第44話　復活

　ケンイチ達の卒業の２ヵ月前、魔族領である事件が起こった。


　ここは、魔族領の中央都市アルバン。そこにある魔王城での出来事。


　「皆急げもうすぐ魔王様がお目覚めになるぞ。」


　この男、副官のレシルク。魔王の目覚めの時が近づき、それを祝うための式典の準備をしていた。


　「レシルク様、他の幹部の方々は何処へ行かれているのでしょうか？」


　部下は準備をしながら聞いてくる。


　「心配するな。１人を除いて皆こちらへと向かっておる。それよりも準備を急がんか。」


　「はぁっ！」


　部下の男は作業へ戻っていった。


　その後、準備は順調に進み、後は魔王の目覚めるのを待つだけだった。すると、


　「あ～ぁ。」


　棺の蓋が開くと、その中から魔族の男が起き上がってきた。その姿を見てレシクルは膝をつき頭を下げて、


　「おぉ、魔王様。お目覚めになられましたか。」


　「レシルクか。久しいな。あれから何年経った。」


　「魔王様が眠りにつかれてより1000年が経っております。」


　「そうか、そんなに経ったのか。長い間待たせてすまなかったな。」


　「勿体ないお言葉、ありがとうございます。他の幹部達も2，3日中にはここに集るかと思われます。」


　「分かった。ではそれまでの間に、この1000年間の人間達の世界がどのようになっているか教えよ。」


　「分かりました。」


　それから、幹部９人が揃うまでの３日間レシクルは魔王にこの1000年間で人間の世界にどのような変化が起こったかを話し伝えた。










　魔王が目覚めてから３日が経ち、幹部９人が揃い魔王城の会議室へと集っていた。


　「皆よく集ってくれた。」


　「何を言われているのですか。あなた様がお目覚めになられたのですから、集るのは当たり前のことでございます。」


　魔王の言葉に対してレシクルは言った。そこで魔王は気になったことがあった。


　「９人しかいないようだが、あやつはどうした？」


　「彼は今、人間達の国での調査中にございます。後２ヵ月ほど戻るかと思います。」


　「分かった。それでは、これより1000年前に果たせなかった人間の国殲滅作戦を開始する。」


　「御意!！」（幹部全員）


　席を立ち頭を下げながら返事をする。


　「それでまずどこから攻めましょう。」


　「まずは人間の国の中で最大の国セレモニアの王都を攻め落とす。そこを中心に各国を落としていく。レイク、エメル、セシルは準備ができ次第部下達をつれてセレモニア王国の王都へと出発せよ。」


　「はぁっ!！」


　３人はすぐに準備の為に会議室を後にした。


　その後、残った幹部と魔王は、


　「あの３人でよかったのでしょうか？」


　「何が言いたい。」


　「あの３人では少し難しいのではないかと。」


　少し言いにくそうにレシクルが魔王に向かって言った。他の幹部達もその意見に頷いていた。


　「別に構わん。落とせればそれでよいし、もし失敗したときは人間側にも我らに対抗できるだけの者がいることになる。それが知れれば十分だ。」


　「なるほど、さすが魔王様でございます。」


　「確かに、人間達の戦力を知っておいて困ることはないな。」


　幹部達は魔王の意見に納得くしていた。


　「それと、魔族領近くの国を２つほど落とす。やつが戻り次第出発とする。準備をしておけ。」


　「はぁっ！」


　幹部達は準備に取りかかるのだった。










　魔族達の動きを見ている者達がいた。


　「あの者が目覚めたか。」


　「ああ、力は少し落ちているようだが、それでも人間達に取ってはかなりの驚異だろう。」


　「そうじゃな。どのように対処するかが見物じゃの。」


　この者達は、魔族と人間の争いが起こることを楽しんでいるのだった。