きこりの俺が女神様に求婚したらオナ〇ールを渡された話。

水無

きこりの俺が女神様に求婚したらオナ〇ールを渡された話。



 コーン……コーン……コーン……。
 霧の深い森に、小気味好い音が響く。
 音の正体はきこりが木を斧で叩く音。
 きこりは額にうっすらと汗を浮かばせながら、一定のリズムで斧を水平に叩きつけていた。


 やがてきこりは手が滑ってしまったのか、持っていた斧をジャイアントスイングすると、背後の泉目掛け、ホールインワンをかましてみせた。


 バチャーン!


 水が叩きつけられる音。
 斧が泉にイントゥザウォーターしたことにより、水柱が立ち、そこから中心に波が立つ。
 斧に水に浮かぶ浮力が備わっていなかったのか、斧はそのまま、泉の底へと沈んでしまった。




「アー、ナンテコッタイ。コレジャシゴトガデキネー」




 きこりはそのあまりの出来事に、頭を抱え、その場にうずくまってしまった。
 すると突然――
 パァッと泉が光り、輝きだした。


「ナ、ナンダコレハ!?」


 きこりは驚いたように顔を上げると、泉の中心部を見つめた。
 そしてそこからすー……っと、ドスケベ衣装に身を包んだ、綺麗な金髪の女性が姿を現した。
 ドスケベ衣装は、というよりももはやであり、大事な部分しか隠されていなかった。
 加えて、女性自身もかなり煽情的な体つきをしており、きこりは女性的・・・な部分を注視している。
 しかし、当の本人である女性は一切の恥じらいをみせるどころか、静かに、そして道端のごみを漁る犬の体に巣食うダニがした粗相を見るような目で、きこりを見下ろしていた。




「あなたが落としたのは、この薄汚れ、手垢に塗れ、糞みたいな臭いのする斧……うわ、ほんとにくさい……ばっちぃ」




 女性はそう呟くと、持っていた斧を明後日の方向へ投げ飛ばした。
 そのフォームはとても美しく、全盛期の野茂を彷彿とさせるトルネード投法だった。




「あーこほん……。それとも――」


「いいえ、僕が落としてしまったのは心臓です。あなたに一目惚れしてしまいました。結婚してください!」


「わかりました」


「え? いいの? まじで?」


「はい、どうぞ。心臓です」




 そう言って女性が取り出したものは、紛れもないむき身の心臓だった。
 華奢で細く、しなやかな指が、ドクンドクンと脈打つ心臓を鷲掴みにしている。




「うわ、グロ……! って、なんてもん出してるんですか!」


「え? 心臓ですけど……」


「違うでしょう! モノの例え、比喩ですよ! ほんとに心臓を落としているなら死んでいますよ! しまってください! まだドクンドクンしてる……!」


「それもそうですね。では私はこれで――」


「ああ! ちょっとちょっと、待ってくださいよ! まだ話は終わってません!」


「あ、すみません。斧ですよね。ごめんなさい。あまりに不潔で不浄だったのでおもわず、投げ飛ばしてしまいました。ごめんあそばせ」


「いえいえ。全然気にしていませんとも。あんな斧のひとつやふたつ。それよりも、とても美しい投擲フォームでした。野球経験がおありで?」


「いいえ、ただの近鉄ファンです」


「近鉄!? 近鉄とは一体……?」


「大変恐縮なのですが、斧はご自分で取りに行っていただけますか? そして、その斧で自らの首を掻っ切っていただくと、私としては大変嬉しいのですが……?」


「そ、そんな上目遣いで見つめないでください。照れてしまいます」


「はぁ……、それと、もうこんなことはやめてください。私も暇ではないのです。毎日毎日、飽きずにドボンドボンドボンドボン汚い斧を私の泉に投げ込んで……、これが仕事でなければ、訴訟のひとつやふたつ、なんなら東西南北ありとあらゆる罪を擦り付けた後、あなたを断罪することも吝かではありませんよ」


「ほうほう。それもいいですね。是非、あなたのその言葉で、その目で、その体で僕を断罪してください! 僕はすでにあなたという檻に囚われた大罪人なのですからっ! うはははー!」


「死ね」


「え?」


「あら……、すみません。ついうっかり死ねなどと」


「そうですよね。女神さまが軽々しくそんなこと――」


「死ね。死んで詫びろ。出来得る限りこの世の苦しみすべてを凝縮した苦痛を受けた後、然るべき場所で自然に死ね」


「ああ……」


「これでわかりましたね。私はあなたにミジンコ……いえ、それよりも小さいものってなんでしょう……ウサギとかかな……? ……ウサギほどの関心もありません。これに懲りたらもう二度と――」


「ああ、なんということだろう。こんなにも罵倒されているのに心地良い……! ぷりーず、ぎぶみーもあ」


「……どうやら、あなたは私のこの憐憫の情を愛情と、勘違いしているご様子。それか、もしくは刹那的に快楽を求めているのかもしれませんね」




 女神はそう言うと、懐からなにやらピンク色のぷるぷるした塊を取り出した。




「め、女神様……それは?」


「オ〇ホールです。さきほどのお詫びとしてこれを差し上げますから、金輪際私に近寄らないで、この変態」


「えっと……その……」


「なんですか、この変態。まだ何か欲しいというのですか? その下劣で卑劣で愚劣な目で私を見ないでください。ローシ〇ンですか? ローションがほしいのですか? ほら、差し上げます。これで満足ですか?」


「嗚呼、もう……、僕が何を言っても、貴女は――女神様はなびいてくれないのですね」


「はい。ウサギほども」


「わかりました。ウサギに免じて、もう諦めます」


「ほっ……、ようやくわかっていただけましたか。あなたも私に構っていないで、はやく良い女性を――」


「今日のところはね!」


「死ね!」

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