ゲーマーでモブキャラ扱いの俺が何故かヒーローになった話。

怪盗80

第11話:デートに誘われた主人公の末路。

あのツインテールを助けた日から数日。
今現在、俺は…。

「あっ、…おはよう…今…朝ご飯用意する…少し待って…」

死に際にいます。
台所でなんか紫色の液体がついたおたまを握る美鈴がいた。
あぁ…これ…死んだな…。
すぐに電話のアプリで勇人の番号を打ち込むとシナリオ通りに描かれたみたくすぐに電話に出た。

「よぉ♪朝飯食わないか?俺が手を振るってやるからよ」

『マジで!?すぐ行く!今すぐ行く!』

明るい声で勇人に電話をかけると元気よく飛び出す音が電話から聞こえた。
勝った…。
お前はもう終わりだ…勇人ォ…。
携帯を握り締めて口角が上に上がる。
数十秒後には扉の前で待っていた。

「おーい、煉!飯食いに来たぞ…」

「おー、よく来てくれたな…一緒に食べようや死のうや

逃げようとする勇人を捕まえて部屋に連れ込む。
その後、俺の部屋からは悲鳴と恐怖の二重奏が響いていた。



気だるさを残しながら午前中の授業が終わり昼食の時間。
俺は一人で食堂に来ていた。
ここなら人が多いが一人だけで飯が食べれる。
そして勇人は女の子達に学園都市内を連れ回されている。
それがイケメンに生まれた罰だ、思い知りやがれ…。
一人で昼食を食べているとあのツインテールが定食を持って前の席に座った。

「おーい、煉君は一人ぼっちかな?」

「あっ、はい。(ごめんない、謝るのでその眼を俺に向けないで)」

「あの…煉君…昨日は…上から目線で話しちゃって…ごめんなさい。
私、緊張しちゃうといつもあんな風に…」

「いや…俺の方こそ…いや、ほんとに申し訳ないです。」

昨日の黒歴史化しそうな台詞を思い出してしまい硬直したまま箸で持っていた鮭の塩焼きを落とした。
その硬直状態を見ていたツインテールは真面目そうな顔を緩ませて穏やかに笑いながら話した。

「そういえば煉君、なんで私を名前で呼ばないの?」

「いや…えっと…その〜名前を知らなくて…」

ごめんなさい、自分、一応隠キャなのであまり名前とか知らなくても大丈夫でしょ?なんて考えていてすみません。
慌てて誤魔化そうとするがため息をついて優しく教えてくれた。

「はぁ…私は七瀬、七瀬結衣ななせゆい

「それじゃあ…結衣で。」

優しく笑い掛ける結衣はとても優しい人なんだろうけど…俺にとっては天敵しかならない。
元々、俺達の様なオタクは教室の隅で話しているのが通常なのにこんな女子ともまともに話した事もない俺にはきつい。
そんな焦りを感じながらこの話を消そうとする俺に不満を思っているように首を傾げる。

「そういえば…煉君のデバイスすごいね、アレどこにあったの?」

「それは…ちょっと言えない」

言っている事には間違いはない筈だ。
もし言ったとしても信じる訳がないだろう。
こんな状況で美琴や美鈴が来たらもう説明するしかないんだけどそんな偶然あり得る訳…。

「あれ?煉くーん…その子…誰?」

はい、フラグ回収お疲れ様です。
和かな笑顔でやってくる美琴はある意味とても可愛い。
だけどもこれは目が死んでいる…これは死んだか…いや、待てよ…確か勇人のゲームで見た事がある…病んでいる目だ…。

「えっ!!せ、生徒会長…煉君…生徒会長と関わりがあるの!?」

「煉君!この事は秘密って言ってたじゃんもぅ…」

もう勝手にしてくれと言いたげな顔で頭を抱える煉をみて美琴は不満があるように頬を膨らませた。

「とりあえず…美琴は黙ってて…収集がつかなくなる」

「なんで?あんなに激しく肌と肌を交わし合った仲でしょ?」

その言葉を聞いた周りの人達の目がこちらへ向けられる。
おい、何言ってんだ…。
肌と肌を交わし合ったってのは稽古の話だよな?確かに組手をしたけども!稽古を頼むからそうだと言ってくれ…。
慌てて頭の中であらゆる可能性を考えていた。

「結衣、落ち着け?これはあくまで稽古の件でだな…」

「あわわ…」

目を白黒させながら慌てる結衣を落ち着かせる為に説明し始めて約10分後。

「と、言う訳で…美琴は俺の師匠のお嬢様であって俺とは親しい仲でもあるけども肉体的関係はない」

きっぱり真顔で言い放つと美琴は穏やかに笑い、結衣は安堵したのかホッと息を吐いていた。
俺はそれどころでは無いけどな。

「結局美琴はどうしてここに?」

「んーとね…明日って休日だから〜デートしよ?」

「……?」

今こいつなんて言った?
開いた口が塞がらない煉と顔を赤くして顔を隠す結衣は聞き間違いではないかとおもっていた。

「だからデートだって言ってるでしょ?明日の朝7:00に私の部屋にね♪」

「えっ…あの…その日…私もいいですか?煉君にはお礼がしたいですし…」

おいおいおいおい…。
話が大きくなる前にここで留めておかなければ俺の命が危ないと察した煉は無理矢理理由をつけようとしたが無理だった。

「それじゃあ明日私の寮に集合ね♪煉君…逃げたら…わ か る よ ね ?」

「はぁ…」

背を向けて何処かへ走り去る美琴が見えなくなるとすぐにスマートフォンを取り出してチャットアプリで勇人に連絡した。

「勇人…明日暇か?」

まずは文面だけで何も悟らせない様に連絡を送る。
そして縋る思いで勇人に電話を掛ける。
頼む…出てくれ…。

『もしもし、何かようか?』

「勇人…少しお願いがあるんだけどお前が代わりにデートに…」

『断る』

説明する暇もなく電話は切られた。

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