コネクト  創造する世界

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仮想と現実 3日目 泥

心象領域とは、自分の心を領域かしたものである。正常な人ほど汚く。狂った人物ほど色は鮮やかになる。これには色々と理由付けされているが、自分は心象風景は【感情】という結論を押してる。子供から大人になるにつれ濁っていくのも理由がつき、個人的には一番しっくりきた。


目の前の領域に広がるのは赤い空間。侵食する度に浮かぶ感情は怒り。


何故教えた。何故言うとおりにしない。何故思い通りにいかない。


怒りが他の感情を塗りつぶしている。


悲しくしたのは誰だ。笑わせたのは誰だ。楽しくしたのは誰だ。孤独にしたのは誰だ。


私を怒らすのは誰だ。


それぞれが相手を憎み合い、怒り、中心からは粘着性の赤がドロドロと流れ込んでいる。


対してこちらの黒は何を表しているかと言えば、なんだろうな。


今回のあれ黒いヘドロは感情の吐露を活性化させるために、色々なものをブレンドをしている。


黒、漆黒の黒。よく負の感情を言うが今回はそれがメインではない、


黒とは、様々なものが混じった色だ、喜怒哀楽、正の感情、負の感情。最も密度は変えてるので、感情を吐き出す程度に留めてはいるが。


黒いヘドロは進んでいく。しかし、今の状態では領域は塗りつぶせない。今はただ混ざっていくのみ。


「全て飲み込めそうですわね」


「できたらいいな、まぁ無理な話だが」


赤の色が濃くなった気がする。


「まぁ、そのまま行けばいいな」


「棘がありますわね」


「まぁ、時期にわかるさ。それまでに決まればいいね」


「それは勿・・・」


赤い領域から巨大な人型が現れる。


「ちっ」


彼女はこちらではなく、今出た赤い泥の巨人が狙う。


「こっち相手しなくていいのか」


「アレを倒せたらそれでも終わりでしょ」


まぁ、倒せれば終わるが……まぁいいか


ゆっくりと侵食が始まる。まぁ領域を広げられるの人型の泥だけだが。


彼女は先程現れた巨人に対応している。


まぁ、じっくり……ともやってると吸収しかねないので。誰が敵なのかを教えるためにそこそこ濃くブレンドしたヘドロを赤の領域に一滴垂らす。


一瞬にして、落とした周囲の色が濁り、周囲の濁りが拡散していく。


先程戦っていた二人も、今はこちらに来て潰しにかかる。誰が危険なのかわかったらしい。


こっちに襲い掛かる余り、いかにもなわなの、自分が出した泥の人型に彼女達は触れてしまう。人型に埋め込んだ泥で彼女達の体が黒く侵食される。


そうして侵食を無くそうと、彼女達の体から黒い泥が吐き出される。そうして黒い泥を吐き出した二人は赤い色が薄れてきた。侵食の吐き出しの際に自分の泥もはいてしまう。まぁ補給はされるが補給が追いつかない量は簡単に吐き出させることができる。


後はこれを繰り返しながら色を剥いでいく。そうして最後に残った色が、彼女の根幹だ。


二つの赤き人型は、こちらを侵食しに来るが途中でとまってしまう。先程落としたヘドロの影響かもしくはトラウマを思い出したのか侵食も遅くなり。主導権は完璧にこちら側に移った。


後は徐々に薄れ行く感情でも感じながら、たまに濃いヘドロを出し、赤い領域は薄れ、黒の領域に変わっていく。


そうして、赤から黒へと侵食されていく。彼女らにはもう戦う力は感じられず、色もどちらかといれば紫色に近くなってきている。恐らく怒から哀に変わっていってるのだろう。


彼女たちの敗因は、ろくに考えもせず人形に触れてしまったことだ。あれにはいくつもの感情とコアにどす黒い何かをいれている。今回の場合なら30人程度が一斉に負の感情をこちらに向けてくる感じかな。


だいたい人の感情は喜怒哀楽の2つが限界だ。そこに他の人の感情でも混ざれば人なんてすぐに揺らいでしまう。


だから彼女たちは攻撃できなくなってしまった。本能が拒絶してしまった。


そして発散できずに溜め込んだ怒りは何処に向かうのか?


それは結局吐き出ししかなかった。


彼女達は黒い液体を吐き出す。こちらから出したものではない。彼女たちが持っていた。ヘドロをだ。


こうして、自分が付与した泥と一緒に出す泥と、彼女達の行き場の無い感情が吐き出す泥を一斉にだし彼女達は疲弊していく。


様々な思いが吐露されているのだろう。生半可な覚悟じゃ触れちゃいけないものだろう。しかし、ここにいる間は触る機会ができてしまう。


彼女の中の王子様と楽しんでる情景がでてくる。


親の説得に失敗した情景がでてくる。


不安を感じながらも期待をした、夜逃げの情景がでてくる。


それらを別の感情で塗りつぶす。どんな感情かはわからない。【自分の感情を吐露してるわけじゃないから】


今垂れ流しにしてるの、幻術対策、精神干渉、精神汚染対策用のものだ。それが今回、心象領域に入ったから作動してるだけだ。自分の感情などこの黒いヘドロに塗りつぶされている。


ただひとつ、自分の周囲の領域だけは自分の感情が流れている。


しかしそれに触れるものはここにいない、もう触れられる時間は終わったし、それに自分のわき出る感情を小さじで垂らすだけで、彼女たちが驚異対象と見なした。ようは小さじほどの量も【飲み干せなかった】


わかってはいたことだが、考えると複雑なものだな。


周囲からでるヘドロを抑えながら、濁りきった彼女達の領域に向かう。もはや怒りに身を任せて攻撃なんてできないだろう。それは表側にも影響を与えているはずだ。
 

一歩踏み込めば感情が伝わってくる。


こんなはずじゃなかった
許して
償うから


許さない
恨んでやる


足りないわ
もっともっとよこして


楽しいわ


この感じだと、裏側が優勢か。そろそろ核となる部分が露出するはずだがさて、どう転ぶ。どっちに混ざる。


2つあった人形もいまは形は保つこともできなくなって、周囲にとけだしていく。最初は濃い赤を出していた彼女達も今は濁っておリ、源泉も今は供給がほとんどなく、ポタポタと垂れるだけだ。そろそろ止まるだろう。


溶け出した彼女達が一つに混ざる。色は……黒か。


第二形態確定確定か。


混ざった彼女は話しかけてくる。


「はじめまして」


「はじめまして」


ニコッと笑ったように見えた彼女は……


「挨拶も済んだし出てってくれる」


黒いヘドロが襲ってくる。


「追い出せるものなら、やってみろ」


こちらも黒いヘドロをだして、対応する。


黒いヘドロが交じり合う。様々な感情、情景。黒い感情、清い感情。様々なものが交じり合う。決定的な違いがあるとすれば。


「ああ」


経験の違いだ。こちらは昔から戦闘に取り組んで使っていた。感覚共有、精神共有。様々な感情を見、暴走し複数の感情を感じ、精神訓練というなの拷問に耐えてきた。これらは全て記憶に留められ感情として垂れ流せる。感情の蓄積も行ったことがあるから濃度の濃淡も決められる。


なので、この位なら対応もできるしできなきゃこんな提案はしてない。


「そういえば、全て飲み込めるとかいってたよな、試してみるか」


ヘドロの量を増やす。質は変わらないがそれでも問題はないだろう。


「ひとつ聞いてもいい?」


「なんだ?」


増やした量に対応できてないのかうずくまっている彼女から質問が出る。


「あなたの出してるヘドロから不特定多数の人からの感情が出てるんだけど」


「はじめからこうなるとわかっているなら、対策や必勝法を作るのは当然だろ」


「その過程が意味不明なのよ、なにをしたらそんなことができるようになるわけ?」


説明がめんどうなんだよな。


「まぁ、簡単にいえば。他人の感覚と共有して、その記憶データを保管抽出。データ化でそれを泥として流している。そんな感じかな」


「それって、データに感情をもたすことができるって聞こえません?」


自分を1日前と同様に扱ってる時点で、それができてるって証拠なんだよな。


「さぁ、どうだろうな。こちらとしては質問を終わりにして先に進みたいんだが」


持って5分、速ければ1分で剥き出しの状態にできるな。


「あら、別にいいですわよ」


彼女の体から泥が吐き出されていく。


「どういうつもりだ?」


「【無意味】ですわ。どうあがこうが貴方には【現段階】では勝てない。なら今は負けを認め先に進むことが重要ではなくて」


色は……黄色か?鳥みたいに四色見えるなら話は別だが、三色で四色を表そうとすると、どうしても色を交わらせないといけない。だから怒と哀は分かりやすい色をしてるが、同方向の性質を持つ、喜と楽は正直どっちがどっちだかは見当がつかない


まぁどちらでもやることは変わらない、後は……


ふと気づく、トラウマを払拭するだけなら【以降】はいらないことに。


「はぁ」


「あら、どうしたの」


「いや、なに……。趣味に走ろうとした自分に嫌気を感じただけだ。やるうことやったのでもう戻るぞ」


中途半端になってしまい面白みもないが、他人の人生がかかってるのでよしとしよう。


「待って」


心象領域が脱出する際に彼女からストップがかかる。


「もうやることないぞ」


「ただ礼を言いたいだけよ、ありがとう。私あなたのこと好きよ」


「そうか、俺は嫌いだがな」


そもそも、死体蹴りや。最後まで足掻かない奴はNGだ。


「そう、じゃあ改善していくわ」


「はぁ」


わかってないな。


「そうか、じゃあ俺に好かれる簡単な方法を教えてあげよう」


「なにかしら?」


「なーに簡単なことだ」


自分が持ちうる最大の醜悪な部分をヘドロとして見せる。


五感全てがそいつを否定する。


見た目で吐き気を催す。臭いはきつく。深いな音がなっていると錯覚する。


見てるだけで、体全体を舐めまわせる。溶かされるような感覚に陥り、含んでもないのに、ブチュと昆虫を噛み砕き醜悪な臭いが口の中に存在してるような錯覚になる。


「これがでなくなるまで、飲み干せばいい。簡単だろ」


飲み干せた後、どうなるかはわからないがな。


今回と同様なことをやった結果、1人目は病院行き、そして次に来た人も軽度男性恐怖症。最終的にはサイコパスのような、狂人用の精神科医で程度を下げることが限界だった。それぐらい自分の根幹というのは歪で、歪んでおり、壊れかけている。1人目の時にはそう判断され、1時期は牢屋との選択になることもあった。


【お前ら如きが俺を語るな】


結局、あの最初の診断結果は自身の根幹を揺るがすものになってしまっている。その結果の一部をそのヘドロが担っている。


彼女の顔は青くなる、綺麗だった体からはまたヘドロが沸いている。


「おっと、勘弁してくれ。せっかく一時的に無くしたんだからもう少し自制してくれ」


出したヘドロを飲み込み、ついでに辺りに撒き散らかしたヘドロも回収する。彼女の分もあるが濃度は自分にとっては薄いので、全く支障はないだろう。


「さて」


とりあえず、気付け用に頭を一発叩く。寺院の座禅の叩くのと一緒で、不意打ちやら強い痛みってのは衝撃が強すぎて、他の出来事を忘れさせてくれる。


ごんと鈍い音がなり、彼女はうずくまる。ヘドロの垂れ流しは止まったみたいだし。後は落ち着かせれば問題はなさそうだな。


暫く、落ち着かせて、その後元に戻る。


「じゃあ、戻るから」


最初とは違い、彼女は黙ってこちらを見送った。


まぁここまでは叩き上げのおまけなんだがな。


最後にそう心にいい、彼女の心象領域から立ち去った。



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