コネクト  創造する世界

AAA

データの残骸 1対1000 3

「うわぁ」


目の前の光景はそうとしか思えない状況であった。


「クク、盛り上がってきたの」 


「あれが裏工作ってやつですか」


画面に映し出されるのは、スカイアースの実験室という場所でプレイヤーが脅されている映像。数も1人じゃなく数十人規模での脅しだ。


「よく見ておれこれが、あやつらの【やり方】だ」


さまざまな場所で脅しを作っている。たまに注意されることがあるが。


「これはロールブレイだ、私たちはわかってやってる」


との、言い逃れで逃げて堂々と行っている。


時には周囲にいるプレイヤーに迷惑をかけながらだ。


「どうして弾かないんですか」


「そりゃ、弾かない方が益があるからだ」


益がある?やはり意味がわからない。それに何の意味があるのだろうか。


「あっ、注意しにいきましたね」


1つのグループが注意しにいった。これでこの馬鹿な事は終わるだろう。そう思ったしかし。


【数十人のグループは1つのグループを殴り始めた】


「……」


言葉が出なかった。注意だけで何故あんな暴行を、受けなくてはいけないのか。


「不思議に思うか」


「……わけがわかりません」


「ふむ、記者側の考えは簡単だぞ。【とりあえず最悪な行動をすれば良い】これだけだ」


「それって、……」


何となく理解してしまう。相手の意図を。


「緑郎の考え通りだ。【すべての責任はゲーム責任者に飛ぶように作り替える】だからどんなことをしても問題ない。それがあいつの思考よ」


「ということはやはり」


マッチポンプを作ってる。それもかなり陰湿な奴を。


「まぁ、問題点は【その行動が筒抜けということだ】」


「それの何が問題なんですか?」


「【今回発生する損害は全て記者側で責任を負う】これは当然今の行動も入っておる」


冷や汗が流れる。


「クク、あやつらは上手くいっていると思ってるが、その実自らの首を絞めているだけだ。あやつらがやればやるほど我々の益が増える。最も無い袖は振れんからむしれなくなる前に止めるがな」


「じゃあ、いま殴られてる人は」


「当然にわしに雇われたものよ。さてそろそろわしは出発するぞ」


「どこにいくんですか?」


「決まっているであろう 」


先程と同様歪な笑みを浮かべ金剛氏が答える。


「あやつらの本社だ、逃がしはせん。せめて楽しませて貰おうか」


クク、カカカと笑いながら金剛氏は去っていった。


TVに視界を戻す。目の前には悲惨な状況が広がっている。


「休憩が必要だ」とただをこね時間を伸ばす記者、裏では一方的な攻撃でボロボロにされるプレイヤー、画面下では、悪辣わ吐きつつ、狂ってるとしか思えない指令を送るやり取りと、その狂った指令を嬉々としてうけるプレイヤー。そしてその様子を笑いながら見てる掲示板のコメント。


何処か壊れているように見えて、どこも壊れているようには見えない。それは間違ってると核心をもって指摘できない。


何故?、この光景は異常ではないのか?何故疑問を抱く、何がおかしいのか。


わからない、カメラから見る世界は現実なのか?


わからない、視点を合わせなければ聞こえないこの状態は普通なのか?


わからない、今起きてる事も現実なのか?


そうだあのロウジンの言うとおリ、ココはまだげーむのナカでマダボクハ


「隣良いかしら」


視界はいらない場所で女性が声をかける。


「イイデスヨ」


「そう、ところで、あなたなんていうの」


「僕のなまえ?」


名前、名前。緑朗だからグリーンだっけ。


「グリーンですよ。あなたハ」


「それはアカウントかプレイヤーネームでしょ。ここは現実よ。」


「ハハ、ここが現実なわケナイジャナイデスカ」


「いえ、現実よ。じゃなかったら【私は自由に歩いてるし、貴方もカメラ等頼る必要ないわ】」


カメラの視界に少女が映った。彼女の言ってるとおリ。足が動かないのか車椅子が見える。


「ハハ」


そんなわけない。ココは現実じゃなくて。


「現実逃避した所で何も変わらないわ。私は足を動かせないし、貴方は体を動かせない。ここで見てる裏側も話も本当で、それを逃がさないようにおじい様が動いたのも本当よ」


「あぁ、そんなワケナイ。僕達はそこまで【腐っていない】」


「フーン」


そもそも、何故視界に入らずに会話できた?確か僕の視界に入らなければ聞こえないはずだろ。そうだやはりこれは……


「あぁ、それは。【私達が特別だからよ】そうよねおじい様」


「ふむ、まぁもう少し後で話そうかと思ったが」


ここからでたはずの金剛氏の声が聞こえる。


「あぁ、わかってると思うが。【君の考えは現実に居る間は逐一監視されている】当然だろ。君に対する信頼なんて無いに等しいからな」


「まぁ、悪いようにはならないと思うわよ。壊れなければね」


ニコリと笑い、彼女は語りかける。


「今の貴方酷い状態よ。なにをそんなに否定したがってるの。貴方の体? 、自分の置かれている状況? それとも裏側の黒い部分を見た感想? まぁどれでもいいけど。【こんなの普通に起こりえるわよ】」


「どれも起こる?」


そんなのあり得ない。現実はもっと。


「おかしいわね、あなたの遊んでる時間帯にはもう【リアル事件】が起きてたはずだけど」


「それは一部の話でしょ」


「何故【氷山の一角】と考えのかしら」


「それは……」


あんなこと、何処でも起きてるとは思いたくないじゃないか。


「何度も起きてるわよ。その都度隠蔽やら工作やらしてね。貴方の体だってそう。貴方の事だって実際公にされたけど、どのゲームなのかやら他のゲームではあったのかは報道されず。むしろ【裁判結果も報道されてないわ】わかる、都合の悪い結果までは報道しないのよ。【報道の自由】をうたってね」


「……」


「現実なんてそんなものよ。まぁだからといって仮想も居る場所によっては酷いけどね。ほら続き見れるわよ。よく見といた方が良いわ。【あなたも入ることになるんだから】」


モニターに視界を戻す。先ほど考えていたこと等忘れるかのように、モニターに居る相手を見る。


姿形が変わっても、昨日戦った相手だと確信が持てる。この相手を見ているときは頭がスッキリする。いや【余計なことは考えられなくなる】って言ったほうが正しいのかな。それぐらいのトラウマが与えられている。


現実がどうとか、現状がどうとかそんな事はどうでも良くなっていく。考えるのは、【彼がどう行動し、どうすれば勝てるのか】それだけに思考が働く。


「……、…じゃ…」


何かを言っている……そんな気もするが。


彼を見ていれば。結局はただ単に、【彼を否定したい】という結論にたどり着いた。現実がこんなに酷かった事とか、自分がこんな状態になったこととかではなく。【考えの一致を否定したい】それだけだった。


つまり結局の所……


「僕は君と同様に【他人を切り捨てる事】を認めたくなかった」


ただそれだけだった。



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