最強剣士異世界で無双する
過去 父との戦い
これは剣一が異世界へ転生する事故が起こるより三年前のお話。まだ、最強と呼ばれる前のお話である。
それは、いつも通り父や妹とのトレーニングを終えたある時、
「剣一、わしと真剣勝負をせんか?」
頭から水をかぶっていた俺は、その音にかき消されて何と言っているかよく聞き取れないかった。
「父さん、なんって!」
「わしと真剣勝負をしようかと、いっているんだ」
父からの突然の申し出、それに対して俺は、
「いやだよ~、だって父さん強いし、やっと全中の大会も終わったところなのにさ」
つい一週間前、俺は中学剣道の全国大会で優勝して三連覇を達成してきたところであった。そのため少しの間は試合なんてしたくないと考えていた。
それに父は世界剣豪大会で十連覇を達成している人で、この世界で父さんに勝てる者など存在しないのではないかと言われているくらいであった。そんな父と試合など絶対にしんどいことになる。だが、父はかなり真剣な目で俺のことを見ている。こういう時の父からは決して逃れることが出来ないことを俺はこの数年間で学んだのである。
「文句を言わずに来なさい」
「は~い」
「美香も一緒に来なさい」
「は~い」
俺と同じく水を被っていた美香も父に呼ばれた。まさか、美香とも試合をするのか? 俺は少し疑問に思った。
それから、先ほどまでトレーニングをしていた道場へと戻ってきた。
「は~」
道場に入ってすぐ俺は深いため息を吐いた。
「剣一、そこにある竹刀を持って構えなさい」
父さんは壁に立て掛けてある竹刀を指さして指示してくる。俺は、ダラダラと竹刀を持ち構えようとした時、
バッシ!
父さんが俺が手に持っている竹刀を思いっきり弾き落としてきた。
「何するんだよ!」
もう少しで思いっきり手に当たるとこだった。さすがにイラっと来た俺。
「真剣勝負だと言っているのにそのダラダラとした動きはなんだ! これが真剣での試合だったらお前は既に死んでいるぞ」
俺は、その言葉に対して何も言い返すことが出来なかった。父の言っていることが正論過ぎたからである。
 「ほら! さっさと動け!」
「ハイハイ」
俺は父に言われた通りに指定の位置へと動く。それは父と対面の位置へ。
「美香は試合の審判をしてくれんか」
「は~い」
軽い返事を返して俺達二人の間の位置へと移動する。
「では、お兄ちゃんとパパの試合を開始します。二人共用意は良いですか?」
「ああ」
「いつでも」
二人の返事を聞いた美香。
「それでは試合始め!」
その合図と共に動きを見せたのは父の方だった。一瞬姿を消したかと思うくらいの速度。さすがだと少し見惚れてしまった。だが、それも一瞬のこと。目の前に迫ってくる父の竹刀。それを紙一重のところで躱す。
「父さんから攻めてくるなんて思わなかったよ」
父の攻撃を見て、声を掛ける。
「……」
だが、父からの返事は返ってこない。だが、それとは別に父の集中力が少しずつ上がっていく。
それに対して俺はそこまで集中力を上げることが出来ないでいた。
だがそんなこと目の前にいる父には関係ない。
そんな中、物凄い速度の攻撃を仕掛けてくる父。その全てを紙一重のところで躱す。
「剣一! 本気を出せ! これは真剣勝負だ!」
暑苦しい! うざい。そんな気持ちしか出てこない。
「本当にいいの? 本気を出して?」
「いい! どうせ勝てないからな」
「あっそなら少しだけ」
俺の力のことをこの時の父はまだ知らなかった。俺が昔、圧倒的な力で大会を勝ち抜き優勝した大会があった。その時の俺はまだ力を抑えるようなことをしてこなかった。だが、その大会の決勝の相手に言われた一言が力を隠すきっかけになったのである。『化け物』その一言を言われた瞬間、俺は周りとの違いについて考え始めた。
それからは、出来るだけ周りの力に合わせるように心がけながら試合を行うようになったのである。
だから、先ほどの父の言葉。『本気を出せ!』それに対して俺は少しだけ力を使うことにした。
「後悔しないでね」
父に試合を申し込まれたときに、同じ条件で試合をすることにしようと考えていた。そのため最初は攻撃を躱しながら様子を伺いつつ隙を探ろうと考えていたのだが、父がそれを求めるのであればそれもやぶさかではない。
俺は意識を意識を体の奥底へと沈めて集中力を高めていく。そして、次の瞬間、俺は父の背後へと移動して竹刀を横から薙ぎ払おうと振り切った。それをギリギリのところで躱して距離を取ってくる父。
何が起こったのか分かっていない父。
「お前今何をしやがった」
「だから本気を出しただけさ。それにこれはまだ準備運動だよ。だから、まだやられないでね」
上下左右いろいろな方向から攻撃を仕掛けていく俺。それを何とか躱している父。だが、反撃をする余裕は今の父にはない。
「はあ、はあ、はあ」
たった五分の俺の攻撃に対して、すでに肩で息をしている父。
「体も温まってきたし、父さんの望み通り本気で相手してあげるよ。久々だし手加減できないから覚悟してね」
「今ので本気ではないのか?」
「本気は本気だけどまだその一部かな?」
「それなら。その本気とやらが出る前にお前を倒すまでだ」
最初と同じように攻めてくる父。だが、この流派の真骨頂は回避し隙をついて相手を倒す。だが、今の父にそれが出来ているとは言えない。
それにだ、
「もう父さんの攻撃は俺には当たることは絶対にないよ」
俺の言葉通りになった。最初のうちは紙一重で攻撃を躱していたが。もうその必要もなくなり、余裕で躱していく。
疲れと攻撃が当たらないことへの苛立ち、少しずつ雑になっていく切込み。そろそろかなと思っていた。
「確かに父さんは強いと思うよ。でもね、俺には絶対勝てないよ」
「もう、勝ったつもりか! 勝負はこれからだぞ!」
「そうだね。お互いがこのままの状態で戦い続けるなら確かにまだわからないかもしれない。まあそれでも後数分で勝負はつくと思うけどね」
「そんなものやってみないとわからないだろう」
「いや、勝負は既に付いているんだよ。だって、それが父さんの全力なんでしょ?」
「……」
図星である。現状が自身の出せる全力。それどころか限界をすでに超えて戦っていた。だが、そんなにしても剣一に攻撃を当てることが出来ない。
「俺はまだもう一段階上の強さがあるんだよ。でも、それをあまり使いたくないんだ。だからさ、父さんここで降参してくれないかな? これ以上惨めな父さんの姿を見たくないんだよ」
歯を食いしばって何かを言いたげな表情を浮かべている。だが、何か言ってくることはない。
「は~~」
俺は深いため息を吐いた後、体に巡る気を足に集めて高速で父さんへと攻撃を仕掛けていく。それに対して父さんは反応することが出来ずにいた。
「!!」
何とか竹刀を体の正面に構えて俺の攻撃を受け止めようと防御の体制をとるものの、俺は父さんの目の前急ブレーキ、右側面へと移動する。それに反応出来ない父さん。
俺は攻撃を当てる瞬間、気を竹刀へと集め、一撃を父さんの脇腹へと当てる。
攻撃当たった瞬間、気を失ってしまった父さん。
「勝負あり! お兄ちゃんの勝利!」
美香の宣言により俺と父さんの試合は終了した。
 それから暫くして父さんは目を覚ました。
「……」
辺りをきょろきょろと見渡した後、何も言わずに道場を後にして行く。
俺と美香はお互いに目配せした後、
「お兄ちゃんが勝っちゃったね」
「ああ、本当は負けるつもりだったんだけどな」
「そうなの?」
「美香には最初から俺が本気のように見えたのか?」
首を横に振る美香。
「だけど、本気になれってうるさかったからつい本気になっちゃたんだよ」
「ついだったの? あの力を使っていたでしょう」
俺は笑って答えておいた。
それから父さんは俺と口を利かなくなった。修行の際にも妹の美香には教えに行くも俺の元へはやってこない。
試合より半年が経ったころ、母さんから父さんが俺のことを真の当主だと言っていたと聞かされたのだった。
それは、いつも通り父や妹とのトレーニングを終えたある時、
「剣一、わしと真剣勝負をせんか?」
頭から水をかぶっていた俺は、その音にかき消されて何と言っているかよく聞き取れないかった。
「父さん、なんって!」
「わしと真剣勝負をしようかと、いっているんだ」
父からの突然の申し出、それに対して俺は、
「いやだよ~、だって父さん強いし、やっと全中の大会も終わったところなのにさ」
つい一週間前、俺は中学剣道の全国大会で優勝して三連覇を達成してきたところであった。そのため少しの間は試合なんてしたくないと考えていた。
それに父は世界剣豪大会で十連覇を達成している人で、この世界で父さんに勝てる者など存在しないのではないかと言われているくらいであった。そんな父と試合など絶対にしんどいことになる。だが、父はかなり真剣な目で俺のことを見ている。こういう時の父からは決して逃れることが出来ないことを俺はこの数年間で学んだのである。
「文句を言わずに来なさい」
「は~い」
「美香も一緒に来なさい」
「は~い」
俺と同じく水を被っていた美香も父に呼ばれた。まさか、美香とも試合をするのか? 俺は少し疑問に思った。
それから、先ほどまでトレーニングをしていた道場へと戻ってきた。
「は~」
道場に入ってすぐ俺は深いため息を吐いた。
「剣一、そこにある竹刀を持って構えなさい」
父さんは壁に立て掛けてある竹刀を指さして指示してくる。俺は、ダラダラと竹刀を持ち構えようとした時、
バッシ!
父さんが俺が手に持っている竹刀を思いっきり弾き落としてきた。
「何するんだよ!」
もう少しで思いっきり手に当たるとこだった。さすがにイラっと来た俺。
「真剣勝負だと言っているのにそのダラダラとした動きはなんだ! これが真剣での試合だったらお前は既に死んでいるぞ」
俺は、その言葉に対して何も言い返すことが出来なかった。父の言っていることが正論過ぎたからである。
 「ほら! さっさと動け!」
「ハイハイ」
俺は父に言われた通りに指定の位置へと動く。それは父と対面の位置へ。
「美香は試合の審判をしてくれんか」
「は~い」
軽い返事を返して俺達二人の間の位置へと移動する。
「では、お兄ちゃんとパパの試合を開始します。二人共用意は良いですか?」
「ああ」
「いつでも」
二人の返事を聞いた美香。
「それでは試合始め!」
その合図と共に動きを見せたのは父の方だった。一瞬姿を消したかと思うくらいの速度。さすがだと少し見惚れてしまった。だが、それも一瞬のこと。目の前に迫ってくる父の竹刀。それを紙一重のところで躱す。
「父さんから攻めてくるなんて思わなかったよ」
父の攻撃を見て、声を掛ける。
「……」
だが、父からの返事は返ってこない。だが、それとは別に父の集中力が少しずつ上がっていく。
それに対して俺はそこまで集中力を上げることが出来ないでいた。
だがそんなこと目の前にいる父には関係ない。
そんな中、物凄い速度の攻撃を仕掛けてくる父。その全てを紙一重のところで躱す。
「剣一! 本気を出せ! これは真剣勝負だ!」
暑苦しい! うざい。そんな気持ちしか出てこない。
「本当にいいの? 本気を出して?」
「いい! どうせ勝てないからな」
「あっそなら少しだけ」
俺の力のことをこの時の父はまだ知らなかった。俺が昔、圧倒的な力で大会を勝ち抜き優勝した大会があった。その時の俺はまだ力を抑えるようなことをしてこなかった。だが、その大会の決勝の相手に言われた一言が力を隠すきっかけになったのである。『化け物』その一言を言われた瞬間、俺は周りとの違いについて考え始めた。
それからは、出来るだけ周りの力に合わせるように心がけながら試合を行うようになったのである。
だから、先ほどの父の言葉。『本気を出せ!』それに対して俺は少しだけ力を使うことにした。
「後悔しないでね」
父に試合を申し込まれたときに、同じ条件で試合をすることにしようと考えていた。そのため最初は攻撃を躱しながら様子を伺いつつ隙を探ろうと考えていたのだが、父がそれを求めるのであればそれもやぶさかではない。
俺は意識を意識を体の奥底へと沈めて集中力を高めていく。そして、次の瞬間、俺は父の背後へと移動して竹刀を横から薙ぎ払おうと振り切った。それをギリギリのところで躱して距離を取ってくる父。
何が起こったのか分かっていない父。
「お前今何をしやがった」
「だから本気を出しただけさ。それにこれはまだ準備運動だよ。だから、まだやられないでね」
上下左右いろいろな方向から攻撃を仕掛けていく俺。それを何とか躱している父。だが、反撃をする余裕は今の父にはない。
「はあ、はあ、はあ」
たった五分の俺の攻撃に対して、すでに肩で息をしている父。
「体も温まってきたし、父さんの望み通り本気で相手してあげるよ。久々だし手加減できないから覚悟してね」
「今ので本気ではないのか?」
「本気は本気だけどまだその一部かな?」
「それなら。その本気とやらが出る前にお前を倒すまでだ」
最初と同じように攻めてくる父。だが、この流派の真骨頂は回避し隙をついて相手を倒す。だが、今の父にそれが出来ているとは言えない。
それにだ、
「もう父さんの攻撃は俺には当たることは絶対にないよ」
俺の言葉通りになった。最初のうちは紙一重で攻撃を躱していたが。もうその必要もなくなり、余裕で躱していく。
疲れと攻撃が当たらないことへの苛立ち、少しずつ雑になっていく切込み。そろそろかなと思っていた。
「確かに父さんは強いと思うよ。でもね、俺には絶対勝てないよ」
「もう、勝ったつもりか! 勝負はこれからだぞ!」
「そうだね。お互いがこのままの状態で戦い続けるなら確かにまだわからないかもしれない。まあそれでも後数分で勝負はつくと思うけどね」
「そんなものやってみないとわからないだろう」
「いや、勝負は既に付いているんだよ。だって、それが父さんの全力なんでしょ?」
「……」
図星である。現状が自身の出せる全力。それどころか限界をすでに超えて戦っていた。だが、そんなにしても剣一に攻撃を当てることが出来ない。
「俺はまだもう一段階上の強さがあるんだよ。でも、それをあまり使いたくないんだ。だからさ、父さんここで降参してくれないかな? これ以上惨めな父さんの姿を見たくないんだよ」
歯を食いしばって何かを言いたげな表情を浮かべている。だが、何か言ってくることはない。
「は~~」
俺は深いため息を吐いた後、体に巡る気を足に集めて高速で父さんへと攻撃を仕掛けていく。それに対して父さんは反応することが出来ずにいた。
「!!」
何とか竹刀を体の正面に構えて俺の攻撃を受け止めようと防御の体制をとるものの、俺は父さんの目の前急ブレーキ、右側面へと移動する。それに反応出来ない父さん。
俺は攻撃を当てる瞬間、気を竹刀へと集め、一撃を父さんの脇腹へと当てる。
攻撃当たった瞬間、気を失ってしまった父さん。
「勝負あり! お兄ちゃんの勝利!」
美香の宣言により俺と父さんの試合は終了した。
 それから暫くして父さんは目を覚ました。
「……」
辺りをきょろきょろと見渡した後、何も言わずに道場を後にして行く。
俺と美香はお互いに目配せした後、
「お兄ちゃんが勝っちゃったね」
「ああ、本当は負けるつもりだったんだけどな」
「そうなの?」
「美香には最初から俺が本気のように見えたのか?」
首を横に振る美香。
「だけど、本気になれってうるさかったからつい本気になっちゃたんだよ」
「ついだったの? あの力を使っていたでしょう」
俺は笑って答えておいた。
それから父さんは俺と口を利かなくなった。修行の際にも妹の美香には教えに行くも俺の元へはやってこない。
試合より半年が経ったころ、母さんから父さんが俺のことを真の当主だと言っていたと聞かされたのだった。
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