カオスアニマ -脳筋おじさんと生者見習いの女子高生-

椎名 総

ガルデアの塔、攻略2



 龍人と旭はそのまま中間の塔の手前まで進む、


 そこには門番のように長い槍を持った銀色の騎士が待ち構えている、
 その奥には大きなクラブ、
 『銀色の騎士の大鎚』を有した体格のいい銀色の騎士が遠目からでも伺える。


 旭は円形の中間地点から少し通路を渡ったところから
 中間の塔の出入り口を守護する槍を持つ『銀色の騎士』に矢を放つ、
 当然この距離で外すことはない、
 旭と敵対した銀色の騎士はそそくさと近寄ってくる、
 通路を通ってやってくる、旭はそこにもう一撃狙いを定め矢を放つ、
 今度は命中する。
 少し仰け反った銀色の騎士を尻目に旭は『堅牢な斧』と『鉄の中盾』を装備する。


 槍を両の手で持った銀色の騎士は円形の広場まで誘導され旭と対峙した。


 銀色の騎士は両手で持つ槍で勢い良く旭を攻撃する、
 1回、2回、3回と、槍の攻撃は隙が少なく早い、
 旭の構えた盾との接触音をカンカンと奏で続ける。


 槍の銀色の騎士の攻撃パターンは、
 今、旭に対して行なった3連突きと、
 少し飛び込みながら打ち込んでくる単発のリーチの長い攻撃、
 通常の3連突きとは異なる
 3回めの突きがより踏み込んで撃ち込んでくるパターンが有る、
 基本的にその攻撃は速く、
 間合いに入った場合すべて避けるのは通常の回避行動では不可能なので
 『パリー』するか、盾で受けきってからの攻撃が好ましい、
 槍は基本ガードに弱い、
 大盾では攻撃を防がれるだけではなく弾かれてしまい大きな好きを生みやすい。
 中盾ではそれほどまでではないが軽い反動を起こし、
 隙きができやすいのである。


 旭はそれを感じ、
 堅実に3連撃中の2連撃を盾で受けつつ最後を躱し、
 懐に潜り込み、着実にダメージを与えていく、
 『感触』的には後2発、
 旭は体力と相談し初めて『パリー』を試みる、
 初撃は難しい、
 旭は単調な2撃目に狙いを定めて左手の中盾で初めてパリーを敢行する、




「痛っ痛ッ」




 失敗である。
 若干遅かったのか2撃目と、その後に来る3撃目も見事食らってしまう。
 しかし後2発なので痛みを感じつつも斧でゴリ推して槍の銀色の騎士を討ち取る、




「まぁチャレンジするのは悪いこっちゃない、惜しかったな」




 龍人はそんな旭のチャレンジを悪く無いと肯定する、




「むー難しい~」




 ブンブンとむくれながら旭は『パリー』を3回ほどその場で行なう、




「回復して次だ、『クラブ野郎』だ気をつけろよ」


「うん」




 手早く回復を済ませた旭はパチンと自身の顔を叩いた、
 まともにダメージを負ってもやる気は十分のようだ。


 『クラブ』、『大鎚』、打撃系武器、
 両手持ちだと、『小盾』は言わずもがな、
 『中盾』ではスタミナを削られすぎるため意味をなさい強力な武器、


 その上振りかぶった強力なモーション攻撃は対象の『強靭耐性』を根こそぎ奪い取り、
 弓矢やロングソードなどの『累積ダメージ』で仰け反る事などが生易しく感じるほどに、
 無慈悲にその場に一定時間倒れさせる、
 その間に相手はスタミナを回復、
 HP回復などの手段にも移れるため、
 使いこなせればかなりの有用性のある武器である。


 だがその分スタミナ消費も激しく、撃ち終わりは隙だらけになる、
 大振りのため他の武器より『パリー』のタイミングも若干取りやすい、
 失敗ダメージ覚悟での『小盾』『中盾』で『パリー』を狙うことも一つの選択肢である。
 当然失敗するリスクは変わらないので大鎚相手にパリーを敢行する者は実際の所ほぼいない。


 大鎚を持った銀色の騎士の攻撃パターンは、
 3回独特のタイミングで相手を追尾しつつ打ち下ろす強力なモーション攻撃、
 単発の追いかけてからの追尾打ち下ろし、
 右横後ろに振りかぶり横に薙ぎ払い『ふっ飛ばし』状態を起こす強力な攻撃、
 この3種類である、


 『ふっ飛ばし』は、塔などの高所では落下の恐れがある、
 そうなれば即死、
 ここは塔の内部で広い円状のスペースのある場所なので落下の危険性は少ないが2、3メートル吹き飛ばされる上にそれなりにダメージを追う危険な攻撃であることに変わりない。
 初動が大きいのでどれをチョイスしたのかはわかりやすい、
 この状況下で1番警戒すべきは独特のタイミングで3回追尾打ち下ろしをしてくる攻撃だろうか。


 旭は先程と同じく2撃、
 両手持ちの斧による先制攻撃をし、
 右回りに動き始める、
 先程の大剣と似たような攻撃パターンだと呼んでのことだろう、
 その読みは『正しい』。


 クラブを持つ銀色の騎士の攻撃の選択は
 『独特のタイミングでの3回追尾打ち下ろし』、である。


 1撃目はゆったりとしたホームから
 旭に向かってその巨大な『銀色の騎士の大鎚』を振り下ろす、
 旭は移動しながらタイミングを見極めそれを回避行動にて回避する、
 2撃目はすぐに振り上げまたすぐ打ち下ろした、
 その攻撃はある意味単調で旭は冷静に回避する。
 3撃目、先程と同じようにすぐ振り上げるが
 すこし小刻みに歩きゆったりと打ち下ろされた、
 旭は先ほどと同じようなタイミングで思わず回避行動してしまった為、
 当然その一撃を貰う。
 地べたにトラックに轢かれたカエルのように大の字になっていた。
 ダメージもかなり貰っただろう、
 当然ダメージに比例した痛みも伴う、




「いったぁぁぁぁぁッッ、
 くそぉぉぉぉッッッムカつくぅッッ、今のズルいでしょッッ」




「ずるくないずるくない、ゲームじゃねぇんだ、
 当然、一回一回タイミングは微妙に変えてくるぞ」




 銀色の騎士の索敵範囲に引っかからない塔の出入り口から少し離れた通路部分から龍人は大剣ヴォルファングを地面に盛大に突き刺し、柄部分を支えに前かがみに腕を乗せ手首に顎を乗せながら聞こえるように言った。




「逃げるッ逃げるよッ
 ズルしたのはそっちだもんねっ」




 起き上がった旭はそんなことを叫びながら回復のため距離を取りその時を待つ、
 銀色の騎士は少しの間の後、
 旭を追いかけ、単発の追尾打ち下ろし攻撃をする、
 旭はそれを余裕で躱し、
 少しだけ距離をとって『レピオス瓶』を飲み、回復を試みる。


 『レピオス瓶』、
 全ての生者に与えられる奇跡の瓶、
 上限は10回、
 使用している場合一時間に一度、一回分自然回復する。
 この世界に散らばる『レピオスのかけら』を入手し、
 『神の代行者ユーノ』に捧げるとの使用回数が増える、
 世界に散らばると表現したがある程度この世界で活動したなら自動的にドロップし、
 最大12回の仕様が可能となる、序盤のチュートリアルのようなものである。
 HPの上昇に伴い回復量は増える。
 回復量はHPの3分の2、回復は隙が多く、
 相手の隙に飲まないと飲んでいる間にやられる恐れもある、
 回復も慎重に行なわなければ数があっても無意味に死ぬことになる。
 基本生者のベルトの右側にあるが飲む際、
 左手だろうが右手だろうが飲むと判断を下したなら
 どちらかの開いている手に自動的に持たされ、自動的に飲む段階になる。
 右手に装備を持っていたとしても装備は一時消滅しそれは行われる。


 そして『テラ・グラウンド』では回復手段はあと一つ、
 『アニマの雫』がある、
 アニマの結晶体、
 小さいもので砕くことで徐々に体力を回復していく回復アイテムだ。
 こちらはドロップか、村の商人から買うしか選択肢はない。


 レピオス瓶の水を飲み干した旭は無事HPの回復を済ませたが
 僅かに『間合い』だった、
 銀色の騎士の攻撃、『ふっ飛ばし攻撃』の、




「やばっ、」




 飲み終わりの僅かな『システム的硬直』
 すでに銀色の騎士の大鎚は旭の右肩に迫っていた、
「ッッッッッ」
 その銀色の騎士の攻撃は虚しく空振ることになった、
 旭はレピオス瓶の水を飲み終えるまでの『システム的硬直』が終わりすぐに後方に回避行動を取った。




「(あぶない、あぶない、回復ももっと慎重にやらないと、
 せっかく回復したのにまた回復が必要になってたら意味ないっ)」


 少し冷や汗を掻きながら旭は学ぶ、
 その姿に、龍人は少し笑みを浮かべる。
 結局旭は、危なげないところは多々あったが
 『銀色の騎士の大鎚』を持つ銀色の騎士を見事討伐した。
 旭はそのままこのステージのBOSSが待ち構える塔、
 最後の塔の出入り口に到達した。



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