互いの状況を確認する。博士からは今のコネクトについて。自分からは先ほどまで起きていた現象について話す。


「……ふーむ」


 博士は頭を回転させる。


「いーみーふーめーいでアール、なんであるかそれは。我輩でもそんな空間は作ってないのでアール」


 興奮ぎみに博士は話す。


「俺が手を現実世界に出したのは? 」


「それは【だいたい何が起きたかわかるので】問題ないのでアール」


 ……


「はぁ」


「んんん、何を驚いているのでアールかたかが【霊体験】しただけでアール」


 んん、


「霊体験って……なに?」


「ユーは幽体離脱を知らないのでアールか、我輩は悲しいのでアール」


 幽体離脱は知っている、しかし霊体験のしかたなんて知らない。


「オカルトじゃないの? それ」


「ノンノン、ボーイは忘れてないか。我輩は【リアルシミュレーション】が真理だと思っているのでアール。つまり物体のない幽霊だって当然存在してるのでアール」


 ……あぁ、そういえばそうか。博士はそう思っているんだっけか。


「だから霊体験なんてドォーデモよいのでアール。しかしなんでアールかその後のあれは」


 カタカタと博士はタイピングを行う。


「途中から【存在しない領域】に行っているのでアール。おまけに記憶情報からは異常はあるが問題なく……あぁぁ、わけがわからないのでアール」


 タイピングの音が大きくなる。


「そもそも、経路が意味不明である。柱の中? ゴミ箱? 渦【なんでこんなのが起きたのにこちら側で発覚してない】のでアール」


「あの空間そんな変なの? 」


「変というか意味不明でアール」


 博士はこちらを振り向く。


「ぶっちゃけた話、ボーイの【記憶以外の観測がない】のでアール。我輩ですらボーイが落ちてこなければ洗脳で済ませていたのでアール」


 あっ、そういえば。


 天井を見上げる。天井は未だに穴が開いており黒い空間の中1つだけ色彩が見える。


「その上の解析結果からユーの記憶が正しいことは判断できるのでアール」


「その上の解析は? 」


「【投げた】のでアール」


 投げる……ようは博士の手に負えないと判断したってことだ。


「何かわかったことは」


「解析不能で、理由不明で用途不明はわかったのでアール」


 それはわかったと言えるのであろうか。


「ようは、我輩レベルでは【解析不能な何か】でアール。寧ろなぜボーイがあのヘンテコなのを倒せたのか? 考えれば考えるほど意味が不明でアール」


 ……まぁ納得はできないがしょうがないか。


「じゃあそもそもの人の少なさは……これもハック」


「いやそれは、お前のせいだ」


 後ろを振り向く。そこにはディスプレイ越しに見ていた人物が居た。



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