魅力値突破の『紅黒の魔女』

岩野こま

入学そして最悪の再会2


 入学式が終わった後、二人の教員が生徒の向かいに立つ。

「今からそれぞれのクラスを発表します。名前を呼ばれた人は、呼んだ先生の前に並んで下さい」

 この教員のどちらかがカレンの担任になるのだろう。優しい先生だといいな、カレンがそんなことを考えていると自分の名前が呼ばれる。

「カレン=マクスウェルさん」

「はい! 」

 カレンは呼ばれた先生の列に並んで立つ。彼女の前には既に10人程が並んでいた。

 ちなみにマクスウェルと言うのはシグの姓であり、彼の姪ということになっているカレンも同姓を名乗っている。シグから同姓を名乗るように言われた時、カレンは家族になれたようや気がしてとても喜んだのだった。

 その時の事を思い出しながら少しニヤついていると、一つ前に並んでいた男子生徒が振り返って声を掛けてくる。

 その馴れ馴れしい口調に若干の不快感を覚えるカレン。

「お久しぶりですね。貴女、カレンさんと言うんですねぇ。そう言えば先日お会いした時には自己紹介が出来ていませんでしたね。
 私はアラン=ゲールと申します」

 アラン? 誰コイツ。何処かで会った様な気がするが思い出せない。

「初めまして……ですよね?」

 見覚えが無いにしろ、同じクラスで過ごすことになるのだがら失礼が有ってはいけないと思い、ニコッと微笑みながら返事をするカレン。

「この大魔法使い確実と言われる私をお忘れですか?!
 そんな筈は無い!
 わかりましたよ。貴女さては……、照れてますね?」

(あ、思い出した。この勝手に決めつける言い方……)

 そいつは解魔の儀式をカレンの直前に受けた男だった。

 あまりにも失礼な人間であったため、彼女は記憶から強制的に消去していたのだ。

(確かあの時、私に外見だけだとか、自分は大精霊の加護確実とか言ってたなぁ。
 ていうか、コイツと同じクラスだなんて先が思いやられるわ……)

 先日の出来事を思い出し、カレンの中にあの時のイライラが蘇って来る。周りに他の生徒がいるので
我慢しようとしたが、つい皮肉を口走ってしまう。

「思い出しました!
 あの時、私の前に解魔の儀式を受けてダメだった方ですね。
 この学園って、精霊の加護なくても入れて、大魔法使いになれるんですか?」

「なにを言ってるんですか貴女は……。そんな訳無いでしょう」

 なんでコイツはちょいちょい人を見下してくるんだと、カレンは腹が立ちながらもなんとか笑顔をキープする。
 それはもう苦笑いでしかなかったのだが……。

「私にもね、宿ったのですよ!!
 儀式十六回目にして精霊の加護がねぇ!!
 水鏡自体の反応は大きくはなかったですが、私程の男なら必ず大魔法使いになれると思いませんか?!」

 目が怖い、と恐怖心すら感じるカレン。今も聞きたくもない情報をべらべらと話してきて、こちらの気持ちは気にもしていない。愛想笑いを浮かべたままドン引きしていると、ヒートアップしたアランが突然カレンの両肩を掴んで強く揺すってきた。

「キャッ! 」

 思わずカレンはビックリして声を挙げてしまう。それでも構わずの彼女の肩をぐらぐらと揺すりながら、アランは興奮した様子でしゃべり続ける。

(ほんっとなんなのコイツ!!)

「そろそろ止めなよ。嫌がってるじゃないか」

 カレンの堪忍袋の緒が切れる寸前、一人の女子生徒が背後からやって来て、カレンの肩を掴んでいたアランの片方の腕を捻り上げた。

「ぐひぃ」

 なんとも情けない声を挙げてカレンから手を離し、よろけながら一歩後ろへ下がるアラン。
 
「あんまり気安く女の身体に触るんじゃないよ」

 私を助けてくれた女子生徒はゴミを見るような目でその男を睨んでいる。

「お前……、私にこんなことをしてタダじゃ済ませませんよ。私が誰だか知らないようですから言っておきますが」

「うるさいですよー、そこー」

 彼が話し終わる前に、生徒全員の名前を呼び終えた教員が、騒いでいたカレン達三人に向かって注意する。

「チッ……」

 アランは口惜しそうにしながら続きを言うのを止め、前に向き直り大人しくなった。

 それからカレンとその同じ列に並ぶ四十人ほどの生徒は、教員の案内に従い教室へと向う。

(あんな変な奴と同じクラスだなんてツイてない……)

 カレンは肩に先程揺すられた事による痛みを感じながら、これからの学園生活を思うと憂鬱になるのだった。

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