戦えない俺が女の子たちに守られながら魔王と勇者を倒す

水無

仲間として



「緊急報告! ネトリールが再度、攻撃してきました。今度は飛行船ではなく、ここ、ペンタローズが目標のようです!」




 突然、会議場に声が響く。
 会議場出入り口には、肩で大きく息をしている青年がいた。
 衛兵のように武装はしていないため、一般のペンタローズ民のように見受けられる。


「――ッ!」


 それを聞くや否や、ヴィクトーリアは階段を駆け上り、青年とすれ違う様にして、会議場の外へと出ていった。




「おい、リカルド! あの嬢ちゃんのあとに続くぞ!」


「ヘイ!」




 そう言うと、クロガネとリカルドも、老人とは思えない速度で、会議場の外へと出ていった。




「おにいちゃん、あたしたちも行こ」


「お、おう。わかった」




 俺とユウは、そのふたりに続くように、会議場を後にした。
 振り返って確認はしていなかったが、背後に気配がなかったため、他の人たちはたぶん、ついてきていないのだろう。




「これは……!」




 会議場の外に出ると、ヴィクトーリアが空を仰ぎ見ていた。
 天気はいつの間にか曇りになっており、今にも雨が降り出しそうなほど。
 しかし、いま降っているのは、雨ではなく、雷のような光の筋。
 それが雲の切れ間から、絶え間なく降り注いでおり、ペンタローズの周囲を焼いていっている。
 なんだ?
 これは、俺にも魔法にしか見えん。
 しかし、これだけ降っていて、ペンタローズに直撃していないという事は、単なる威嚇か、はたまたそれほど精度がよくないのか……、どのみち、俺が推し量れるものではない……。
 焦げ臭いにおいが、鼻にまとわりつく。
 ここはヴィクトーリアの分析に期待したいが、予想以上の威力だ。
 飛行船を容易く落とされるのもわかる。
 だったら、ここは――




「ヴィクトーリア! 危ないぞ! もう見たんだから、中に入れ!」


「し、しかし、ユウト……、ちょっと待ってくれ。これは……!」




 俺の問いかけに対して、答えてはいるものの、顔はこちらに向けていない。
 顎を上げ、ヴィクトーリアはキッと天を睨みつけている。
 目の前のことに集中しているせいか、普段、ただの雷鳴だけでビクビクしているヴィクトーリアが、いまは頼もしく見えた。
 ……まあ、無謀であるとも言えるが……。




「親方、こいつぁシャレになってねえですぜ……。すぐ中に入りましょう」


「バカ野郎、何言ってンだ! この子が外にいて、俺が中に入れるワケねえだろがィ!」


「いや、あのっすね……」


「んで、どうだい、嬢ちゃん! こいつがなにかわかったかィ?」


「はは、無視っすか……。まあ、付き合うっすけど……」




 弟子と呼ばれているのだから、普段からこんな感じなのだろう。
 不憫なモヒカンだ……。




「たぶん、これは……、レーザーだ……!」


「れーざーだあ?」


「そう。簡単に言うと、光を何倍も増幅させ、それに極少の質量を持たせたもの……になるのだが……、しかし、この威力は一体……?」


「ほう。そいで、こいつの対策方法は見つかったのかィ!」


「……仮にこの精度のレーザー兵器が、こう、何発も発射可能だとすると、無理、かもしれない……」


「ク……ハハハハハ。……なンだぁ? 無理だァ? じゃあ、このままみんな、仲良くお陀仏かい! それはそれで悪くねえやな!」


「ちょ、なーに笑ってんすか、親方……。それだったら、なおさら、さっさと中へ――」


「完全に、無傷で防ぎきることは、不可能だろう。でも、だったら、もう少しやり方を変えればいい。要するに、私たちがネトリールにたどり着けさえすればいいんだ。だったら、もう着地点は見えてくる。その間だけ、耐えられるように作ればいい」


「……おいおい、嬢ちゃん。もしかして――」


「ああ。最低限の耐久だけ施した船で、ネトリールに特攻をかけ――」


「気に入ったァ!!」




 クロガネさんが突然、辺りに轟くような、大声を上げる。
 突然の声にビックリしたのか、ヴィクトーリアは目を白黒させ、すばやく俺の影に隠れた。




「聞いたかよ、我がバカ弟子よォ。こんな女の子が、見ず知らずの、今日来たばかりのペンタローズを救うために、こんな無茶やらかすンだゼ?」


「い、いや、私の友のためだ」


「おいおい、おまえなぁ、そこは否定するなよ……!」


「し、しかし……!」


「理由なんぞ、なんだっていい! こんなバカを、放っておけるわけねェだろ?」


「……はいはい。わかりましたよ。じゃあ、手助けするってことっすね」


「応さ! この錬金鍛冶師クロガネ、嬢ちゃんの手足のように使ってくれや!」




 ……思い出した。
『クロガネ』
 世界でも数えるほどしかいない、錬金・・鍛冶師の使い手。
 ペンタローズを要塞都市たらしめた存在。
 彼の打つ金属は、素材本来が持っている限界強度を、さらに引き上げられる。
 それを可能にするのが、名前の通り、鍛冶と錬金術とを融合させたものである。
 詳しいギミックや、その方法は解説されてもよくわからなかったが、とにかく、精製された金属に、錬金術で付加価値をつけるものだそうだ。
 あれ?
 錬成したものを鍛えるんだったか……?
 ……要するに、金属をベースとした、物質の再構築とかなんとかだそうだ。
 数年前、俺があの腐ったパーティと一緒に、ネトリールへ向かった時、その時乗っていたのが、クロガネが設計製造した飛行船なのである。
 それがいま、繋がって思い出した。
 というのも、この世界にある、ほぼすべての飛行船は、クロガネの技術をもとに製造されているからだ。
 しかし、表には出ない人間なので、こうして生で会うのは……というか、見るのも初めてだったりする。




「もしかして、私たちの手伝いをしてくれるのか……?」


「ああ。そう聞こえなかったかィ?」


「えっと……」


「すまねえな、ニイチャンがた。親方はこう言いだしたら聞かねえんだ。まあ、台風とかそこらへんの災害に遭ったと思って、諦めてほしい」


「てめっ、なんつー例えしてンだ」


「いや、実際そうですし……」


「………………」




 ヴィクトーリアの表情が優れない。
 胸中にあるのは、クロガネさんたちを巻き込んでしまった、後悔の念か、それとも――




「大丈夫だ、ヴィクトーリア」


「ユウト……」


「あの人は本物だ。手伝ってくれるなら、これ以上頼もしいことはない」


「……しかし」


「なんだ? 他にもなんかあんのか?」


「ここまで、その……、かなり強引に物事を推し進めてしまった。これからの作戦も、たぶん、無事では済まないだろう。というか、かなり危険なものになってくる。おまえたちには世話になった。だから、迷惑もかけられないかけたくない。だからこそ、なし崩し的に、このままユウトとユウを巻き込みたくない。それに、元々これは私たちネトリールの問題だ。だから、だな……ふたりは無理に付き合ってもらわなくとも――」


「怒るよ? ヴィッキー」




 ユウがヴィクトーリアの言葉をさえぎって、そのまま近づいていく。
 そしてなぜか、俺の腕にしがみついてきた。




「無理に……、な訳ないじゃない。ね、おにいちゃん」


「ああ、さっきも言ったけどな、アーニャは俺たちの仲間だ。……そして、それはもちろんおまえもだぞ。ヴィクトーリア。そして、離れなさい。ユウ」


「ユウト……」


「これはおまえだけの問題じゃない。俺たちの・・・・問題だ。勝手に抱え込むな。抱えきれないんだったら、俺たちに負担をかけりゃあいい。それに対して、負い目や引け目を感じるな。俺たちにこうやって、気を遣う事に対して、負い目と引け目を感じてろ。いいか、仲間ってのはそういうモンだ。迷惑? こんなもん、迷惑でもなんでもねえよ。無理に付き合う? 無理してんのはおまえだろうが。泣き虫でヘタレのおまえが、こんなにもテンパってんだ。だれかが支えてやらねえとダメだろうが。仲間が支えてやらねえとダメだろうが。第一、俺たち抜きで、どうやるってんだ? ヴィクトーリアひとりで全部やるつもりか?」


「そ、それは……」


「……あのな、いいか、改めて言っておく。――バカにすんなよ? 俺とこいつは、おまえのいう『迷惑』如き、屁じゃねえんだよ。……一緒に行こうぜ、ネトリールにさ。アーニャを連れ帰って、王様の目覚まさせてさ」


「う……、うぅ……、ありがとぉ、ユウト。ごめん……」


「それでいいんだよ。それで。――んで、俺からの提案なんだけどさ、やっぱ特攻すんのはやめにしない? ちょっと無謀過ぎない? あと、普通に怖いしさ。ね? ね?」


「うう……ぐすっ……それはぁ……却下……、するぅ……ひぐっ」


「………………そか」


「おにいちゃん、目が死んでるけど。大丈夫?」


「………………放してください……」

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