異世界転移の覇王譚

夜月空羽

16 狩猟

南に向かう道中で影士と同じく異世界に転移したクラスメイトの水谷沙織と再会した。
再会した沙織からクラスメイトの一部が暴走していることを知り、沙織から助けを求められるもそれを一度は拒否するも、沙織は自身の全てを影士に捧げて自らの意思で影士の仲間げぼくとなった。
「気分はどうだ?」
「………………うん、すごくいい。生まれ変わったみたい」
影士の仲間げぼくとなり、強さを求めた沙織は以前にエルザに行った強化実験を沙織にも行い、沙織は生まれ変わった。
黒色の長い髪はまるで処女雪のように白くなり、瞳の色も金色に変わった。更には肉体にも変化が及び、以前よりも背が伸び、胸も大きくなって、ウエストも引き締まりと女性が羨む体格と変貌を遂げた。
以前の日本に住んでいた水谷沙織は異なる姿となり、沙織は生まれかった自身を見てぼやく。
「異世界に転生した主人公ってこういう気分なのかな?」
「さぁな」
転移は経験したものの転生はしたことがない為に共感はできなかった。
「でもまぁ、よく生き残ったな。俺のアビリティで肉体は死なない様に調整はしたが、精神はそういうわけにはいかねえからな」
「二度目は嫌だけどね……」
以前エルザを使っての強化実験で影士は魂縛のアビリティで肉体的な死はどうにかすることに成功はするも精神面は素で耐えるしかない。下手をすれば廃人になっていてもおかしくない激痛を沙織は耐え抜いた。
「でもおかげで強くなれた。今なら静葉を……」
激痛に耐えたかいもあってステータスは大幅に上昇し、新しいアビリティも獲得した沙織に影士はエルザに目を向けると、エルザは頷いて指に嵌めている指輪型の魔具アーティファクト。収納能力を持つ魔具アーティファクトから装備品を取り出す。
「では沙織さん。こちらをどうぞ」
「これは…………?」
白を基調とした革鎧と銀色に輝く剣を前に怪訝すると。
「新しい仲間げぼくにプレゼントだ。物理・魔法に耐性を持つ装備と剣の魔具アーティファクト。好きに使え」
「いいの……?」
「ああ、なんならあの激痛に耐えたご褒美でもいいぞ」
生半可な覚悟ではあの激痛に耐えられない。それは一度は経験している影士だからこそわかる。
「そう、なら遠慮なく貰うね」
沙織も今着ている制服は既にボロボロだった為に新しい服が必要だった為に遠慮なく装備に手を伸ばして茂みに向かう途中。
「覗かないでね?」
「覗くか。女には困ってねえんだ」
エルギナとエルザに向けて指を向けると沙織は納得するもどこか複雑な表情を浮かべながら茂みで装備を身に付ける。
どうしてサイズがジャストフィットなのかは置いておいて沙織は新しい力と武器を手に入れることができた。
「………………ステータス」

水谷沙織 年齢:17歳 性別:女
Lv:4
体力:580
筋力:540
耐久:515
敏捷:713
器用:791
魔力:650
魔法:風魔法 泡魔法
スキル:裁縫4/10 採取2/10 苦痛耐性3/10 逃走2/10 
アビリティ:沸騰 分泌
ギフト:隷属神の加護

激痛に耐え抜いた結果、ステータスが大幅に上昇して新しいアビリティも増えたことに沙織は手を強く握る。
「待っててね、静葉」
親友を助ける為に、強くなる為に己の全てを捨てた沙織は影士達と共に自身が逃げた来た道を戻るその道中で影士に尋ねる。
「そういえば影士は今までどこにいたの? それにこの人達は?」
異世界転移してから影士のことについて何も知らない沙織からしてみたらその疑問は最もなものだ。それに影士は「……ああ」とこれまでの経緯と二人のことについて説明した。
「この世界の神様が自分達の娯楽の為に私達を召喚したなんて……………」
「ああ、俺はお前等とが別口での召喚だったが。おかげでこいつらと出会った」
冥府神のイシスによって魔窟ダンジョンに召喚された影士は冥府神の寵愛がなければ異世界転移してすぐに死んでいた。ここまで生きているのもその寵愛が大きい。
「そして妾達はその神を倒す為に行動しておる。まぁ、妾は妾で目的があるがな」
「私は旦那様に従うのみですわね」
「そうなんだ……」
神を倒す。それを目的に行動している影士に沙織は尋ねる。
「神を倒して元の世界に帰る為に……?」
異世界転移モノで最も多い主人公の目的。元の世界に帰る。自分達が住んでいた日本に帰る為に行動しているのかと思って沙織はそう尋ねたら。
「そんなつもりは微塵もねえよ。むしろ可能なら元の世界も俺のモノにするつもりだ」
「え?」
「この世界の覇王になって元の世界に戻る方法が見つかったら元の世界、地球の覇王になるのも悪くはねぇ」
剛毅の笑みを浮かべながらそう呟く影士に沙織は何かの冗談の類だと思うもその顔は本気だった。
「まぁ、今はそんなことは後回しだ。それよりもこっちで合ってんのか?」
「う、うん。間違いないよ……。もう少しで私達がいた拠点が見えてくるはずだから」
先程の影士の発言に気になることはあるも、今は親友を助けることを優先する沙織は拠点に戻ってきたが。
「見事に荒れ果ててんな」
そこはもはや原型がないぐらいに荒れ果てていて、クラスメイトの遺体が何体も転がっている。
途中で魔物でも現れたのか、遺体の何体かは喰われた痕があり、ざっと見渡す限りでは生存者はいない。
「影士」
エルギナに声をかけられ振り返ると、エルギナの視線の先には一人の女子生徒の遺体。だが、制服は引き千切られ、下着も破られ、ほぼ全裸で横たわっている。
そして僅かに漂る匂いですぐに察した。
「犯されたのか」
暴走したとされる一部のクラスメイトにその場に押し倒されて犯されたのだろう。頭部に血があることから頭を強打されたのが死因だと推測した。
他にも強姦されて殺された女子生徒の遺体が何人かあるなか、沙織はこれまで来た道のりと拠点に親友である静葉がいないことに周辺を見渡していた。
「静葉……」
親友を助けたい。その一心で全てを捨てた沙織は親友の身を案じる。そこに……。
「おい、見ろよ! 女がいるぞ!!」
声が響いた。その声の方に視線を向けるとそこには影士と沙織の元クラスメイトであった男子生徒が数人、エルギナ達を見ては醜悪な笑みを浮かべていた。
「うひょー! 全員いい女じゃねえか!」
「けど男もいるぞ? どうする?」
「そんなもん殺して魔物の餌にしちまえばいい。ここは異世界だぜ? どうとでもなる」
勝手に話を進める男子生徒達。その会話にエルギナは呆れるように息を吐いてエルザは「あらあら」と微笑むもその瞳は獲物を見つけた肉食獣と同じだ。
そして沙織はその男子生徒達を見て憤りを露にする。
「あいつら……ッ!」
見覚えがある。それはそうだ。彼等は拠点を破壊し、一度は沙織を犯そうとした者達だからだ。
「それにしてもやっぱ異世界ってすげえよな。学校の女子とは比べものにならないくらいの女が多いし」
「だな。そろそろ異世界の女を犯してみてぇと思ってたんだ」
「おい、そこのお前、大人しく女を置いて逃げるなら見逃してやるぞ?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら武器をちらつかせる男子生徒達だが、影士は可笑しそうに「くくく……」と笑っていた。それが気にくわなかったのか一人の男子生徒が声を張り上げる。
「おい! なに笑ってんだ!?」
「いやなに。嫌いじゃねえぞ? お前等のそういうの。まさに弱肉強食に生きる獣だ。己の欲するままに生きるその姿勢、俺は素直に好感が持てるぞ?」
「はぁ?」
なに言ってんだ? こいつ。みたいな反応を示す男子生徒達だが、その内の一人が何かに気づいた。
「お前、もしかして唯我か……?」
「ああ、久しぶりだな。確か遠藤だっけ?」
一人の男子生徒が影士の存在に気づくと他もようやく影士の存在を思い出す。だが――
「だが、いけないなぁ。獣なら狙う獲物を見極める本能を持たないと―――」
「へ?」
「こうなる」
刹那、男子生徒達の一人が首と胴が分かれた。何をされたのかも気付かずに首だけとなったその男子生徒が最後に見たのは自身の胴体と嗤っている影士の顔だった。
首の断面から噴水のように血が噴出し、遠藤達は生暖かい返り血をその身に浴びる。それを見てようやく気付いた。自分達は狩る側ではなく狩られる側だったということを。
「う、うわぁぁあああああああああああああああああああああっっ!!」
「こ、殺される!!」
「誰か、誰か助けてくれ!!」
泣き喚きながら踵を返して逃走する彼等に影士は後ろにいる己の駒に言う。
「さぁ、狩りの時間だ」
狩猟が始まった。

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