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ゲーマーでモブキャラ扱いの俺が何故かヒーローになった話。

怪盗80

第6話:主人公補正なんてしらない。

目を覚ますと見知らぬ白い天井があった。
どうやらベッドで寝かされていたようで身体を起こすと少し目眩がするがそこまで酷くはなかった。
確か…デバイスを起動して数分経ったらすぐに倒れて…。

「あっ…起きた…」

そこには春風美琴の様な純白の髪を弄っているどう見ても…幼女だ…。
身長は130cmあればいい方なくらい。服装は一枚の薄くブカブカのTシャツの上から白衣を羽織っていた。
ここからは見えないが下には何か履いていることを願いたい。
そして美琴よりも髪は長く腰辺りまであり目元まで髪が垂れ下がっている
かと言って顔立ちも整っていてまるであの春風美琴が幼女になったようだった。
もしこの場に勇人がいるものならこんな状況を気軽に楽しんでいるのだろう。

「えっと…なんで幼女が?」

「幼女って言うな…」

まだ覚醒しきれてない頭を叩かれ少し痛みを覚えた。
てか、この幼女はなんなのだろう。
頭の中で考えていると扉が開いた。

「あっ!美鈴!!ここには入ったらダメでしょ!この男の子は結構女の子には弱いんだから…」

「知らないし…聞いてない…それにコイツに幼女って言われたから…私…15なのに…」

………?
まて、今なんて言った?

「私は15歳…間違えるな…」

頭を抱え混んで今の俺の状況を整理する。
まてまて、コイツが15歳?こんな幼女が?
また信じられないように白髪のロングヘアーの幼女を見ると美琴は呆れたまま話し出した。

「本当の事だよ、この子は私の妹の春風美鈴15歳」

「ドヤァ…」

「なんというか…その…なんかごめん…」

 ふと見えてしまった胸元の膨らみが美琴よりも美鈴の方が若干大きいような気がするが気のせいだろう。
気のせいでありたい。

「お前が煉とかいう奴だよな…お前は血を使いすぎて倒れたんだけど…頭大丈夫…?」

「いや、待て血を使い過ぎって頭が大丈夫かってどうゆう事だよ?」

そんな事も分からないのかと言うようなドヤ顔で決めてくる美鈴は仕方がないようにスマホを見せた。
そこには俺の顔写真付きデバイス。
何かの量だろうか100mlと記されていた。

「これはデバイスを使用する為に…使った血の量…普通は10mlでいいのに…なんで50mlも使っているの?…死にたいの?」

「いや、だからなんで血が話の中に出てくるんだよ」

「そのデバイスは使用者の血を使って刃を血の結晶で形成する…詳しく言うと分からない…でしょ?」

美琴がデバイスを分かりやすく見せている。
スマートフォンを取り上げると次は黒色の瓶のような物を二つ程取り出した。
瓶の様な物は蓋が無かった。
蓋が無い代わりに中には何か液体が入っていた。

「血の結晶は血の純度、血液型、使用者の気持ちに比例して硬度が高くなる。
この瓶にはお前の血に成り代る液体が入っている…瓶一個で30分間剣の状態を維持できるんだけど…」

「直接血を注ぎ込んだ方が強くて硬い剣になるんだろ?」

「うん…」

自分の台詞を言われたのがそんなに腹に立ったのか頬を膨らませながら拗ねていた。
俺は机に置かれたデバイスを手に取るとずっしりと重い感覚があった。
穴があった理由はこの瓶を挿し込む為だと知ったらよく分かった。

「でも…瓶を使い過ぎるな…一つ作るのに三ヶ月掛かる…」

「てことは下手すれば貧血で死ぬかもしれないのか?」

「うん…」

大人しくコクコクと首を縦にふる美鈴に少しも可愛げがない顔を引っ張りながら笑った。

「ありがとな、でも俺はこのデバイスはもう使わない」

「それは聞いてた…そういうと思ってた、だからこれ見て…」

モニターの画面に表示されたのは病室で点滴を打たれている人達の動画だった。
そこに写っている人達は数十人以上寝ていた。
寝ている人達をよく見ると俺のクラスメイトが数人点滴を打たれていた。
ちょくちょく空いているベッドには血がこびり付いているのがモニターでも分かった。

「これはアリアっていう奴じゃないけど何者かが君達の街に撒いた毒のせい…数人分のワクチンは出来ているから死にはしないだろうけど…残りは全員死ぬ…」

「おい…待てよ…あいつらは…勇人も毒に…」

「それは分からない…でも毒にはなっていないと思う…人質を怪我させたら人質としての役割…無くなる…」

無情にもモニターに映し出される映像を説明した時には殺意と悔しさがあった。
殺意は毒を撒いた奴に対しての殺意、関係ない奴らまで巻き込んでおいて世界を救うなんて言いやがって…。
悔しさはクラスメイトを守れる力があったのに守れなかった事…。
無理をして助けに行けれれば助けられた命もあったかも知れない…。

「なぁ…あの毒ってのはどうすれば治るんだよ」

いつもの声色ではなく話しただけでもキレている事がわかった。
その突然の変わり様にたじろぎながらも質問の答えを返す。

「と、とりあえず…ウイルスを使った者の殺害…毒そのものを持ってきてワクチンをつくる事…」

「分かった…風見…とりあえずすぐに血を増やせる薬くらいあるんだろ?」

「え、えぇ…その様なサプリメントはありますけど…」

棚から大きな金属製のボックスを持ってきた。
ボックスから取り出したサプリメントの箱を開け赤いサプリを見せた。

「確か…名前…美琴だったよな…取引だ…」

「はい、だいたい分かっていましたよ♪
『お前らの最大技術で支障が出ないくらいの血を増やせるだけ増やせ』
と言いたいんですよね?」

殆ど考えていた事を言われたのは少し驚いたがそれは後にしておこう。
だけど一つ足りない事があった。

「少し足りない、
世界でもなんでも救ってやるからお前達の仲間に入れさせろお前らにつけばこの事を隠蔽するんだろ?」

「ふふっ…そうですね♪では取引成立です♪」

美琴が綺麗な手を出して握手を求める。
俺はその握手に応じて握り返すと風見が必要な物を持ってきてくれたのだろう。
何故か作られていた俺専用の戦闘服。
薄い黒色の防護服の胸元にはさっきの瓶を収納できる場所があり、そして早く動ける様に無駄な物は全て破棄しているのだろう物凄く軽い。

「煉様…先程のサプリメントです…噛み砕いて服用を…この二錠で血が回復しますが副作用があるのでお気をつけて」

サプリを口に放り込み歯で噛み砕く。
鉄の様な味がして体全体が熱くなってきた。

「さてと…俺の最初で最期の初陣だ!」

デバイスを腰に巻いたホルダーにセットする。
ホルダーからでも鈍い銀色の光を放つデバイスには少しだけ変な気持ちになった。
こんな小さな物で世界を救うなんて馬鹿げてる。
でも、そんな馬鹿げた事が目の前の現実である事には変わりなかった。

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