ペンの勇者 勇者の秘密

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勇者 半覚醒

 ???「はじめまして、ちゃんと喋るのは初めてかな」


 ライク「はじめまして、ちゃんと喋れるんですね」


 ???「本来はもっと後になるはずなんだけどなぁ。全く彼女は謝って欲しいよね」


 ???「呼んだか?」


 ライク「うわ」


 急な登場に驚いてしまう。


 ライク「お姉さん」


 なんでここまで入ってこれるのだろう?


 ジーウ「なにもうでても良さそうだからな。ついでに名乗っても良さそうだな。私の名はジーウだ。これからもよろしくなライク」


 ???「でたな、元魔王。あんたのせいで成長が数段階早く進んでるよ」


 ジーウ「いいではないか、それが勇者の特性なのだろう?」


 勇者の……特性?


 ???「私に引っ張られるのもそれはそれで不味いのよ」


 ジーウ「勇者にはなれるのだろう」


 ライク「もう少しわかりやすく言ってくれません?」


 もう何がなんだかわからない。


 ジーウ「ふむもう大丈夫なのか?」


 ???「今更、何言っても遅いしね。はぁ」


 しょうがないなと言った様子で、夢の中の彼女は説明しだす。


 ライラ「まず私の名はライラ、【いつかの勇者だよ】」


 ライク「ちょっと待ってください?お供ですよね?」


 ライラ「それが実際違ったんだ。……本来は日誌を読み進めていけばおいおいわかってきたんだけどね」


 ライラはジーウのほうを見た。その顔はまさに余計なことをしてくれたなと言う様な顔だ。


 ジーウ「なんだ、ネタバレがはやくて困ったのか」


 ライラ「問題はそっちじゃなくて、無理やり作った水の方だよ」


 あぁ、あの血を出しながら作ったアレか。あれは大変だった。


 ジーウ「私を助け出した水だな」


 ライラ「そう、それ。あれが不味かった」


 ライク「だから説明をお願いします」


 ライラ「簡単に言えばね。【私に近づいちゃったんだよ】」


 ライラに近づいた?さっぱりだ。


 ジーウ「それは当然だろ。【二代目の勇者に襲名されるんだから】」


 二代目勇者。ひょっとしてそれが勇者であって勇者ではないってこと?


 ライラ「ジーウあなたもわかるでしょ。ペンを持ってるから貴方が助かったんじゃなくて。彼だから貴方は助かったのよ。他の人物ならそのまま最悪壊されてるわ」


 ジーウ「……まさか?」


 ライラ「ジーウが関わったことで、本格的に勇者になる可能性ができたわ。仮にも元魔王なんだから因果を変える可能性があることは考えなかったの?」


 ライク「2人で話す前に当事者に教えてくれませんか?」


 そろそろ頭が痛くなってきた。僕が理解するには情報が多すぎる。


 その言葉でようやく続きが話される。


 ライラ「まぁ、色々規制されているんだけど」


 またか。


 ライラ「今言えることは【勇者と魔王は必ず1対1の関係じゃないの】1人の魔王から3人の勇者が生まれることがあれば、100の魔王を1人の勇者が戦う可能性もあるわ」


 ライク「二代目勇者というのは?」


 ライラ「本来生まれなかった勇者が無理やり生まれた場合の言い方よ。例えば先祖がえりだったり、貴方みたいに元勇者との適正があったりした場合は二代目として勇者となる場合もあるわ」


 ようやくわかってきた。


 ライク「つまり僕は、二代目になる可能性と、新たな勇者になる可能性の2つの可能性があるってことですね」


 ライラ「ついでに【魔王になる可能性】もあるから。大きな選択肢は3つね」


 ライク「えっ?」


 勇者が魔王?いやそれよりも。


 ライク「魔王って、人間がなるんですか」


 ライラ「最近はなるわね、ほら今居る村のあの子達居るでしょ」


 あぁ、あの異形な人たちか。


 ライラ「あれわね、【○○の○×○よ】」


 ん雑音が入って聞こえない。


 ライク「殆ど、聞こえなかったのですが」


 ライラ「じゃあ、今はまだ喋れないらしいわね。とりあえず、勇者と魔王は案外近いものだと覚えておけばいいわ」


 ライク「魔王にならないためにはどうすればいいんですか」


 ライラ「適度に発散すること、まぁ溜め込まないことね。私みたいに魔王討伐した後魔王になるとかもあるから気をつけなさい」


 ようは、溜め込みが爆発すると魔王になるのかな。考えているうちにまた2人で会話が始まる。


 ジーウ「お前、魔王だったのか?」


 ライラ「まぁ、私本体は今も何処かに居るかもしれないわね。今の私は【勇者の残照】足掻き、もがいて、歩き続けた。勇者の残照よ」


 ジーウ「ということは私が勇者になる可能性もあるのか」


 ライラ「体が残ってるならありえるわね。まぁ、少なくとも魔王とは戦うことになるでしょうね。話が脱線したわ」


 こちらの方に向き直り、再度説明が始まる。


 ライラ「まぁ、そんな感じで。君には幾つかの選択肢があるんだけど、そこの魔王のせいで二代目勇者になる可能性が高くなっているのよ」


 ライク「それは悪いことなんですか」


 ライラ「悪いに決まってるでしょ。二代目勇者ってのは【過去の勇者の投影よ】今の貴方の可能性は全てなくなるわ。端的に言えば。【私と同じように魔王に落ちる可能性が高いわ】」


 それは……いやだな。


 ジーウ「しかし、もう遅いだろ【この空間は覚醒の儀なのだから】」


 ライク「覚醒の儀というのは」


 ジーウ「二代目勇者就任の儀なのだよこれは」


 ライラ「本来は今このときは絶対起こりえない状況なんだけど」


 ジーウ「私が無理やりこじ開けたせいで、勇者とのパスが無理やりこじ開けられ。生死の境のせいで1体化してしまったと、なるほど、それなら確かに私が悪かったなすまない」


 えーとようは。


 ライク「ジーウお姉さんのせいで、無理やりライラ姉ちゃんと繋がって。今の状況もあってもう二代目勇者になるしかないってこと?」


 ライラ「選択肢は3つよ、1つ目、【ペンを放棄する】もう使えなくなるけど私が最後の力で貴方を治すわ」


 ライク「論外です」


 それでは側に居られなくなるじゃないか。


 ライラ「2つ目、【二代目勇者として覚醒する】まぁ【ペン以外の才能は全てなくなるわ】おまけに託宣で【各教会から貴方が勇者だってお触れがでるわ】」


 むっ、お触れか。


 ジーウ「やっておいてなんだが、お勧めはしないぞ。今の現状で勇者なんて格好の的だからな」


 ライラ「おまけに貴方は何もできないからね、少なくとも周りに強い仲間がうじゃうじゃいないと話にならないわよ」


 ライク「じゃあ、最後の選択肢は」


 ライラ「最後は、【半覚醒状態にすること】これならペンも使えるし、お触れもでないわ」


 いいことづくめ……にはならないだろうな。


 ライク「欠点は」


 ライラ「勇者になりづらくなり、勇者と同じ境遇になりやすくなります」


 勇者と同じ境遇?


 ライク「勇者と同じ境遇?」


 ライラ「トラブルが多発します。悪いことの発生率が上がり。悪巧みの計画が早くなります。魔王誕生もはやくなります。まぁ良い事もあるけどね」


 ジーウ「ほう、ならいいじゃないかそれで」


 ライラ「簡単に言うけどね。【勇者の境遇は酷いわよ】魔王を倒すからか知らないけどトラブルは沸いてくるし。簡単な依頼が最大難易度に変わったり。村のお使いに行ったら、魔物に襲われてるとかざらよ、しかも異常に強い特異体質だし」


 うん聞いてるだけならそれが1番やりやすいかな。


 ライク「その選択肢なら、半覚醒一択ですね」


 ライラ「言っておくけど、その選択は【災厄を背負い込むと同義よ】死ぬまで……いや死んでも離れない可能性があるわ。それでも背負えるの?」


 その顔は……泣きそうな顔だった。


 ライク「悲しいんですか」


 ライラ「当然よ、碌な人生じゃなかったからね。日誌見てないから教えないけど」


 見とくべきだったかなぁ、しかし読めなかったしな。


 ジーウ「それで、どうすればその半覚醒になるんだ」


 ライラ「そうね、ちょっと待ってね」


 目から溢れ出そうな涙を拭いて。パンっと顔を両手で叩く。


 ライラ「よし、半覚醒は簡単よ。【途中で邪魔すればいいだけだから】ペンで欲しいものを書いて」


 欲しいもの、欲しいものかぁ。


 ジーウ「生物でもいいのか」


 ライラ「私が知っていて、記憶が鮮明ならね」


 ライク「へぇ、ちなみにライラ姉さんのフルネームは?」


 ライラ「ライラ・サターシャだけど?」


 ライラ・サターシャと。


 ジーウ「後は私が邪魔すればいいんだな」


 ライラ「えっ、ちょ」


 光があふれ出す。その光はあの時、ペンを手に入れようと思った時と同じ光だ。


 ライラ「なんで私なのよ」


 ライラ姉さんは聞いてくる。そんなの決まってるじゃないか。


 ライク「側に居てあげるって言ったでしょ」


 光に包まれる。暖かい。眠ってしまいそうだ。


 しかしそんな気持ちはすぐになくなる。気持ち悪い、おまけに体中が痛い。


 ライク「イッテェ」


 なんだこれは、なんでこんなに痛いんだ。外側だけでなく内側も無茶苦茶痛い。


 ライク「あぁぁぁああぁぁぁ」


 体中を動かそうとするが全然動かない。何かで拘束されてるのか。


 ???「……」


 何か聞こえるが、それど頃ではない。今は苦しむのがさきだ。


 何10分経っただろうか、どうやら治癒の魔法でもかけられていた、いや感覚がないから別の魔法かもしれない。


 ようやく周りを見る余裕がある。


 ここは……何処だ?


 シアン「ライク」


 シアン……てことはここは。


 ???「よぉ、ヒーロー。無事でよかったぜ」


 あぁ、鳥人間さん。


 ???「いや、良く生きたな。流石は勇者候補ってことか」


 シアン「全く無茶をして」


 ライク「そういえば、あの子は?」


 ???「隠れてるぞ、ほらでてこい」


 ひょっこと、ドアの隙間から出てくる。


 一歩一歩震えた体で歩いてくる。


 ???「あの」


 ライク「僕はライク。君は」


 キッカ「キッカです」


 ライク「うんキッカ、いい名前だ」


 キッカと名乗った少女はこちらを見つめてる。


 ライク「どうしたの」


 キッカ「それだけ?」


 ライク「あぁ、次からは気をつけてね。本当に死にそうになったから」


 キッカ「はっはい」


 また、無言の状態が続く。これ以上何を求めているのか・・・あぁ


 ライク「キッカ」


 キッカ「はっはい」


 ライク「別に何も心配ないから。しいて言えばヨウって人をぶん殴っておいて」


 シアン「安心して、姉さんは追い出すことになったから」


 そうか、それは良かった。


 ライク「ちなみに問題起した場合の追い出しって扱いはどうなるの?」


 ???「元が元だからな、最悪は隔離施設に投獄。良いと絶縁で国外通報かな」


 ライク「投獄がいいと思うけど」


 キッカ「それはきっと難しいです。国王様優しいから」


 うーん、そうか。それは厳しいか。


 ???「ついでにその国王様からなんだが」


 ライク「何かありました?」


 ???「ことの顛末を伝えたら。すぐに戻ってこいってさ」


 ライク「へぇ、なら1週間後ぐらいに帰ります。その間は毒って事で連絡お願いします」


 その言葉に一同が驚いてる。


 ???「まじか、あれだけの事があってまだ残るのか」


 ライク「まぁ結局まだ何も見えてませんしね。目標もまだ達成してないし」


 それにこれが、恐らく学園行く前の最後の出来事だろう。なら楽しんでおかないと。


 シアン「学園ですか……、ちなみに何処に」


 ライク「バルタ」


 シアン「そこはライクが嫌ってる場所じゃないですか。別にベルでもいいのでは、ここなら勉強なんてしなくても入れますよ」


 それじゃあ駄目なんだ。なんとしてもあの最低野朗を潰したい。それに約束もあるし。


 シアン「そうですか」


 ライク「そうなんだ。だから暫くお願いします」


 ???「はぁ、しゃあないな」


 ライク「ちなみに鳥人間さんお名前は?」


 バーン「俺か、俺の名はバーンって言うんだ。まぁ短い時間だがよろしくな」


 バーンさんか、これで少なくとも3人とは仲良く慣れただろう。


 さて最後の1週間せいぜい満喫しよう。
















 こうして僕の学園に入るまでの3年間(2年間)は終わった。


 名も無き村の後は、シス国王に謝罪され。残りの1年は充実した環境で学園の準備に取り組むこととなった。カラスさんに聞いたが託宣は無いとのことなんで安心した。


 最後の1年はイベントというイベントも殆どなく、たまに名も無き村に遊びに行く程度だった。


 誰も居ない時間にはライラを呼んで、ペンの使い方を習った。たまにジーウも来て修行にならない時もあったが、ある程度は使いこなすことが可能になった。


 他にも身体能力が上がって、ブレなく剣を振り続けらるようにもなり。魔法もリリさんに教えて貰いそれなりのは使えるようになった。


 著しい成長はないが、器用貧乏と呼べる程度には満遍なく技能を向上できたと思う。


 そうして今日、ついにバルタの学園への試験日となった。



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