コネクト  創造する世界

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データの残骸 契約書2

「さて、清算金だが。契約上【今回発生した金は全て御社持ち】それは間違いないな」


苦虫を噛み潰したような顔の経営陣を他所に話は進む。


「まぁ納得してくれたようで何よりでは最初に『ちょっとまて』」


VR内の記者が制止する。


「まだ戦闘中のはずだろ、ならばまだ清算は必要ないんじゃないか」


「それを最大の戦犯のお前が言うのか」


まだ言ってないから仕方がないが、その数百ですむ額じゃないからな。お前の失態は。


「ぐ、言う言わなくてもまだ確定じゃないはずだ。まだ勝負は終わっていない」


「安心しろ今から言うのは【確定のやつだけだ】」


「…………は」


「わからないなら、黙って聞いてろ。あぁ、後経営陣はこっちを見ない方がいいぞ。殺意がたまるだけだからな」
 

その程度ですめばいいが。


「さて、まずは違約金からだな」


「違約……金」


「金額のかかった戦闘中に援軍を出した場合、援軍の係数分が違約金で発生する。これは戦闘の詐欺行為をなくすだけだ。100対100で1000人の増援がきたら、話にならんだろ。だから係数での違約金だ。今回なら、2000人だから、違約金は報酬の2倍の300億だ」


「300!」


外の経営陣がざわつく。それを金剛氏が静める。


パンパンと手をならし。


「仮に次に勝った場合は追加で150だ、300億はもう戻らん。それでもやるか」


「やるなら、やるでいい、そんな気がまだあるならな、とりあえず話を最後まで聞け。まだ清算金は言い終わってない。次はプレイヤーの慰謝料だ」


「それは、コネクト上では」


「何をいっておる。これは【今回対戦するゲームプレイヤーの配慮だ】当然契約書にかかれているぞ、一人あたり2500万。援軍に来た人数も含めて3000人、計600億だ」


「600億!」


先程に比べてさらに大きくあたりはざわめく。


「これで900億か続いて」


「まだ、あるのか!」


経営者の一人が声を荒げる。


「当然ある。次はこの記者が行った妨害行為だ。これを見てもらおう」


映っているのは、記者の指示で行う妨害行為。勿論集団リンチや強姦行為も撮影済だ最も強姦は未遂になっているが。


「さて、これにたいし、実験室の営業妨害及び、プレイヤーにたいしての迷惑行為で100億請求する」


「100億!いくらなんでもふっ『それを判断するのはお前ではない』」


言葉を制止する。弁解なぞさせない。精々こんな世界に関わったことを後悔してもらおう。


「貴様らがどう考えてるかは知らんが、現にこんな糞みたいな戦闘に援軍だしただけで、慰謝料400億、違約金300億の世界だぞ。営業妨害で100億とっても何ら間違いではないだろ」


「……」


「ふん、黙りこむか。黙認とするぞ、では次に進むか」


「次?これで終わりではないのか」


金剛が振り向いて確認する。


「終わり?逆だ。ここからが支払いの本番だ。この程度の金額、これからの金額に比べれば消費税みたいなものだ」


「はぁ?」


呆けた顔をする。まぁ仕方がないことだ。


「ちょっとまて、1000億が消費税だと。ならばあれか支払金に兆を越えたものがあると言うのか」


「あぁ、そこの戦犯のせいでインフレしてしまったものがある」


「ちょっとまて」


お馴染みにシンキングタイムが始まる。


周囲はざわつく、「兆だと」「1000億の損害が出てるのに」「何処の部署をなくす」「この企画を考えた馬鹿はどこのどいつだ」


誰も彼も騒いでいる。まぁ仕方ないことだが、多分1兆程度と勘違いしてるんだろうな。


ある程度の時間をたたせ、タンタンと叩き、ストップをかける。


「シンキングタイムは終了だ答え合わせといこう」


視線がこっちに注目される。金剛は……


「………ぁ…」


フルフルと震えてる。気づいたな。


「おい、水を飲ませてあげろ。あまりのことに震えてるじゃないか」


その発言でやっと金剛の異常さに回りが気づく。


水を女性が渡し、プルプルと震えた手でそれを飲む。


「くっ、ハァハァ」


なにもしてないのに息を荒げる金剛を不思議に思ってる。


「こぞ……こ、いやお『いくらつぎ込んだか聞きたいのか』」


本気でパニクってるな、名前を自ら出そうとするなど。


「まず、落ち着け。クラウンクラウン。とんでもない失態おかしそうだったぞ」


「あぁ、……あぁ」


水を飲んでいる最中に結果をいってやろう。


「額と言えば、勿論限度一杯1億突っ込んだぞ」


「ブー」


おっ、良い感じに吹き出したな。


「おま、わかっているのか」


「金剛、お前も俺と一緒の思考のはずだぞ。【鴨がネギをしょってきたんだ。なら毟れるだけ毟のは当然だろ】」


そうだ、当然だむしろ。


「勿論、【お前が相手であろうと同じことはしたぞ】同じ条件にして毟とる。当然その覚悟があっての行動なんだろ今回も」


淡々といつも通りにそれを提示する。いつも通りやって来たことだ。昔は仮想で済んだが、今は【現実にも影響するようになっただけだ】ならば……


「金剛、俺のスタイルは変わらん。いつも通り【馬鹿な奴等には徹底的に潰す】これまでもこれからもだ。今回はたまたまその馬鹿がさらに馬鹿をやらかしただけだ」


「クク、そうだの。お前はそういうやつだった」


憔悴し、顔を上げず。小さな声でそう金剛が言う。


「いいのか……それで、【影響が出るぞ】」


「それを出さないのが【スカイアースというものだ】なに【ばれても問題ない環境を作れば良い】ここはそういう場所だ」


「そうか、そうだったな」


顔をあげ、自分を見てくる。


その顔は、醜悪な顔だった。歪な笑顔。憤怒を感じる血管。バカにしている口角。どれと同じ人を見ている者には見えない。


「お前はそういうやつだった。【仮想を肯定し、仮想を否定する】空想だといい、馬鹿なことをやるが、空想でもといい現実を持ちだす。全く、……全く持って」


醜悪な顔はさらに鬼のような顔となり。


「度し難い。難儀な奴だ。わしもお前も……おい」


金剛が付き添いを呼ぶ。


「なんでしょうか」


「金剛を呼べ」


「はっ?」


「これより二時間後【襲名の儀を行う】わかったらとっとといかんか」


「はっはい」


付き添いが大慌てで外に出てくる。


「それと経営陣のお前ら、全社員に一斉通知しろ。【馬鹿が馬鹿  をやったせいで会社倒産だとな】」


「倒産?」「何をいってる?」「たかが千億程度でわが社がつぶれるなどど」


「貴様の清算金は【安く見積もって10兆、最悪京の桁も行くぞ】わかったらとっとと動け馬鹿ども」


「10兆?」「馬鹿な」「あの屑なにをしたんだ」


経営陣はさっきとはうってかわって、あわてふためいている。あるものは腰が抜けて動けなくなり。あるものは現実逃避し、あるものは激怒でものに当たり散らしている。


「それと、インベーダー至急『それならとっくに終ってる』」


全身タイツの男が答える。


「あぁ、そうだリーダー。リーダーが動く前にとっくにそんなのは終ってる。内部、外部で行っても【両方黒だ】そして、【スカイアースの白も確定している】それよりこれを聞く意味があったのか? こいつがそんなへまをするはずないだろ」


「それでも相手の白やこいつの黒に期待したい。お前にわかるか? なんでわしがこんな胃を痛くせにゃならんのだ」


鬼のような形相で、こちらを睨んでくる。


「それはこの企画で馬鹿をした愚か者に言ってくれ。俺達は止めたし、回収すると決めたのはリーダー自身だ。恨むなら回収するといった自分を恨んでくれ」


「くっ、わしはなんであのときあぁいってしまったのか」


「まぁ、頑張ってくれ。ところでわしは帰っていいよな。というか帰らせろ。【ここにいたら殺される可能性があるだろ】」


額が額だ。俺を殺して契約をご破算にする。そんな考えがあってもおかしくない。


「そうだな、確かに一理ある。しかし【逃さん】せめて全てが終わった後に帰れ。それが【やったお前の責任だ】」


「今帰った方がアフターケアも楽だぞ」


「クク、何をいっておる。ここまでくればもう誤差だ、逃さんぞ小僧」


やれやれ、せっかくおっさんのように喋っていたのに、この爺さんときたら。


「まぁせいぜい、楽しませてもらおうか」

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