ペンの勇者 勇者の秘密

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僕の魔王

 ……


 目が……覚めない。


 おかしいな普段は目を覚めているのに。


 既知の魔王?「悪いけど、もう暫く待ってくれ大事な話なんだ」


 声の方に向く。そこに居るのは?


 ライク「僕?」


 既知の魔王?「まぁ、いつもどおりの出来損ないだけどね。……ここの記憶は無理やり残すから……理由は……わかるよね?」


 初めて会うはずのに情報が、僕の軌跡が流れ込んでくる。


 ライク「ウル、ジョッシュ、ライン……そして僕、魔人化、裏切り、管理者……」


 起きてないはずの学園生活が見える。


 ジョッシュが恨み魔王となり、それに呼応して、僕が勇者になり。


 それに絶望しウルが魔王かし、その2人を倒すことでラインが……ラインが魔王に、


 ライク「おぇぇぇぇ」


 なんでだ、ウルの時もジョッシュの時も耐えられたのに……


 既知の魔王?「それが君の答えさ。憎たらしいウルよりも親友ジョッシュよりもラインの方が好きだった。そう【魔王になってでも止めたいぐらいにはね】」


 記憶が回帰する。


 ジョッシュが勇者になり、ウルが魔王になる世界。


 ラインが僕と一緒に勇者になる世界。


 ジョッシュとウルが魔王となり、僕と未知で戦う世界。


 どれも最後には僕が生き残り


 管理者が現れ……


 そして途切れる。


 既知の魔王?「これが僕の全て。【僕の後悔】」


 つまり、君は?


 既知の魔王?「今まで……ううん恐らく【全ての後悔の僕の集まりさ】」


 ライク「後悔って、うまく言ったことはないの?」


 既知の魔王「あるとは思う……けど【そこには僕は居ない】俺に残ってるのは後悔だけだから」


 でも僕は……


 僕が僕の頭をこんと叩く。


 既知の魔王?「後悔はしてないって言ったろ」


 ライク「でも、後悔の集合体じゃないか」


 僕はもう泣いている。何十をも僕の後悔を見た。


 ジョッシュに手を差し伸べられなかった。


 あれだけ言ったウルを勇者に出来なかった。


 そして何よりも……


【あの子を悲しませてしまった】


 膝をつき、床を叩く。


 既知の魔王?「気にしないで【僕の世界ではあれで良かったんだ】あれがあるから俺はここに居られる……ただ後悔はある。あの時こうしていれば……あの時勝っていれば……とかね。そもそもここまで干渉できるとは思ってないんだ。本来は……まぁいいや、俺がここに居て、君に伝えられる。それでいいんだ」


 僕の言葉には嘘も迷いもなかった。だから、もう1人の僕の、魔王の人生も良いものだと……そう思うことにした。


 既知の魔王「そこでとりあえず今日なんだけど……」






 ……


 学園に向かう。


 僕の言葉を思いだす。


 既知の魔王?「いいか、入学式の最初。魔王投票なるものがやってる。誰を魔王にしたいか投票するって奴をね。勿論俺はウルに入れた」


 ライク「それじゃあ駄目なの?」


 既知の魔王「魔王には幾つかの兆候。タイミングがあると思う。それで最初の兆候はあそこだと思う。まぁそう思うのは僕の後悔だからだけどね」


 そういえば。


 ライク「既知なのに、どれが魔王になるかはわからないの?」


 既知の魔王?「正確に言えば、どれも可能性がある……と思う。どれでも魔王になった可能性はあるから」


 ライク「何回見たの?」


 既知の魔王?「何回だろうな、まぁ既知でも僕自身が未知の要素を持っているから。どうあがいてもわからないんだけどね。俺の時は黄金の目はなかったし」


 そうなのか?僕にはわからないな。


 既知の魔王?「勿論、疑心暗鬼でこうした助言を僕が無視した事もあった。まぁ僕にわかってるのは……おっと教室についたよ」


 気づけばもう教室の前に居た、人数の少なさから。今年から1クラスの混合クラスに変わってしまった。


 既知の魔王?「やばくなったら体借りるからそのつもりで」


 ライク「リョーカイ」


 僕はこの魔王を信頼している。信頼してもいいと思うだってこの魔王は……






【僕なんだから】


 ドアを開ける、言われた通り自分含め5人の名前が書かれている。


 投票数は……6名、僕を入れるとこの教室には……8名か。


 1人以外全員もう居るのか。


 ジョッシュ「どうした、いれろよ」


 ジョッシュが催促する。他の人物は無言でいる。


 あるものは無視し、あるものはこちらの様子を見てる。


 既知の魔王?「駄目だな、僕にはまだ早い……いや不味いか。まぁ、ちょっと様子見ててくれ。今回は僕がやるから」


 そういって、僕の体を操作する。僕が僕でなくなるとはこういう感覚なのか。


 既知の魔王「これを鋭くすると、洗脳とか誘導とかもわかるようになるよ」


 ジョッシュ「何言ってるんだ」


 ニヤリと僕がわらう。あぁ、感覚だけわかるのは変な感じだ。


 既知の魔王?「あぁ、ごめん。なんか馬鹿なことやってるからさ」


 ジョッシュ「馬鹿なことだと?」


 ジョッシュが怒りをあらわにする。


 既知の魔王?「特に、クアンの勇者たるジョッシュがこんなていどの低いことやってるなんてね。はぁ。これじゃあ彼女も無駄死にか」


 ジョッシュ「てめぇ」


 胸倉を掴まれる。


 ……あれ記憶だとジョッシュの彼女って。


 既知の魔王?「それは可能性の一部。本当にジョッシュの思ってた通りの可能性もあった」


 あぁ、そうなのか。


 既知の魔王?「もっとも僕がいる限りその可能性はないけどね」


 ジョッシュ「さっきからなにわけわからないことを」


 既知の魔王?「いや余りにもくだらなくてね。魔王にしてなんになるの?後追いしたいなら他所でやってくれよ」


 ジョッシュから殴ってくるがそれはよける。そして足を崩し転ばせる。ついでに腹に一発けりも入れる。


 ジョッシュ「グッ」


 既知の魔王?「どんな形であれ、国を滅ぼしてきた魔王だぞ。なんでわざわざそんなのを作り出さないといけないんだ」


 ジョッシュ「あいつが」


 既知の魔王?「あいつが何かしたか?お前の親友を殺した?違うだろ。お前のそれはただの逆恨みだ」


 ウル「ライク」


 お前に名前を呼ばれる筋合いはない。例え体を貸しても、それを剥いで顔に出るくらいに意思は強かった。


 既知の魔王?「お前に名前を呼ばれる筋合いはない」


 その声を聞いた奴の顔は落胆していた。そういえばあいつの仲間は居ないのだろうか?


 既知の魔王?「はっきり言うけど、俺はウルに勇者になって貰いたい」


 ジョッシュ「なっ」


 あたりがざわめく。そりゃあそうだ、僕だって驚く。


 どういうこと?


 既知の魔王?「だってそうだろ。自分から、お……僕やジョッシュが欲しかった鎧を奪ったんだ。むしろ勇者になって魔王を討伐して貰わないと困る」


 ジョッシュ「はっ?」


 僕もジョッシュと同じで意味がわからない。


 既知の魔王?「なに、今までのツケを払ってもらうだけだよ」


 ジョッシュ「だからって、なんでこんな奴が勇者に?」


 そうどうしてさ。


 既知の魔王?「なに、勇者とは1つじゃないさ、言ったろ。王様も1人の魔王に2人の勇者が居る可能性もあるっていってたでしょ」


 ジョッシュ「話を逸らすな」


 既知の魔王?「まぁ、後でわかるさ。とりあえず僕のスタンスはウルを勇者にしてきっかりと魔王と相対し倒してもらう。それだけさ」


 ジョッシュ「そんなの……そんなの認めない」


 うーん、僕としても微妙だな。勇者にするなんて


 既知の魔王?「その時点でもう魔王に囚われているんだよ僕等は」


 ジョッシュ「ライク……何を……」


 この表情は僕には見えないが、恐らくきっと悲しそうな顔をしているんだろうと思った。


 ウル「さっきから黙っていればいい気になって」


 なんでかウルが怒り出す。


 ウル「俺が勇者?はっ当たり前じゃないか。そんなの見なくてもわかるだろう」


 既知の魔王?「あぁ、○×だもんね。見てすぐにわかるさ」


 ん、聞こえないな。僕と魔王はやはり別扱いって事なのかな。


 ウル「○×だと?」


 既知の魔王?「王様から聞かなかった?この国の勇者は○×なんだよ。当然ウルも○×。なんなら試してみる」


 ウル「いいぜ、何処からでもこい」


 いきなり戦闘になってるんだけど。


 既知の魔王?「ここまではいつもの流れ、移動するよ。狭くて負けましたは言い訳に使われたくないから」


 そうして武道場、ようは戦闘訓練用施設に移動してきた。どうやら先生も放置してくれるみたいだ。


 既知の魔王?「んじゃ、後は頑張って。召還は1人出しといてやることあるから」


 そうして体が返される。


 ライク「ちょっと、ここで」


 ウル「さっきからなに言ってるんだ」


 あぁもう仕方がない。オッゾさんを出しておく。


 オッゾ「……話は聞いた。存分にやってくるといい」


 存分にって……


 ウルがどれくらい強いかわからない。正直勝てるかどうかなんてわからないんだけど。


 既知の魔王?『安心しろ、普通に斬れば勝てるから』


 頭の中で僕がそう答える。普通にって……


 考えてる間に剣が来る。それを咄嗟に弾く。


 ライク「あぶないな……って」


 剣は弾かれ地面に落ちる。ウルに他の武器はない。


 ウル「やるじゃないか」


 少し頭を働かす。今のは咄嗟に反応しただけだ。力も入れてない。つまり・・・


 ライク「弱い?」


 その言葉に完璧に激怒したのか、ウルは鎧を開放する。


 全身があの時見ていた純白……にはならず黒み帯びていた。


 同時に嫌悪感が襲ってくる。あれの近くには行きたくないと体が拒絶する。


 ウル「はは、どうした。本気を出したら降参か」


 もう1人の僕の声も聞こえない。しかしやることは覚えている。


 近づいて斬る。それだけだ。


 一歩前にでる。それだけで嫌悪間が増す。


 ウル「なんだ、やるのか」


 前に出られる理由は2つ。


 1つ、ウルが前に来ないこと。有利になればこちらを襲うのにそれをしないってことは、あれ自体は強くないってこと。そしてもう1つが。


 じりじりと前に詰める。


 ウル「くるな」


 と拾った剣をこちらに向けてくる。そして先程よりも強く、そう誰にも近寄らせない位強くこちらにプレッシャーをかけてくる。


 ???「ひぃ」


 ジョッシュ「なんだよ・・・あれ」


 周りも驚いてる。無理もない。目の前にいる僕は体を小刻みに震わせ、足もガクガクだ。


 だけど


 一歩前に踏みでる。


 ジョッシュ「や……やめろラ…イク、それ……以上行…った…ら」


 ライク「ねぇ、ジョッシュ」


 思い出すのは最初のあの日。契約の日


 ライク「僕達にとっての勇者って、こんな場面ならどうするっけ?」


 ジョッシュ「……あっ」


 ようやく思い出したみたいだ。あの時のことを。


【勇気ある者】それが僕……いや僕達にとっての勇者だ。なら


 震えは止まらない。こんなので斬ったってブレブレでろくな攻撃にもならないだろう。


 でも勇気出し剣を上にあげ、鎧を斬る体制に入る。


 ウル「くるな 」


 更に一歩つめる。


 ウル「くるなくるな」


 プレッシャーを強くしようが関係ない。切れる範囲まで近づく。


 ウル「くるなくるなくるな」


 そうして、後ずさるウルから当たる範囲まで近づき。


 ウル「ウワァァァァァ」


 一撃を入れる。


 そうブレた一撃。力もあまりはいらなかった一撃。


 しかしそれだけでウルは敗れてしまった。倒れこんでしまった。


 そうして、緊張が抜けて膝から落ちる。


 その崩れた後、僕の後ろから魔法が飛んできて・・・


 それをオッゾが止めた。


 後ろを振り向けば、立ち上がり魔法を射ったと思われるジョッシュが見える。


 ライク「ジョ……」


 ジョッシュ「○×△」


 僕が意識を失う前に見たのは。困惑したジョッシュの顔だった。

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