コネクト  創造する世界

AAA

データの残骸 ???3

移動後にまず襲われたのは触覚だった。


全身が震える。脳が離れろと信号を送りつづける。次に訪れたのは聴覚、音だった。音がしないのに耳鳴りがする。かすかに聞こえる小さな音と【ぐちゃぐちゃと聞こえる大きな音】は自分を恐怖状態にするには十分だった。


勿論、それに対する対策も事前に行っていた。【事前に行っていたからこそ、この程度ですんでいる】狂わず、暴走せず。体を動かすことが可能になっている。


この恐怖状態に陥った時点で、自分は顔を下に向けていた。出来れば目を瞑りたい。なにもせずうずくまっていたい。しかし、準備で用意した保護アイテムがそれを妨害する。【逃げたら酷くなると教え、現状を維持しろと訴えかける】


いっしょに来た老人……ロビンだがのことなど考えている余裕なんてなかった。ただ時間が解決してくれると信じ、目を背けながら現状の維持を行う。


下の地面は薄暗く、よくは見えなかった。それがいいとは言わないが少なくとも変なものが見えるよりははるかに良かった。


視線を感じる。女性がストーカーにつきまとわれる場合はこういう感覚に陥るのだろう。時折地面から目が出てこちらを見ているように感じるが、今のところは問題なかった。


ポトンポトンと頭に粘着性がある、液体が降っているように思える。しかし、動くことも触れることもできなかった。ただ、ただ時間が過ぎるのをまつ。






……どれくらいたったのだろう。今更ながら鈍行薬(感覚を送らせて時がたつのを早める)を作っておけばと後悔する。時間が勿体ないし無駄と判断した昔の自分を殴りたくなってきた。


依然として、君の悪い音も続き。脳は逃げろと警告をならしている。先ほどよりかはからだの震えは収まったが、代わりに脊髄反射で反応(雫や音等での反応)は増えていった。目の前にある地面には、もう目がない面はないかのごとく眼球に埋め尽くされており。音もよく分からない言語や悲鳴、笑い声、様々な不快な音を撒き散らしていた。臭いは更に酷くなり、鼻を摘まもうにも体は一行に言うことを聞いてくれなかった。


舐めていたと言えばそこまでだが、しかし舐めていたというしかなかった。


話しかけた爺さんは自分よりも弱く、入っていった洞窟もたいしてすごくはなかった。忠告も少しは流したり、自分の状況について考えていた。他の事を考えている余裕があった。


その結果、【曖昧な返事をしたため、よく分からないアイテムを信じて待つしか出来ない状態に陥っていた】


モンスターについても話していただろう。その記憶は残っている。アイテムの説明も一つ一つしていただろう。記憶に残っている。しかし、その記憶はやったという記憶しかなく。実際に行う場合にはなんのやくにもたたなかった。


現状何ができるか、それを考えてみる。しかし、数秒後に発する音が地面の揺れが触れる水が考えるのを邪魔をする。かといって前を向くことも、そもそも体を動かすことすら出来ない。


自分は役立たずだ、価値のない人間だ。思考がかってにネガティブの方向に向かっていき、その都度体が光り不断の精神状態に戻ろうとする。


更に時間がたち、ようやく体を少しは動かせるようになった。首を少し動かし老人の足を探す。少し動かせば、飛び散った液体。体の一部のようなものが目にはいる。体の一部は地面に映る目のあるところで地面にのみこまれていき。一部は異形な物質へと変えられまた、地面に戻る。


異形な物は人の顔のした何かになり最終的に、目となり地面に落の一部となる。


異形を見れば、罪悪感に陥る。【なんで助けなかった】【お前が動いていれば】【何千も犠牲を払って生きていて嬉しいか】


その度に貰ったものが黒ずみひび割れ、それでも罪悪感は消えず。どす黒い何かが沸き上がっていった。


そうして貰ったものを使いきり、耐えきれなくなりそう状態で、やっと、やっと、不快感が消えていった。残っているのは負の感情と今だ収まらない震え。体を倒し呼吸等を整える。


他折れ込んだ状態で回りを見渡せば、黒く残った何かと、同じ顔の死体、死体死体死体。付近を見渡せば視界に入らない死体はなく、それはどれも不気味でそして【何故か異常に腹が立った】


そうして、どす黒い感情が。一人の標的に移った後、ようやく体を起こし。その死体のなかで生きてる奴の方を向く。


その人物は自分をここまでつれてきた老人と、話し合っていた。


その様子を見ながら、気づいたら僕は相手に向かって動いていた。【何故か手には黒い武器を持って】動いている。


異常に気づき老人が剣でこっちに斬りかかってくる。しかし老人の攻撃は効かなかった。それは【あった時点からわかっていた】自分が勝てるとわかっていたから、老人についていったし、アクセサリーも正直断ろうと思った。しかし現実はギリギリだった。


避ける必要もないので、老人の斬撃はかわし、その後にきた射撃武器も、何発か食らった。避けるまでもなかったが。少し衝撃があったから。何発かは当たらなかったが。


「ゃ…………、…………か」


老人の声が聞こえたような気がしたが、今は気にはならなかった。気づけば自分の体には黒い何かが纏ってはいたが、それは何かは気にならなかった。そうして、【何故か気に入らない】そいつの前に僕は立った。


何が気に入らないのか、それは自分でもおおよそわかっていた。しかしそれは言葉にはしなかった。自分から否定したくなかった。


「前に出るな、そういわれてたと思うが」


「そうだったけ?あまりにも色々な事があって忘れてたよ」


勿論うそだ。知っていたが動いてしまった。


「なんだ、【這いつくばって生きていたわりには、ずいぶん生き急いでるじゃないか】」


「【無惨に殺され続けた人間なんて恐ろしくもないですよ】」


「【怯えながら震えて生にしがみついていた】奴の言葉じゃないな」


「【塵のように死体を重ねているあなたよりかはまともですよ。あぁ、狂人にはまともな会話は期待できませんでしたか】」


何故、こんな口悪く、相手を罵ってるのだろう。


「その、塵のような死体のおかげで【自意識過剰な雑魚一人が生きて生けたんだから感謝して欲しいな】」


「【感謝はしてますが。糞みたいな廃棄物を増やし続けてますから、むしろ謝罪して欲しいですね】それに【犯罪者や死にたがりの気まぐれなんて誉められたものではないですしね】」


いや、相手はそんな悪じゃないだろう。むしろ善人の類いの人間だろう。しかし頭ではわかっていても、言葉としては出てこない。




何故?答えは決まっている。




「僕は貴方の生き方が気にくわない」
「自分はお前の生き方が気にくわない」


「貴方のような、【死を省みない】生き方は許せない」
「お前のように、【生に執着してる】生き方は許せない」


「何故【死を受け入れる】たった一つの命だぞ」
「何故【生にしがみつく】たった一回の人生だぞ」


「ゲームだからって、何回も死ぬのは狂ってるとしか言えない」
「ゲームだからこそ、何故生に執着する必要があるんだ」


「死ぬ可能性があるんだ」
「死ぬ事ができるんだぞ」


「だから」
「だから」


「僕は貴方を否定する」
「自分はお前を否定する」


「貴方の生き方を肯定出来ないから」
「お前の生き方は肯定出来ないから」


そうして、語られる事のない。そして、この先何度もついて回る戦いが始まった。



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品