第150話　ムルクの街

　ケンイチ達がムルクの街に到着したその時、

「あいつらが魔王様にたてついている人間と言うのは」

「そうだろうよ。だが、たかが人間相手だろう、簡単な仕事だぜ」

　とある建物の二階からケンイチ達の様子を伺っている魔族達。

「だが、魔族幹部のレイク達がやられたって話だぜ」

「それに、Sランクランキング戦で活躍していた奴だろうあいつ」

　Sランキングランキングの際に遠くから試合の様子を伺っている者達がいることにケンイチは気づいていた。だが、その者達へと近づく前に逃げられてしまったのである。

「たかが人間同士の戦いだろうが、それにレイク達は俺達の中でも最弱、最近じゃ、魔族序列十一以下と入れ替えも考えられていたくらいだ」

「それもそうか」

　ケンイチ達をたかが人間と思っている四人。そして魔族幹部副長もそれは同じであった。だが、魔王のみは別である。そのため今回戦わせる四人でケンイチ達の実力を測るつもりいるようである。

「さて、人間どもも馬車から降りてきたしこちらも動くとするか」

　建物の二階から動き出し外へと出て行くのであった。





　魔族領に入ってから初めての街へと到着したケンイチ達。

「まずは、俺達が先に降りて外の様子を確認します。合図があるまでは馬車の中で待機しておいて下さい」

　俺は、案内役として来ていた人達に馬車の中で待機してもらうようだけ伝えて外へと降りていく。それに続きシェリー達も順番に外へと出る。

　降りてすぐ目に映ったのは、肌が紫色をした人達がいた。街から伺える気配は全てその者達の物であり、人間は誰一人としていない。

「ブルーム達の気配はないようだな」


　ブルームと雷鳴の気配は覚えている。それと似たような気配を持つ者が誰一人としていない。それよりもだ、

「ケンイチどうしたの？　そんな険しい顔して」

「すぐに戦闘態勢に入れ。かなりまずい連中がこちらに向かってきている」

　街全体の気配を探っている明らかに他とは違う大きな気配が四つこちらへと向かってきていた。知からすればセレモニア王国の王都で戦った魔族幹部達よりかなりでかい気配。

「強いの？」

「アレクシスほどではないだろうが、それに近い力を持っていると思う。しかも一人でなく四人いるみたいだ」

　俺の言葉を聞きシェリーとヒョウカの顔が青くなっている。

「アレクシスとの戦いのときにケンイチかなり苦戦していたのに、そんな相手に私達どうやって戦えばいいの？」

「シェリー達は馬車を守ってくれればいい。俺が一人で相手をするから、そんで情報も引き出してるよ」

「お兄ちゃん」

　真剣な目で俺の方を見てくるミカ。考えていることには予想が付いた。

「心配するな、あの時みたいに簡単に死んだりしないから」

　ミカが考えていたのは、俺が事故にあった時の出来事であった。もしもあの時のように俺が死んでしまったらどうしようかと。

「無理はしないでね」

「ああ、分かってる。二人のこと頼んだぞ」

　俺はミカにそれだけ言うと三人から離れて向かってくる魔族四人へと近づいていく。

　そして、お互いの姿が見え始めると、

「いたいた、ってなんだよ一人かよ」

　俺の姿を見て一瞬ガッカリする魔族達。

「後ろ見てみろ、三人いるぞ」

「っお、本当だ。少しは楽しめそうだな」

「これは仕事だぞ。真面目にやれ」

「分かってますって」

　ペチャクチャと話しながらこちらへと近づいてくる。

　その目線の先にいるのは俺ではないと見える。それでどこから俺達のことは眼中にない感じもする。

　だがそれは、一つの事実を裏付けている。アレクシスとの戦闘が魔族側に伝わっていなということだ。

　もしも伝わっていればこんなに余裕の表情をしているはずがない。

　俺は異空間収納より剛炎剣と氷魔剣を取り出し戦闘態勢に入るのだった。