あの日誓った約束を

ノベルバユーザー351613

幼馴染

家を出てから、隣に住んでいる幼馴染の仁奈を起こしに行くのがいつもの日課だ。
ピンポーン。
「おはよう、有吾くん」
「おはようございます」
「ごめんけど仁奈まだ起きてないの。任せていいかしら」
「またですか、わかりました」
仁奈が寝坊するのはいつものことだが、今日こそはと小さな希望を抱いていたが、やむなく砕かれてしまった。仁奈の部屋の前まで行くと、一呼吸おいて部屋にはいった。部屋の中は甘い苺のような香りが広がっていた。
「まだ寝ているのか。もう行く時間だっていうのに、毎度毎度約束の時間をすっぽかしてすや すや眠りやがって」
仁奈に近づいていてみると、ウサギ耳の着ぐるみを着てすやすやと眠っている。
いたずらをしてやろうと思ったが、体をうずめて、毛布にくるまって眠っている寝顔が 気持ちよさそうなので、今日のところは止めとくことにした。
「それにしても起きないなぁ」
手でほっぺをつまんで伸ばしてみる。
みょーん。
「うぅぅ」
試しにほっぺを摘まんでみたが、反応が可愛すぎる。
「ゆうくんパフェ買ってぇ♡」
寝言だが楽しそうなので乗ってみた。
「はい、どうぞ」
 仁奈の手を持って、パフェを渡す動作をする。
「はいどうぞ」
「ゆうくんありがとう。」
そう言うと仁奈は俺の手を取り、そのまま口に加えてしまった。
「はむぅはむぅ」
手を口にくわえられて悪い気はしないが、そろそろ起こさないといけない。
「すまんがパフェはもう終わりだぞー。」
そう言って手を口から出そうとすると、バシッ 
仁奈はすかさず俺の右手を強く掴んだ。
「ちょっと、手を離してくれるかな?」
っと、俺も仁奈の手を引き剥がそうともう片方の手を近づけた瞬間、バシッ 
「な、何 」
平手打ちだと この研ぎ澄まされた反応速度を見るに、こいつはかなりの手練だ!この戦いは、負けられない 
「話せこのー」
バシバシバシバシバシッ 
「うーんうーん」
仁奈は唸る。
「全然勝てないだと これだけは使いたくなかったが、こうなったら奥の手だ 」
こちょこちょこちょこちょ。
「ン〜フフフ」
「おし、効いてるぞ。起きろこのぉー 」
こちょこちょこちょこちょこちょこちょ。
「フフフフフッ」
「わっ 」
仁奈が笑った勢いで俺に突っ込んできた。そのまま、二人とも床に倒れてしまった。
「いてて」
目を開けると、仁奈がだらしない格好で俺の上にまたがっていた。
「うぅ、うぅん。ゆうくんおはよー。」
「お、おはよう」
仁奈は寝ぼけたままきょろきょろとあたりを見回している。そして何か思い出したかのように、時計を手にを取り、見つめて・・・。
「はわわ 」
仁奈は慌てふためきながら起き上がり、急いで身支度を整えている。
「制服のむき逆だぞ」
「ぬっ ほんとだ」
仁奈は昔からおっちょこちょいで忘れん坊なので、少し心配だ。
「ほら、髪編むからここに座って」
「うん」
昔はよく智恵の髪を編んであげていたので、髪を編むことができるようになっていた。
 仁奈は俺の膝の上に座り込むと、髪を編んでもらいながら鼻歌を歌い始めた。
「ふーふふーふふー♪」
「楽しそうなのはいいが、高校生になったんだからそろそろ自分のことは自分でできるようになれよ」
「いいの。ゆう君に一生面倒見てもらうから。」
「勝手に決めんなよー」
 俺がそう言うと、仁奈は俺の方に振り返り、
「結婚してくれないの?」と、不安そうにささやいた。
「俺なんかでいいのか?」
「俺なんかでいいの」
そういって仁奈はにっこりと笑った。
それから急いで準備をし、時間の余裕をもって学校へ出発することが出来た。

モグモグ。
仁奈は口をはむはむさせて、メロンパンをおいしそうにほおばっている。
かわいいなぁ。そう思いながら俺は仁奈の頭に手をのせてよしよしした。仁奈はちょっと不思議そうな顔をして、その後にっこりと微笑みメロンパンにかぶりついた。
俺はそんな仁奈を横目に今朝の寝言のことを思い出していた。
「今度パフェでも食べに行こうか」
「うんんんー うんん」
仁奈は食べていたメロンパンをのどに詰まらすほど喜んでくれた。
「はいはい、苺ジュースな。」
苦しそうな仁奈にそう言って飲み物を渡す。
じゅるるるる。ぷはぁー。
「いつ行くの?いつ行くの?」
仁奈は苺ジュースを飲み終わった後、俺の袖を摘まんで早く行こうよと上目遣いで問いかける。
「帰りにでも行くか」
「よしょー。あ あちし今お金ないよー」しょぼん。
「もちろん俺のおごりな」
「よっちゃー 有吾ありがちょー」
そういって仁奈はとてもうれしそうにはにかんで笑った。

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