ペンの勇者 勇者の秘密

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旅立ち

???「君は……、君はそれでいい」


???「えっ」


男性の声が聞こえる。その声は包み込むような声で許されているような気がする。


僕は言う。


???「でも、私は戦えません。○○さんのように治療することも、○○さんのように敵を倒すことも。○○さんのように貴方の隣にいることも」


それは悲鳴に近い言葉だった。好きな人に自分の欠点をさらけ出す。受け止められなかったらと思うと、否定されるかと思うと心臓が痛くなる。


しかし、結果は抱きしめられた。


???「どう……して?」


???「時々ね、思うんだ。多くの人間を殺した魔物と、多くの魔物を殺した僕……どっちが化け物なのかなって」


それは衝撃的な言葉だった。


???「そんな、勇者様は私達を守るために……」


勇者「宿の……値段が上がったんだ。昔はその辺の魔物を倒せば休めた宿も今は、大型を倒してやっと寝られる値段に鳴ってる」


???「そんな……どうして?」


勇者「怖いのさ、自分達が束になっても倒せない魔物達をさくさくととおし続ける僕達が……」


勇者様の声が小さくなる。よく見れば抱きしめてる手も震えてる。


勇者「ねぇ、○イ○。僕は化け物なのかな?もう普通の人を抱きしめることもできないのかな」


勇者様が震えている意味がわかった。


【怖いんだ】その力で私を壊してしまうのでないかと。


だから、僕は勇者様を抱き締め返して。


○イ○「大丈夫です。僕がそばにいてあげるから」






……おかしいな夢のはずなのに、抱きしめてる感触がある。


目を開ければ、驚いた様子の人達と、怒ってるアリューゼおじさん。そして横には……


ライク「ウェンディ!? 」


驚いて手を離す、ウェンディは顔を真っ赤にしている。


ライク「違うんだ、寝ぼけてててて」


身体中が痛い、特に腕が痛い。まるで何かに刺された痛みだ、おまけに気持ちも悪い。そのまま後ろにたおれこみ、ベットに埋もれてしまう。


アリューゼ「今回のは許してやる。今は暫く寝ていろ」


状況がよく分からない。僕は騎士団に喧嘩を売って。


そうだ。


ライク「エンヤ様から貰った剣」


リリ「ここにあるわよ」


壁の方に貰った剣が置いてあった。


ライク「よかったぁ」


リリ「……」


あたりは静まり返っている。理由はわかる。


【騎士団の1人を斬りかかったからだ】運が良かった悪ければそのまま死んでいるかもしれない。


アリューゼ「他に何か言うことは」


ライク「無茶な行動をしてすみませんでした」


リリ「他にあるでしょ、切った相手とか」


ライク「後悔はしてません」


そう後悔はしていない、例えそれで死ぬことになっても。


リリ「まだ生死について聞いてないんでしょ。ひょっとしたら人を殺してるわよ」


ライク「それでも、それでも」


あれが最善だと思ったから。後悔何てできない。


【あれぐらいのこと恐らくそう遠くない未来に何度も出てくるはずだ】あいつが動いたということはつまりそういうことなんだ。


だから……


ライク「後悔はしてません。殺したのなら……その罪を背負います」


リリ「っあんたって子は」 


リリさんに抱きしめられる。


リリ「どうして、子供なのにそう背負おうとするのかな」


そんなの決まってる。


ライク「僕の村では、僕とジョッシュと村長以外全員敵でしたから」


リリ「っ」


抱きしめられる力が強くなる。傷だらけの体にはその威力は強く。


ライク「リリさん、痛い。痛いよ」


リリ「駄目離さないんだから」


そんなこといわれても……あぁ、駄目だ意識が……




……


???「貴方はそばにいてくれますか?」


ばっと起きる。


ライク「いたたた」


どうやら夢の中ではないらしい。


リッヒー「起きましたか?」


隣にいたのはリッヒーさんだ。どうやら起きるまでここにいてくれてたらしい。


リッヒー「ここは、エンヤ邸なので夜になったら帰ってもらいました」


夜……夜かぁ


グゥゥと音がなる。丸1日何も食べてない。


ライク「スープと胃にいいものもらえますか」


リッヒー「具沢山のスープを、お持ちいたします」


そういって、リッヒーは、出ていった。


グゥゥと音がなる。


思えば昨日は激動だった、騎士団にあって、追手をまき、剣を振り、寝て、匍匐で進み、剣で振り、寝て、また起きて、寝てそうして、また起きた。


ライク「あれ、寝てる回数多くない」


リッヒー「それは本来あなたが背負うものじゃないからですよ」


リッヒーさんが鍋を持ってこちらにくる。空腹の状態でのこの匂いはたまらなくいい臭いだ。


起き上がり、痛みに耐えベットを抜け机につく。


ライク「……どうかしましたか?」


リッヒー「いえ、思ったよりも重症だと思いまして」


そうだろうか?この程度の傷なら恐らく数日もあれば大丈夫だと思うけど。


リッヒー「ライク様、失礼ながら、貴方は【人に頼る事を覚えるべきだ】」


ライク「えっ」


人に頼る?現に頼ってるじゃないか。


ライク「人には頼っています。現に今回だって」


アリューゼおじさんと交信し、状況を把握し動けるのが自分しかいないから動いただけじゃないか。


リッヒー「ライク様は背負いすぎなのです。普通の11歳の子では背負わないほどの重りを」


ライク「それは仕方がないことです。僕は【あいつに目をつけられたのですから】」


そう、あの最低野朗に目をつけられた以上は仕方がないことだ。


リッヒー「それほどまでに……、信用がないのですか」


ライク「信用がないわけではありません」


リッヒー「では何故?」


どうして、私達を頼らないのか?そうリッヒーさんは聞いてくる。


ライク「1つ。今回の騒動の原因は僕にあります」


リッヒー「あれは騎士団が」


ライク「その騎士団を呼んだのが僕です」


リッヒー「しかし」


リッヒーさんは食い下がる。しかしこれに関しては無理なことだ。


ライク「2つ目に教育です」


リッヒー「教育?」


ライク「えぇ、このような状況だったので両親も【自衛技術】を村の中ではずっと教えてくれました。自分を守る技術を教えて貰って、人に頼る事を覚えますか?」


リッヒー「それは……」


まぁ、この2つならまだ大丈夫、強制もできたかもしれない。しかし最後が酷かった。


ライク「そして、最後の刷り込みです」


リッヒー「刷り込み?」


ライク「そう【自分はあいつのできそこないだと】町全体で自分達に刷り込ませる。できそこないと大声でこちらを罵倒し、周囲は同調か静観。こちらの味方はジョッシュ家のみ、村長はヒートアップを止める役、この状況で大人に頼れますか?」


リッヒー「だがそもそもできそこないなんて、なんでそんなことに」


ライク「【予言による勇者誕生の予測】……おかげで出産時に襲撃されたらしいですよ、両親は」


リッヒーさんは言葉を失う。その顔は昔の両親と同じ顔だ。


そこまでするのかと、無理やり遅らせ、それを罵倒するのかと。


リッヒー「村を出ることはできなかったのですか」


ライク「あそこの村は【王国主催の村です】入るのにも大きなお金がかかりますし、子供は【10歳までいないと指名手配となります】王国の法律にも載ってるので詳しくはそちらを」


リッヒー「そんな……」


ライク「なので、これでも十分頼っています。現にあの村でこんなことやったら見殺しか磔でそのまま火あぶりですかね」


それに関してはあの村は人数制限してくれて良かった。


リッヒー「しかし、そのかたが勇者というのは早計すぎるのでは?」


ライク「勇者か勇者ではないかなんてどうでもいいんですよ。【勇者と周りに認知させれば勝ちなんですから】」


リッヒー「では本当に勇者じゃなかったら」


ライク「それでも勇者ですよ。【国が1度認めたものを反故にはできないでしょう】」


そう、勇者であろうがなかろうが、あいつはもう村の時と同様に【勇者】の肩書きを手に入れてしまったのだ。


ライク「恐らく、今回の騒動も【勇者の仲間になるのが当然】と周りを煽動して村で同じ日に契約した人物を拉致するのが目的ですね。そうすれば箔がつきますから」


リッヒー「何か方法はなかったのですか」


ライク「ですから、【自衛技術】です、心を……体を壊さない為の自衛技術です」


スープも飲み干してしまった。筋肉痛で震えた手でスープをとる。


ライク「恐らく、ジョッシュが居なかったらこのスープすら飲めませんでしたね。【食べるのが危険すぎて】」


リッヒー「すみません、失礼します」


リッヒーさんが退出する。僕は残った鍋のスープを頂く。


具が多く、温かく、芯まで暖まる。おかげでもう来ている服は汗でべちゃべちゃだ。


ライク「ふぅ」


これからどうしようか……


あんなことがあった以上、この村にはいられない。それで何処に行こう。地図なんて殆ど見なかったからなぁ。


歴史や地理の勉強を後回しにしたツケがここできた。


ライク「国の間にも魔物がいるし、国同士もたいして仲良くない時点でどうしようも・・・」


あぁ、そうか。そうすればいいのか。


恐らく、あいつも同じような発想に至ってるはずだ。


ジョッシュ「【他国に勇者として認知させる】そうだろ、いや手酷くやられたな」


ライク「ジョッシュ……人の事はいえないはまだ傷が治ってないように見えるけど」


ジョッシュ「なに、男の勲章だ。それでどうする、俺は親の伝で【クアン】に移すけど」


クアン……何処そこ。


ライク「何処?そこ」


ジョッシュ「こりゃあ、落第も見えてきたか。まぁもうここの学校にこだわる必要もないんだがな」


先程までリッヒーは居たところにジョッシュは座る。


ジョッシュ「クランは魔法が発達しているまちだ、また魔道まどうっていう、魔法の方針もある。俺はここで魔法を発達させる」


指から炎を出してみせる。恐らく契約のアイテムではなく無詠唱でできるようになったのだろう。僕のペンと同じようなものだ。


ライク「他に候補は?」


ジョッシュ「この国【バルタ】は論外、【リンザ】にはラインが居るから選ばないほうがいい。後は【ベル】と【その他】だけど」


ライク「その他って何?」


ジョッシュ「国まで発達してない場所、ついでに言えば魔王が生まれる地・・・なのかもしれない。魔物も強く開拓が進まなかったり、先がなかったり、不毛な地だったり。まぁ環境が悪いだろうな」


何も見えていないか。


ライク「じゃあ、その他で決まりだね」


ジョッシュ「おいおい、話を聞いてたか。はっきり言ってあの雑魚騎士団よりも数倍やばいぞ」


ライク「勇気あるものってそういうことでしょ」


ジョッシュ「あ~、生きて帰ってこいよ。じゃあどうする待ち合わせ場所は」


少し考え、ジョッシュに尋ねる。


ライク「ねぇジョッシュ、後数年でそれなりの地位までいける?」


ジョッシュ「あ~、まぁ本気でやればそれなりにはいけるんじゃね。これでも勇者候補らしいし」


ライク「じゃあさ、この国の学園でいいんじゃないかな、手出ししてきたら国の問題になるし」


うーんと、ジョッシュは考える。


ジョッシュ「暗殺や毒殺は?」


ライク「あいつらに裏を取られるとでも」


ジョッシュ「ないな、というかそれぐらいでは死なないくらいには鍛えるわ」


ライク「じゃあ問題無しね」


キルダ「話は決まったか」


ドアから父さんと母さんリリさんにとりあえずいっぱい入ってくる。


ミヒト「それで、何処に行くの?その他もいっぱいあるわよ」


ライク「父さん、母さん、それにみんな」


部屋が人で溢れかえる。


キルダ「話は聞いた。正直私達が不在でもなんとかなると思っていたが」


アリューゼ「最悪の最悪だったな、注文10品な」


他愛のない言葉と共に会話が進む。


ライク「止めはしないんですか」


アリューゼ「あの話を聞けばな、まぁ安心しろひょっとしたら騎士団は解体されるかもしれない」


ジョッシュ「えっ、どうして」


リリ「坊やのおかげで、1人重傷者がでたのでね。詳しい話を聞くとなると監禁事件を話さなければいけない。だからでっち上げたのよ【未知の魔物に襲われたって】」


あぁ、あの騎士生きていたのか。それは良かった。


アリューゼ「それで、不正の証拠を手に入れドンだ」


ライク「不正の証拠って」


リッヒー「間違いなく、騎士団は【大型魔物、魔獣を召還します】そうしないと辻褄が合いませんからね」


アリューゼ「おまけにこれまでの不祥事で目がつけられまくってる、まぁ主には」


おじさんはジョッシュの方を見る。


ライク「なにしたの」


ジョッシュ「なに、【村と同じことやり始めたから】渋々行った振りをして悪事をどうどうと暴露しただけさ。ちなみに町全体の総意だからいやぁ、痛快だったぜあの時のウルの顔」


それは見たかったな。


アリューゼ「そこに今回の騒動がでた、勿論、俺やエンヤ大使、イスズさんや司教等の名前の連盟で抗議を教会、ギルド、国の3方向からだしてな」


ジョッシュ「いいタイミングで起してくれたよなあいつらも」


アリューゼ「まぁ、そんなこんなで今からこの町は【厳戒態勢】に入る。はっきりって国との依頼ギルドは減少させる方向に動いていく」


イスズ「教会の方も、今回は教皇様の謁見はおやめになりました。」


キルダ「国からはこれまでの不祥事を出し続けている。かなり炙り出したからな」


ライク「父さん達が家に帰らなかったのって」


ミヒト「あら捜ししていたからね、おかげで沢山でたわ。今頃大量の不祥事でてんやわんやね」


リリ「不祥事の証拠は私と、友達とで一緒に出したから必ず届いているわ」


うーん、話を聞く限り。


ライク「それでも解散されないんですか」


キルダ「大人しくはなるかもしれんが、この程度では無理だな」


ミヒト「まぁ、別で使うはずだったお金をたんまりと使うから意味はあるわよ。恐らく何十年分のお金を溶かさないといけないし」


イスズ「騎士団は1番必要な【信用】を落としました。これがどれくらい重要かわかりますよね」


ライク「はい」


それは重々、何年の苦渋をなめされましたから。


ジョッシュ「おっほん、それじゃあこれからの方針をまとめよう」


いい加減、話さないのが堪えきれなくなったのかジョッシュが仕切りをはじめる。


ジョッシュ「とりあえず、共通の敵はこれからも軽いところを作って抗議を行います」


アリューゼ「おぅ、抗議はまかしとけ」


ジョッシュ「ライクは国外に、余りお勧めはしないけど、未開の土地へ両親と行くと」


両親と?それは聞いてない。


ライク「一緒に行けるの」


キルダ「むしろ誰と行くと思っていたのか」


ミヒト「流石に1人は無謀よ」


ライク「いや途中まではリリさんといって、そこから冒険者だと」


リリ「あら、私も行くわよ。今回の原因は私にもあるし」


その言葉に一同は驚いた。どうやらそれは誰も想定しなかったらしい。


ミヒト「嬉しいけどいいの?」


リリ「どうせ、この国に居たところで坊やがいないともう先に進めないしね」


あぁ、最近抽象的な質問になっていましたしもう考えがきついのかな。


リリ「それで、行く場所が決まってないならお勧めがあるんだけど」


キルダ「場所は?」


リリ「荒野の遺跡群。何でも過去の勇者の装備もあるらしいわよ」


ミヒト「それってあの町に収集されるんじゃなかったの?」


そんな話初めて聞いた。あそこの倉庫ってそうやって増えていくんだ。


リリ「収集されるのは、死んだ人の物や見つかりやすいものだけど。まぁお金が沢山貰えるからそれで殺される人も居るんだけどね」


キルダ「だが、そんな遺跡に入ってももうないんじゃないか」


リリ「ないかも知れないわね、でも見つかる可能性は高いわ」


求めているものはわかる。


ライク「昔の文字なら読むことができる」


リリ「そう、坊やは私でも読めない文字を読むことができる。まぁ安心しなさい。魔王崇拝の遺跡とかそういう危ない遺跡にはいかないから」


ミヒト「いいじゃない、遺跡。私は好きよそういうの」


キルダ「ライク、どうする」


ライク「まずはそこでいいよ」


その言葉に皆は笑う。


キルダ「まずか、そうだな。沢山行かないと行けないからな」


ジョッシュ「こりゃ、俺もうかうかしてられないな。よっしゃ俺も・・・俺も」


ジョッシュが青ざめてる。


ライク「どうした、ジョッシュ」


ジョッシュ「やべぇ、宿題やってねぇ。明日スパルタコースだこれ、リリさんすぐに戻してくれ」


呆れた顔でリリは紋様を出す。


ジョッシュ「じゃあな、ライク。また学園で」


ライク「あぁ、また学園で」


ジョッシュが消えていく、それをみて夢の中の絵を思い出す。


???「あなたはそばにいてくれますか」


ふっと手をみれば、出していないペンが手に収まっている。


ライク「あぁ、そばに居てあげるよ」


誰にも聞こえない小さな声でそう呟いた。



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