コネクト  創造する世界

AAA

データの残骸 到達点

「そっちは準備しなくていいのか? 」


こちらを見ずに画面で作業を行いながら、あいつはそういう。


「問題はあるがどうしようもない。今更足掻いても、我々は変わらんよ」


ヤギの顔した、男性がそういう。僕も同じ考えだ。今更何をしようが変わらない。いったら悪いが、付け焼き刃で行動しても意味がない事はわかった時点で、この時間はただの待ち時間にしかならなかった。


映像を見ても、攻撃をしたとわかるのは最後の特効した軍勢に対する魔法? 攻撃のみだった。1対1000を二回やってわかったことがそれだけ。おまけに相手は不正したので、その攻撃すらどれくらいの強さのものかわからない。正直お手上げ状態だ。


「一応質問出しとくが、ちゃんと戦うんだよな?」


「まぁ、言われてしまったからな。【全力は出す】その結果は知らん」


ニヤリと笑い、あいつはこっちを見た。体が硬直する。【手加減されて負けた記憶が甦る】


「全力か……、それは【どの形での全力かな】」


タイツの男が質問する。司会はこっちに来たリンカを含め三人いるが。動物の顔をした彼よりも今話している男性の方がインパクトが大きかった。とりあえず不審者として見られる。発言はともかく仕草と滑降はまさに不審者そのものだった。


「むろん全力は全力だ。【全力で殴りにいく】まぁ、安心しろ。すぐに終わらせるから」


「私がいるのにすぐに終わらす事ができるの? 」


先程まで車椅子に乗ってた彼女が今度は発言する。今は普通に立っており、いやむしろ彼女の足にはとてつもない何かが宿っているように感じる。まるで、いつかの自分の体を見ているようだ。


「まぁ、多分一瞬だな。【格の違いとやらを見せてやろう】」


「クク、場もあったまってきたところで、そろそろ始めようか」


ピエロの格好をした老人が現れる。


「チェンジで」


「慌てるなわしはでん、説明役が居ないとつまらんだろ。わしが解説してやる」


「やめとけ、途中から口開けてるだけになるぞ。ロック」


腕を上げ、光った手のひらの球体を手から離す。数メートル離れたあと老人がでてきた。あのときの老人だ。


「なんじゃ、わしも見物客にさせてはくれんのか」


「ピエロ一人じゃ荷が重すぎる。フォローてか解説してやってくれ。多分話にならないから」


「ご自慢の初見殺しか。人に言える立場じゃないが、もうちょっとましな先方考えた良いと思うが。現段階で完済してるのは。あれとあれで、今出せるのはあっちのやつだろ」


指事語ばっかりで、何をいってるのか皆目見当がつかない。


「あぁ、あれだ」


「まぁ、適当にやってやるから。とりあえず殴ってこい」


「あいよ」


光に包まれる。以降転送後はなんでもありの戦闘だ。


深呼吸をし体を落ち着かせる。落ち着け、数はこっちの方が上だ。ちゃんと戦略をたててれば勝てる。


視界が歪む、徐々に景色が変わってくる。周囲は平原。見通しはいいが今のところは何も見えない。


「さて、どうします」


確認をとるように辺りを見渡す。


先程までは居なかった人が見られる。恐らくこれが【イベント用に準備した人たちなんだろう】……あれ?


「タイツの人はどうしたんですが」


「あぁ、彼ね。【死んだわ】」


「えっ」


あまりに突拍子もないことに驚いてしまう。それは居なかった人物も同様だ。


「即効の斥候兵よ、アサシンの役割もしてるから。殺せなかった時点で殺されてるわ」


「その結果、相手は【魔法を誘導するデコイ】と【人外の反射神経】があることがわかる」


「斥候には魔法でこっちに戻ってこれる手段があるわ、勿論【死んだら勝手に発動するわ】戻ってこなかったたら、【魔法体、精神体に有効な攻撃】戻ってきたら、【相手の装備、モーション等のスタイル】がわかる。だから今はバフで固……、どうしたのかしら」


唖然とした、斥候も知ってはいたがこんな方法は思いつかなかった。というか一つの出来事にどれくらいの情報を出していくんだ。


「ん、あぁ、この口調。ここでは一応【女王】だからね、口調ぐらいは大人びるわ」


違う、重要点はそこじゃない。


「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。今はかためるのが戦法よ。ほら【陣形を作りなさい】」


指をさし、そう言い放つ。それだけで、【ある場所に歩かなくてはいけない気がする】


「ほら、演奏家。黙ってないで歌いなさい」


今まで一言も話していなかった。ヤギ顔の人が歌い始める。しかしこれは歌というよりかは……


「いざここに集わん、英雄達を相手は……」


どちらかというとオペラに近い。しかし響いてくる声だ。まるで耳を塞いでいても聞こえてくるような不思議な声だ。


「あぁ、安心して彼の声は意識しなくても勝手に聞こえるわ。だから【私の声に集中しなさい】」


歌声よりも響く。決して大きな声ではない。歌声の方が大きいはずだ。しかしその声は【どんな状況】でも聞こえるような気がした。


「さて、こちらは何時でもいいわよ。お・兄・様」


















……


「お主らの負けだな。神風特攻で突っ込んでいたらまだわからんかったが、時間を使いすぎだ」


まぁ、初見では無理じゃな。【見当がつくはずもないないからな】だからこその初見殺しなんだが。


「ロックよ、あれは……なんだ」


呆けた顔で金剛は聞いてくる、まぁ無理もない。わしだって、久しぶりに驚いたわい。


「あれが、あやつが見つけた、一つの【到達点】らしいぞ」


「あれが、到達点か……」


ため息をつき、画面に映る相手を見て金剛はこう言い放った。


「なら、到達せんでいいな」


「同意見だ、もっともあれは一つの形でまだまだ終点ではないのだがのぅ」


それにしたって衝撃が強すぎるわい。


「さて、精鋭たちは。どう対処するかの」
























……


「なんだ、あれは」


まず、声をあげたのは周囲を監視していた人物であった。


「伝達は正確に。なにがあった」


「【化け物】だ翼を生やして四本足、四本の手の何かが近づいてくる。周囲には何か大量な物体が浮かんでいる」


「背中とかに人は乗ってる?」


彼女はそう催促する。しかし答えは。


「その化け物があいつだ」


「ごめん聞こえなかった。もう一度復唱」


「化け物をアナライズした結果【相手であるスカイアース本人と断定】」


復唱は大声で行われた。まるでそれは【大声で騒いで事実を認めたくない】子供のようだ。


「なに、じゃあその化け物がお兄様だというの」


「俺だって信じたくない。あぁもうすぐここまで来る」


「ちっ」


小さく舌打ちをし。


「弓矢【構え】」


そう支持を行った。


後衛に配置した。弓兵が弓を構える。弓には一本ではなく数本の矢を持って構えている。


「振り絞って、【溜めろ】」


弓をさらに引き。放つ準備をする。矢には赤い光が走り。弦で引いている矢は全て光っていた。


「目標視界に入ります。後500、300、200」


目の役割の斥候が読みを始める。


「【セット】」


その声で、後衛全てがある場所へ狙いを定め。


「なんであろうと容赦はしない。【射殺せ】」


弓矢がある一方へ飛んでいく。複数射たはずなのに、速度は速く、まるで意思を持つかのごとく一点に向かっていく。


「放った矢、全て命中?」


疑問を浮かべながら、結果が報告される。


「伝達はしっかりしろ。復唱」


「矢は全部、体の端に当たっている。掠ってるものと認識」


「ちっ、魔法障壁、大魔法の詠唱開始。【迅速に行え】」


先程、弓を射た弓兵も、詠唱を始める。


「僕はどうすれば」


「あんたは自由行動。【悔いが残らないよう動け】」


そう言われると。体がその化け物と呼ばれる存在に向かおうとしている。


必然、自分の意思で走った。伝令されたからか体が軽く、ただ焦点は目の前の砂煙をあげてる何かに合わさる。


走りを辞め。武器を構える。元の世界で愛用していた装備だ。手に馴染み。指令や歌のこともあり。モチベーションも十分だ。


集中する。砂埃から見えるシルエットに焦点を合わせる。集中する。周りの音を消す。歌は聞こえなくなっていき、走る音だけが聞こえてくる。集中する。武器を構え、自分がいつもかけているバフをかける。


集中する。相手の行動がスローモーションになる。集中する。周りからの視線が見えてくる。邪魔な奴を弾くようにサブの武器を投げていく。


集中する。集中する。集中する。そうして、相手の姿が見えてくる。顔はまぁ、モンスター呼んで良さそうな顔だ。特筆すべきは四本の腕と四本の足か。特に腕のほうは【両手武器一つ、片手武器二つ持っている】両手武器をまともに当てられたら即死だろう。


集中する。動作がスローモーションに見える。そうして【胴体を一閃する】


胴体はきれいに、切れた。そうきれいに切れた。それだけだった。上半身と下半身が分離し先程と変わらず、自分の部隊に向かっていく。二つに分離した分、周囲に群がる大量の物体も半々にわかれ余計性質が悪い。


振り返り、相手に向かおうとする。そこで気づく。【上半身に目が見える】ことと、【周囲の物体にも目が混じっている】


そうして、周囲の物体の幾つかはこっちに向かってくる。完璧な足止めだ。


浮遊物体を攻撃する。破壊されてヘドロのような物体が自分の体に付着する。構わず斬る斬る斬る。石化しようが何しようが弾けるだろう。そう思っていた。だから【地面からの攻撃には全く気づかなかった】


「がぁ」


体に激痛が走る予想外だ。一瞬動作が止まる。そしてそれを待っていたかのように【ヘドロが固まり始める】


固まりを壊そうと体を動かそうとすれば、二本目の槍が地面から突き刺さり。体の動きが止まっていく。どうやら【本命は地面からの槍だったようだ】槍に貫かれた箇所から徐々に固まっていく。


「こ……」


ここまでだったか。結局自分は何一つできないまま。おわったなぁ。


薄れ行く意識の中で、今も、歌だけが響いていた。



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