戦えない俺が女の子たちに守られながら魔王と勇者を倒す

水無

全員合流



「――にゃら、どうするにゃ? 相手の目論見はわかったにゃが、どうやってそれを打破するにゃ?」


「簡単さ。あたしが生きていることを示してやりゃあいいんだよ」


「……ということは?」


「ああ。このまま、このフザケた式に乗り込むよ!」


「それしかないよな……、あいつらはまだ来てないけど、ここは腹括りますか――」


「ちょっと待ったァ!」




 俺たちが覚悟を決めたところで、背後から声をかけられた。
 まずい。こんなところを見られてしまったら、さすがに言い逃れはできない。
 なんとかしければ。
 ――とは、考えなかった。
 なぜなら、その声の主はよく知っている声だったから。
 なぜなら、その声の主は――




「ここにいたのか、おまえたち。探したんだぞ」




 ――ヴィクトーリアだったから。
 三人のうち、アーニャとヴィクトーリアは俺たちと、俺たちの足元に転がっている男を、交互に、困惑したような表情で見ていた。
 ユウは相変わらず、まっすぐ俺だけを見ている。




「アーニャちゃん……と、その仲間たち……!」


「いやいや、私が最初に声をかけたのに、なんだ、その待遇は……って、そこにいるのは、もしかして、アネゴ殿!? 生きておられたのか!」


「まあ、なんとかね。そっちも元気そうで何よりだよ」


「おお、その顔は……どことなく、吹っ切れたご様子ですね。やはり、アネゴ殿は凛としていたほうが、格好いいです!」


「そ、そうかな……? そんなこと言われると、ちょっと照れるかも……」


「……みっちゃん、口調口調」


「まあ! ユウトさん。よく見たらお怪我をなされていますわ。大丈夫ですか?」


「うはは! これくらい、なんともありませんよ、アーニャ様! かすり傷みたいなもの――」




 いや、待てよ。
 ここで俺が大丈夫アピールをして、男らしさを示すのもありだが、あえてここは弱みを見せることで、アーニャに治療される運びに持っていけないだろうか、どうだろうか。




「あたたたたた……急におなかの調子が……」


「え? ふ、腹痛なのですか?」


「ご主人が負ったのは、外傷にゃ。腹痛はでっち上――」


「こら、ビースト! め! おすわり! ちんちん!」


「ニャーを、イヌコロにゃんかと一緒にするにゃ!」


「おにいちゃん、成長薬あるよ。大丈夫?」


「やめろ。俺に触ろうとするな。というか……ユウ、おまえは絶対許さんからな、ビーストともども、あとでおぼえとけよ」


「……なにが?」


「ちっ、とぼけやがって。あとでお仕置きしてやるからな」


「……うん。わかった。たのしみにしておくね、おにいちゃん」


「ユウ……なぜ、おまえはそんな……」


「それより、おまえたちがここにいるってことは、武器は取り返せたってことか?」


「あ、はい……ここに……」




 アーニャはあのゴツイ杖を、ヴィクトーリアは銃を、ユウは安物の剣を、それぞれ掲げて見せてきた。




「よし、よくやった。……て、あれ? アーニャちゃん、なんか元気ない? どうかした?」


「え、ええ。なんというか……取り返せはしたのですが、すこしショックだったので……」


「ショック……?」


「わたしから話そう」




 なんだ、この雰囲気、何かあったのか……?




「……ユウト、おまえの武器……、あの杖は、オークションで競売にかけられていただろう?」


「ああ、あの棒きれには、それ相応の価値があったからな。今考えても、一千万以上の価値が、あの棒きれにはあった」


「……も、もう、だれも、あの杖を杖とは呼ばないのだな……、もういい。わたしもこれから棒きれと、呼称することにするとしよう。……ユウトの持っていた棒きれが――」


「クルァァァァァァ!! どぅあーれの杖が、棒きれじゃあああああああああああい!!」


「ひ、ひぃ!? ごごご、ごめ、ごめんなさ……っ」


「にゃ。ご主人、それは悪趣味だにゃ」


「……すまん、ちょっと、棒きれ呼ばわりされたから、イラっときて……。すまんな、ヴィクトーリア」


「うぅ……、話を戻していいか……?」


「続けて、どうぞ」


「だから、アーニャとユウの武器も、競売にかけられていないか、しらみつぶしに探していったんだ」


「しらみつぶし……、総当たりってことかい? よくやるよ、あんたたち……」


「どういうこと、みっちゃん?」


「いやね。ポセミトールは、デカい街ゆえに色々な娯楽があるんだよ。そういうオークションのも、人気の娯楽のひとつとして昇華しててね、会場は点在してるんだよ。そこかしこにね。その数およそ、三十余り……」


「まじか……、じゃあおまえら、この短時間でそんなに回ってきたのか?」


「む。でも、おかしいね。手下に探させたときは――」


「そう。わたしたちの武器は、オークションになんてかけられていなかった」


「ヴィッキー、それ以上は言わないで……!」


「いや、こうなってしまった以上……、包み隠さず言うべきだろう。わたしは言うぞ、アーニャ」




 そう言って、ヴィクトーリアはごくりと生唾を飲み込んだ。
 ……こいつら、武器探しに行っただけだよな。
 も、もしかして、武器を取り返すために、あんなことやこんなことを……?
 け、けしからん!
 そいつに屈したヴィクトーリアもそうだが、アーニャにそんな命令を下したやつは、もっと許せん。
 どこのどいつだ、うちのアーニャちゃんにそんなことを……!
 ぶっ殺して――




「大安売りの、それもワゴンの中で、わたしたちの武器が、雑に売られていたのだ……!」


「……え?」


「ユウトの薄汚れた、取るに足らない棒きれでさえあんなに値が張ったのに、アーニャの棒は……アーニャの棒は……!」


「……おい、その表現を止めろ」


「ちなみに、おにいちゃんに見繕ってもらった、あたしの剣も、同様に売られてた。悔しい」


「いや、おまえのは適当に選んだだけだよ。ワゴンセールの中のやつから」


「え」


「だからこの場合は、ワゴンからワゴンに移動しただけってことだな。おまえの場合は別に取り返さなくても、新しいのを新調すればよかったんだけど……」


「お、おい、ユウト。くちに気を付けろ。いくらユウといえども、それはさすがに傷つく――」


「ありがとうおにいちゃん。適当に見繕ってくれて」


「……感謝すべき要素が、一つも見当たらないのだが……?」


「うんうん。だから、あたしも困ったんだよね。ユウくんのは、すぐに見つかったんだけど、ほかのお仲間さんたちのは、全然見つからないんだからね。だから、武器屋を回らせて、しらみつぶしに探させたのさ」


「それでも、一晩で見つけたんだろ? やるじゃん、みっちゃん」


「いや。見つけてくれたのは、他でもない、手下たちさ。あたしはただ、ふんぞり返って、命令してただけさね」


「……アネゴ殿は謙虚なのだな。どこぞのグルグル布に見習わせたいぞ」


「おまえそれ、俺に言ってんのか……?」


「そんな凄んでもダメだぞ! この場で謙虚にならなければならないのは、もはやおまえだけだ、覚悟するがいい!」


「ほぅ……、覚悟はいいようだな……!」


「ひぃ!?」


「とーにーかーく! ……これで全員合流できたってわけだ。ユウくん、その三人にも、今回の事、話ておいたほうがいいんじゃないのかい?」


「それもそうだな……諸君! 諸君らには今から、重要な任務に就いてもらう! 心して、私の話に耳を傾けるように!」


「おまえはどこの軍曹だ……、っと、そうだった。一体、なんなのだ、この屍の数は……!? 何があったんだ? そしていま、ユウトたちは何をしようとしているのだ!?」


「それをいまから話すんだよ」

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