コネクト  創造する世界

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仮想と現実 2日目 実力

剣撃響き渡る。一撃、二撃、目の前にはパワードスーツを着た男がこちらに攻撃し、どちらかに隙ができればもう片方が援護に回る。


運営側の説得なんて結局無理だった。たとえ権威が上だろうがお金を持っていようが。不正の情報と言うアドバンテージにはかなわない。ゆえにできたのは逸らす事。


10の被害を5と5に、5の被害を4と4に。3の被害を2と1の被害に分散させ、被害を拡散させる。その結果が今だ。今すぐだった要求を後回しにし、莫大な要求を技術提供、金、融通と分割し血が上った頭を落ち着かせ、要求をあげるには時間がかかると言い、それまでの間に自分達の戦い方を見せるという形で相手を動かせなくした。最も物理的に破壊されるのを拒んで、PC前で監視するものも居るが、それはこちらもダビングされないように監視する人が必要なので、互いが互いを監視する状態を作り出している。


元々、不運な事で連鎖的に起きてしまった事だが、これが【運営のみ】が用意したイベントではないことを忘れてはいけない。現在、情報を握っている運営が圧倒的に有利と言う立場ではあるが。ここには関係者が沢山おり、また上も自分達と繋がっている。現場は法外な要求をするが、提携を結んでいる一番の上がそれをどう思っているかはわからない。まぁ何が言いたいかといえば、【ここで情報が消えた場合有耶無耶にできる可能性が高い】ということだ。


しかし現在の自分の状況では情報を無くすこともできず。公開しないか、破壊しないかの相互監視が限界である、しかしそれすら実際に公開を妨害できるかと言えば恐らく難しい。


脅し等は相手には意味はなく、ゆえにできることは【自分達がどれくらいの領域に居るのか】を示すだけだった。早い話、時間稼ぎの余興で注意を引くことぐらいしかできない。そして本命は別の所で動き、データを破壊させる。


なので本気とまでは行かないが互いを強く見せようと、勝てないと思わせようと持てる力を使い、心を折りにかかる。相手が二人居るので、こちらの余力は殆どないが、それでも幾つかは封印して攻撃を行う。


自他共に、全ての攻撃はデータの破損の付随効果をつけ壊したデータは侵食し掌握する。互いが互いのデータを侵食し、隙を作らせ攻撃を当てる。


自分達から見れば、浪人時代や現在進行形で行っている普通の訓練だが、これを見ているものからすれば狂っているとしか見えない。あっちでは壊れたたら植物人間、運が悪いとそのまま脳死する。そんな攻撃を延々と躊躇無くし続けている。あっちではこちらのデータを構造も見れるから尚更だ、今もデータの破損が見え、修復や侵食している映像も見られているのだろう。


攻撃が当たらないように、照準に引っかからないようにし、ほぼ全ての攻撃はデイメアで使えるようにし、常に相手に攻撃してる状態を作る。それでも相手の攻撃はこちらにあたり、壊された データを修復し、侵食したデータを削り、再度相手に攻撃し侵食を起こす。


こちらにとっての利点は、侵食に【攻撃】しかないこと。こっちは【妨害】も【攻撃】も使え。さらに【誘導】も使えること。


また、武装でも手加減されている。拘束用なのか、非殺傷用なのか、拡散もなければ範囲攻撃もない。精密な攻撃と早い斬撃。これしか行ってこない。


たしかに重要な部分をピンポイントに狙うなら重要だし、一般人ユーザーならそれでよい。はじめから想定されてないのだから、防御のしようがなく。そのまま当たったら終わりだ。


しかし、これが想定されてると話が変わってくる。あらかじめダミーを作り、コアは移動させ、体は不定形となり。当たっても問題ないようにし、そこからダミーデータの追加作成、バックアップ、攻撃時の迎撃プログラム…………


やれることなんて腐るほどある。無論こちらは事前に準備し、対策も行っている。ゆえに、こちらのデータが跡形もなくなくなる【完敗】の戦はなく、どれだけ拮抗できるかそれが勝負となる。


攻撃を食らい、攻撃をし、攻撃を避け、攻撃をかわされる。一連動作に無駄は見つけられず。互いが互いを侵食しいかにして無駄を作るかの勝負になっている。


「さすが、菊池。相変わらず動きがいいよな」


「【パイロット】のお前に二人がかりで互角の奴に言われても嬉しくはないな」


そういい、目の前の菊池は武器を振る。その武器にはデータの破壊の付随効果がついており、当たれば破損し、その部分は使えなくなる。また、切り口から侵食されるため。部位を抉り侵食部分をはずす。


ガキンと剣と剣が交差する。すぐに離れないと、もう片方の弓の餌食になる。


相手の剣をずらし、体制を変え射撃を交わす。


「よしてくれ、今だって。かわすのが精一杯・・・だ」


弓をかえしながら、相手に重い一撃を与えようとしている。


結局、仮想は仮想。VRはVRだ。たとえ自分の武器が小刀だろうが鋭く重い攻撃にでき。弓だって、銃よりも速く精密に打てる。


システムという物理演算を弄くればなんとでもなる。しかしそれは逆に相手にもその状況を与えることになる。


だから結局、【他には無い力が必要である】剣を使う菊池は切断に長け、銃を使う佐藤は貫通に長けている。


では自分はというと、長けているのは旋回能力と後は浪人時代に開花した精神耐性、初期のVRの頃にかっこいいと思って使っていた銃。まぁ程々にはできるが、接近戦に銃なんて使っている暇はなく、かといって、目を離せば一瞬で詰められ、斬られてそのまま終わる可能性がある。システムに言えば前も使ったデイメアとファントムヒーローがあるが、ファントムヒーローなんて目視され続けていれば意味は無く。デイメアはタイミングを考えて使わないと、過去の自分で自滅してしまう。自分が映ってない所を利用すればいいと言う考えもあるが、そんな正確に指定を与えている時間なんか相手はくれない。


結果、剣を対抗できる武器で対処するしかない。しかし、盾などの防御では簡単に突破され、普通の武器なら佐藤の銃に対応できない。


結果刀身が伸びるタイプのファンタジー武器で対応しているが。どちらもおかしい力があるため、攻撃は全てそらしながら……掠りながら……対応し、ある程度時間がたったら、某ゲームよろしくチャージが溜まる仕様なので、溜まったチャージで刀身を長くし。回転し適当に殴りかかる。


回避なんてできるわけがないので体の大半は、人口AI、ナイトメアやムムにまかせ、自分は脳で伝令を送り対処している。昔ゲームにあったセミオートを思い出す。攻撃もAI、防御もAI。まるで一昔前のゲームのコマンドバトルをやっている感じだ。


後はそれをデイメアでそれなりのタイミングの時に使い、体勢を崩させ。一人に集中し処理を行う。しかし立ち直りが早く、うまくきまらない。








……


「くっ」


どんどん相手に対する攻撃が増える。時間はこちらの味方だ。相手の攻撃すら利用できる。一瞬の隙はできるが、今やもう一瞬の隙で数秒の妨害ができる。数秒貰えば、指定する時間も作れるので。徐々に自分の都合のいいように攻撃がだせるようになる。そうして劣勢から拮抗状態まで持っていけた時に、約束された時が来る。


互いが気づく。体に叩き込まれた感覚だ。時間稼ぎ終了の訓練終了時間がもうすぐ訪れることが感覚でわかる。


「そろそろ、終わろらせようかスカイアース」


「あぁ、いい加減だれてきたしな」


互いが必殺の準備をする。


まず動いたのは佐藤だチャージを終えた、銃が発射される。かわす行動をとればその瞬間に菊池の剣で斬られて、佐藤の二撃目で詰む。しかし回避しなければどれくらいの影響が出るかわからないチャージショットだ。


空間歪曲、透明化、それらは意味をなさない。菊池の攻撃は貫通だ。同様に盾なども意味がない。恐らく逸らせもしない。【自分は二人よりも技量は足りてない】足りない部分を人工知能で補い。作ってもらったシステムを最大限に使い処理していく。ここで使うのは最近覚えた体感時間のシステムだ。


時が遅くなる。グワングワンと視界が歪み、耳鳴りがする。銃は発射され、カウンターを狙う佐藤の下へ銃をさけ向かう。早送りで動く自分に驚いたのか佐藤の行動が遅れるが、射程に入る前に床を蹴りこちらに切りかかってくる。そうして……


佐藤の攻撃が届く前に、部屋にアラームが発生する。


「緊急事態発生」「緊急事態発生」


ALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERT
「緊急事態」「警告」「避難」「避難」「警告」「避難」「避難」「緊急事態」「緊急事態」
ALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERTALERT


一面白だった部屋がいまは真っ赤に照らされている。どうやらうまくいったらしい。


予定どおりにログアウトの準備をし、体感時間を元に戻す。


先程とどうようにグワングワンと視界が歪む。しかし歪んだのは視界だけではなかった。


一瞬にして体が警告をならす。何かやばい状況が起きたと、体は倒れこみ動けない状態となる。


真っ赤な明かりの中で、自分の後ろの人影が見えたのが最後。目の前はブラックアウトし、想定外の状況でこの戦いは幕を閉じた。



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