魅力値突破の『紅黒の魔女』
家族2
少女は転道者だった。シグはこの世界には時々異世界からの来訪者が現れる事を知っていた。今彼らに根付いている文化、道具などの中には、昔にその転道者達がもたらした物が多いことも。
少女は自分を『カレン』と名乗った。その名前を聞いて、内心驚愕をするシグ。
何故なら、その名は七年前に十歳と言う若さで妻と共にこの世を去った、自分の娘と同じ名前だったからだ。
このカレンが何歳かは分からなかったが、今も娘が生きていれば近い歳だろう。生きていればなんて考えることが、もはやは虚しいのだが……。
七年前、シグはとある事件で妻セリカと娘カレンを亡くしている。美しい妻と可愛い娘と三人で幸せな生活を送っていたが、その事件によってある日、大切な二人を奪われてしまったのだ。
それ以来、彼は深く絶望し何に対しても無気力になってしまい、事件から七年経った今も妻と娘の部屋や私物はそのままにしてあるのだった。
少し話したあと、シグはカレンを亡き娘の部屋に案内してやり、二、三日なら使って良いと告げる。それを聞いたカレンは安心した様子で喜んでいた。
本来であれば誰もこの部屋に入れたくない筈なのだが、名前の一致がそうさせたのか、シグは自分でも驚く程すんなりと部屋を貸していた。
次の日、カレンはなかなか起きて来なかった。異世界からこちらに来ただけでなく、その日に盗賊にも襲われて疲れていたのだろう。
丁度昼を迎えた辺り、そろそろ起こしてやろうとシグは娘の部屋に向かう。
そして階段を登っていると、突然大きな音と共にカレンがドアから全裸で転がり出てきた……。
しかしシグは、その事は思い出さない様にしようと思う。不可抗力とは言え、妻に対して申し訳なく思えたからだ。
着替えて降りてきたカレンに、シグは解魔の儀式を受けないかと提案した。今後この世界で生きていくのであれば、精霊の加護は調べておいた方が良い。それに大きな風呂も入れるぞ、と何気なく伝えるとカレンはとても喜んでいた。
それを見て、風呂に入りたかったのか、と気付くシグ。あまりの喜び様に、自分の家にも簡単な風呂があるとは今さら言い辛くなってしまう。
まぁ、解魔の儀式に行くのなら取り敢えずはそこで入れば問題ないだろう、とそこは開き直るのだった。
カレンと教会に行き、儀式を待つ列に並ばせるシグ。彼は広場の階段に腰掛け時間を潰していた。
途中カレンが手を振ってきたが、カレンの周囲から何故か視線が自分へと注がれ、シグは居心地が悪くなりカレンとは別の方向に身体の向きを変えたのだった。
教会に来てから鐘が三度鳴った頃、ちょうどカレンは儀式が行われる祭殿に入っていく。それを見てもう暫く待ってから、シグは椅子から立ち、カレンの儀式を見学するために祭殿の二階へと向かった。
しかしこの時、シグはまだ知らなかった。自分が受けろと提案した儀式で、後に伝説の一端として語り継がれる光景を目の当たりにすることを。
少女は自分を『カレン』と名乗った。その名前を聞いて、内心驚愕をするシグ。
何故なら、その名は七年前に十歳と言う若さで妻と共にこの世を去った、自分の娘と同じ名前だったからだ。
このカレンが何歳かは分からなかったが、今も娘が生きていれば近い歳だろう。生きていればなんて考えることが、もはやは虚しいのだが……。
七年前、シグはとある事件で妻セリカと娘カレンを亡くしている。美しい妻と可愛い娘と三人で幸せな生活を送っていたが、その事件によってある日、大切な二人を奪われてしまったのだ。
それ以来、彼は深く絶望し何に対しても無気力になってしまい、事件から七年経った今も妻と娘の部屋や私物はそのままにしてあるのだった。
少し話したあと、シグはカレンを亡き娘の部屋に案内してやり、二、三日なら使って良いと告げる。それを聞いたカレンは安心した様子で喜んでいた。
本来であれば誰もこの部屋に入れたくない筈なのだが、名前の一致がそうさせたのか、シグは自分でも驚く程すんなりと部屋を貸していた。
次の日、カレンはなかなか起きて来なかった。異世界からこちらに来ただけでなく、その日に盗賊にも襲われて疲れていたのだろう。
丁度昼を迎えた辺り、そろそろ起こしてやろうとシグは娘の部屋に向かう。
そして階段を登っていると、突然大きな音と共にカレンがドアから全裸で転がり出てきた……。
しかしシグは、その事は思い出さない様にしようと思う。不可抗力とは言え、妻に対して申し訳なく思えたからだ。
着替えて降りてきたカレンに、シグは解魔の儀式を受けないかと提案した。今後この世界で生きていくのであれば、精霊の加護は調べておいた方が良い。それに大きな風呂も入れるぞ、と何気なく伝えるとカレンはとても喜んでいた。
それを見て、風呂に入りたかったのか、と気付くシグ。あまりの喜び様に、自分の家にも簡単な風呂があるとは今さら言い辛くなってしまう。
まぁ、解魔の儀式に行くのなら取り敢えずはそこで入れば問題ないだろう、とそこは開き直るのだった。
カレンと教会に行き、儀式を待つ列に並ばせるシグ。彼は広場の階段に腰掛け時間を潰していた。
途中カレンが手を振ってきたが、カレンの周囲から何故か視線が自分へと注がれ、シグは居心地が悪くなりカレンとは別の方向に身体の向きを変えたのだった。
教会に来てから鐘が三度鳴った頃、ちょうどカレンは儀式が行われる祭殿に入っていく。それを見てもう暫く待ってから、シグは椅子から立ち、カレンの儀式を見学するために祭殿の二階へと向かった。
しかしこの時、シグはまだ知らなかった。自分が受けろと提案した儀式で、後に伝説の一端として語り継がれる光景を目の当たりにすることを。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント