戦えない俺が女の子たちに守られながら魔王と勇者を倒す

水無

タケノコ王国



「――ふむふむ、それでそのタケノコ王国の使者が、観光大使として、あなたを任命したと。あなたはタケノコ王国産のタケノコを各国に宣伝しようと、世界各地を回り、結果、ある程度のシェアは確保した。これでも十二分に、その、観光大使としての責務は果たされたのだけれど、それでは満足しなかったあなたは、ついには自信でうまいタケノコの製造方法、及び、そのプロデュースにまで着手しようとした。しかし、突如として現れた、謎の悪の軍団『キノコー=ダー=バーグ』の妨害に遭い、タケノコ製造は混迷を極めた。激しい攻防の末、見るも無残となったタケノコたちを見て、もはや、地上にタケノコの居場所はないと悟ったあなたは、伝説に名高い『天空タケノコ』の存在を突き止める。天空タケノコとは、あらゆる邪悪や災厄を跳ね除けることが出来、神々のタケノコとも称されていた。そしてそれは、地上より遥か上空にある、ここ――ネトリールでのみ、製造、栽培が可能。逆転の一手として、天空タケノコに一縷の望みをかけたあなたは、命からがらネトリールにたどり着いたものの、運悪く、ネトリール人に捕縛され、牢屋に入れられた……と」


「まあ、そういうことだ」




 もうほとんど原型がない。
 俺のタケノコ物語も風呂敷を広げすぎて、もはや俺ですら、こいつが何を言っているかわからない。
 というか、こいつはなんでいちいち記憶して、あまつさえ、それを声に出して確認を取ってきてるんだ。
 バカなのか?




「……バカですか?」


「ですよね」


「つまり、あなたは真面目に話すことはない……ということですか」


「まあ、そういう事になるのかもしれない」


「……はぁ、いいでしょう。俺も興味はありませんし」


「あれ? いいの?」


「ええ。話したくないのではあれば」


「そうだけど……、外道ユウキから俺を連れて来い、みたいな指令受けてないの?」


「それを受けたのは、あの筋肉バカのほうです。俺ではありませんよ」


「ちなみに、その筋肉バカは俺たちのほうで駆除しておいたから」


「ええ、存じております。どうせ、汚い手を使ったのでしょう?」


「んなワケあるか! きちんと正々堂々、正面から殴り倒したわ!」




 アーニャちゃんが。




「へえ、あなたが……?」




 ……なんだ?
 てっきり、ノータイムで否定してくるとばかり思っていたが……。




「というかそもそも、俺、あなたのこと嫌いですし。こうして会ったからといって、べつに連れ戻したいとは思ってないんですがね」


「奇遇だな。俺もおまえが嫌いだよ」


「そうですね、だから訊きません」




 得心がいった。こいつの癪に障る態度の理由は、そういう事か。
 俺の目標は、こいつらを完膚なきまでにぶちのめす事、それと魔王討伐だ。
 したがって、俺たちの行動は、こいつらに知られれば知られるほど、後々厄介になる。
 それが小さな情報であっても、だ。
 喋らないで良いのであれば、それに越したことはない。




「なあ……、こっちからもう一個、質問していいか?」


「はあ、身勝手すぎやしませんか?」


「ところでおまえ、なんで拘束されてないんだよ」




 とりあえず、ここに来てからずっと疑問に思っていたことを訊いた。
 俺のこの拘束は自前だとして、ユウはしっかりと、ネトリール人に拘束(音を聞いて判別)されていた。けど、目の前のこいつは、とくに拘束されている様子は無し。
 手も足も、自由に動かせ、こうやって立ったり座ったりできている。
 なら、魔法でここを吹き飛ばしたりできるはずだ。
 何故そうしないか、その理由が知りたかった。




「……おまえなら、こんな牢屋、すぐにぶっ壊して出ていけるだろ」


「ほう、するどいですね」


「いや、特に鋭くはないと思うんだけど……」


「ええ、もちろん、皮肉ですよ」




 表情を変えないで言ってくるこいつに、俺はすこし、イラついた。
 なんだこいつは。




「もしかして、その歳で耄碌もうろくしてしまいましたか?」


「なんだおまえは」


「……腐っても、あなたも魔術師です。……どうです。その態勢でも付与魔法は使えるのではないですか?」


「魔法……?」




 クソ魔術師にそう言われ、俺は腕に力を込め、魔力を集中させようとした。
 しかし――魔力が収束せず、うまく魔法を練れない。
 魔法とは本来、自身の持っている魔力と大気中の魔素とを結合させ、そこにイメージを持たせたもの。
 火の魔法なら、火のイメージ。氷の魔法なら氷。
 もちろん、それぞれに得手不得手や、生まれつきの性質、性格なんかも絡んでくるが、基本的にはそういうこと。
 ここに魔素はある。
 頭も冴えてる。……ということは、残る可能性として、魔力に何か異常をきたしているということ。
 そういえば、収束とかいう以前に、何かに魔力を吸収されている気がする。




「どうですか? なにか、阻害されている感覚はありませんか?」


「ある。俺の場合は阻害じゃなくて、吸収されてる感じなんだけど……なんだ? この牢屋の中って、魔法が使えないのか?」


「はい。仰る通りです。俺も何度か試してみたのですが、どうやら、この牢屋は……というよりも、このネトリールでは、魔法は使えないようです。理屈はわかりませんがね。現にこうして、感じていることが、俺とあなたでこうも違う。……当然、魔法の中には、相手に魔法を使わせなくする『封印系の魔法』もありますが、それともまた、違っている様子……」


「正体はわからず。対策もとれず……か。それにしても、ネトリール全域で使用不可って、マジか」


「いえ、それはわかりません。ですが、少なくともここ牢屋と、俺の進入地点では無理でした」


「なるほど。……まあ、そうなってくると、どうせ、ネトリールでは、魔法は使えそうにないんだろうな」


「……なぜです?」


「なぜですっておまえ、そりゃ、おまえの進入場所だけが、たまたま、魔法が使えないところでしたっておかしいだろ。どう考えても、これは地上世界の魔法対策。部分的にだけ、魔法を使えないようにしてるとは思えない」


「ふむ……」




 クソ魔術師はそう言うと、すこし、考えるような素振りをした。




「それにしても、おまえ、進入って……どうやったんだよ。たしか、ペンタローズの人が言うには、おまえの船って焼かれたんだろう?」


「はい。その通り。道中、俺の乗っていた飛行船は焼かれました。けど、俺はそのまま墜落せず、炎魔法の推進力で、なんとかネトリールに着いたのです」


「お、おまえも無茶やるな……。生身でネトリールまでやってきたやつって、おまえが初めてなんじゃね? てか、乗ってた飛行船を落とされた時点で諦めろよ……」




 ――と、思ったが、眼鏡をかけているこいつなら、十分にあり得る。
 おそらく、反骨精神に火がついたとか何とかで、ムキになっていたのだろう。
 もし、ネトリールで魔法が使えていたとしたら、今頃、ここ一面、焼け野原になっていたと思う。




「それにしても、ここまで徹底的に対策してたとはな。これが、ネトリールが地上の世界に喧嘩売れる理由か……」


「ええ……。まず、この高さ。並大抵の魔法はここネトリールまでは届きません。かといって、ネトリールに物理的に近づこうものなら、例の光で撃ち落とされる。運よく、ネトリール内に進入できたとしても、魔法を封じられ、すぐさま捕縛される。……まさに、三段構えです」


「なんか、やる気なさそうだな、おまえ」


「まさかここまでとは、思っていませんでしたからね」


「なんだよ、諦めてんのか? 人質救って、ネトリールをどうにかするんだろ?」


「人質……というか、地上人は見当たりませんでしたよ」


「え?」

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