魅力値突破の『紅黒の魔女』

岩野こま

修練1

 カレンは目の前の的に向かって手の平を突き出し、空中に碧色に光る風の属性魔法陣を展開する。そして更に小さな四つの特性魔方陣が、最初に出現した属性魔方陣と重なり合う。

三重特性魔法トリオマギア螺旋暴風スパイラルストーム!!」

 カレンが魔法名を詠むのと同時、自身の前方に旋風が発生し、それが土を巻き上げながら正面の的に向かって移動する。

 そしてそれが的に到達すると、辺りに衝撃音が鳴り響き、その数秒後には旋風が霧散した。

 カレンがかなり魔力を抑えたことと、それ自体が耐久性を高められた魔機マキナであったために的は無傷であった。

「魔法を習って半年で、もう下級級魔法最上位の三重特性魔法まで使えるなんて末恐ろしい才能ねー。
 それだけじゃなくてカレンちゃんの場合、五大属性全てを使用可能な全属性持ちオール
 先生自信無くしちゃう……」

 魔法は通常、加護を受けた精霊の属性しか使えない。稀に複数の属性を持つ者もいるが、せいぜい二属性までがほとんどだ。しかしカレンに至っては、全ての属性魔法を使用可能なのである。

 セロによると、セロ自身が五大属性『火』、『水』、『土』、『風』、『空』のどの属性でもない、特殊な属性の大精霊であることが理由らしかった。

 カレンの才能を羨むように、シクシクと声に出しながら嘘泣きするフォン。

 両手を目元に添えて泣き真似をしているため、腕によって寄せられた爆乳が更に強調される。そんな泣き真似を無視するように、カレンは今放った魔法について話し出す。

「四重特性以上を付与しようとすると、特性同士が反発しあって上手く行かないんですよね……。
 本当はさっきみたいな自分の場所から対象に向かうんじゃなくて、直接指定した場所に旋風をぶわーって出したいんですけど……」

「カレンちゃん、三重特性魔法トリオマギア螺旋暴風スパイラルストームを好きな場所に出すって、それはもう上級最上位の六重特性魔法ヘキサマギアよー」

 さっきまでの嘘泣きのポーズとは変わって、次は両手を上げてやれやれと首を横に振って呆れているフォン。

 しかしその仕草はカレンの無知を馬鹿にしている訳ではなく、この娘なら成功しかねないという末恐ろしさに呆れて事だった。

「え?! 四重特性魔法テトラマギアじゃないんですか? さっき放った螺旋暴風スパイラルストームに座標指定の特性を付与すれば良いだけだと思ってたんですけど……」

「カレンちゃんはあまり座学は真面目に受けてなかったのかなぁー。先生は悲しいぞ。

 アナタの放った通常の螺旋暴風に付与されている特性は『螺旋』、『常態保持』、『直進』の三つ。
 それをを狙った場所に直接発現させる場合は、風単一魔法に『潜伏』、『螺旋』、『状態保持』、『座標指定』、『直進』、『発現』の六つの特性付与が必要になるわ」

「なるほど、潜伏で一旦風を発生させないようにして、発動状態を維持しながら座標を指定。そこに魔法を移動させてから発現させれば良いって事ね!
 フォンちゃん、もう一度やってもいい?! 」

「無理な多重特性付与は失敗した時の反動が大きいからダーメ! ケガしたら先生が学園長に怒られちゃうでしょー。
 こう言うのは段階を一つずつ踏んでいかないと。六重特性付与なんて上級最上位魔法、魔法使いの現実的な最終目標と言っても良いレベルなんだから」

 私なら絶対出来ると思うんだけどな、と思いながらもフォンが珍しく厳しい顔していたので、仕方なく従うカレンであった。ただし、捨て台詞を吐いて……。

「フーンだ。わかりましたよー、フォンちゃんのケチっ! おっぱいお化けっ!」

 冗談で言ったつもりのカレン。しかし、フォンはそれを本気にしたのか、先ほどの嘘泣きとは異なり、目に涙を溜めながら腕をくるくる回しカレンをポカポカと叩き出す。

 激しい動きに合わせて跳ね回る爆乳はまるでフォンちゃんの悲しみと怒りを体現しているようだった。

「こらこらカレン。あまりエマール先生を虐めるんじゃないよ」

 戯れているのか喧嘩をしているのか、騒がしい二人の元へ、首に掛けた白いタオルで汗を拭いながら近づいてくる一人の女生徒。

「ライラさーん。うわーん!! 」

 ライラを見つけるや否や、フォンは彼女に抱き付いて号泣し、そしてライラは苦笑いしながら自分の胸へ埋められた頭を優しく撫でてあげる。

「あ、ライラ。トレーニングは終わったの?」

「ああ。今日は疲れたからそろそろ帰ろうかと思ってね」

 うなじの汗を拭きながら話すカレン。動きやすいようにと、ランニングと太ももが露になった短パン姿は、引き締まった彼女の肉体をより一層映えさせていた。

 ライラの持つ加護は土属性。そして幼少期より父から教わった武道を生かすため、現在は土属性特有の身体強化魔法に関する修練を集中的にしている。
 今は正にそのトレーニングの後なのだ。

「じゃぁ、シャワー浴びたらカフェでお茶していこうよ!」

 未だフォンを慰め続けているライラを誘うカレン。

「そうだな。今日は仕事も無いから少し寄って帰ろうか」

 それを聞いた泣いているはずのフォンは、カレンの方へ振り返り、ジトっとした恨めしそうな視線を向ける。

「もー、分かりましたよ! フォンちゃんも一緒に行こ!」

「やったー♪」

(子供か!!)

 しかも、やはり嘘泣き。本当にどちらが年上なんだろうと思うカレン。

(ま、そんなフォンちゃんが可愛いから良いんだけどね)

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