異世界転移の覇王譚

夜月空羽

10 旦那様

「あら、お目覚めになられました?」
エルザとの戦闘で負傷し、回復の為に眠りについていた影士は目を覚ますと、視界いっぱいにエルザの微笑みが映し出されていた。
後頭部に感じる柔らかな感触から察するに膝枕だということは理解した影士だが、どうしてこのような状況になっているのか目線でエルギナに説明を求める。するとエルギナは息を吐きながら説明する。
「お主よリ先にそちらの女子が目覚めてな。お主を見るなりそうしておる。特に害は感じられなかったので放置しておったが」
「ふふふ」
説明を促すエルギナにエルザは微笑みながら影士の頭を撫でる。
こそばゆい感覚に耐え切れず起き上がると、エルザはもう少し堪能したかったのか物欲しそうにするも影士は無視した。
気を取り直して影士はエルザに尋ねる。
「お前、何者だ? 少なくとも地上にいる冒険者よりは強いのはわかったが」
冒険者ギルドに訪れた際にBランクの冒険者に絡まれたが、弱すぎて己の糧にもしようとは思わなかったけど、眼前にいるエルザは違う。
一歩間違えたら負けていたかもしれない。レベルが90を超えた影士が。
それだけの強さを持ち、何より戦い慣れているエルザの存在に影士は興味を抱いた。
「先に言っておくが、お前の身体の中にアルガ、この剣の因子を流し込んだ。俺に逆らうか、嘘を言えばすぐにでもお前の身体を壊すことだってできる。それを踏まえた上で喋りな」
それを証明するかのようにエルザの身体に黒い線を浮かばせる。
命を握られているはずなのにエルザは怯えるどころか恍惚の笑みを見せる。
「ええ、ええ。嘘偽りなくお答えしますわ。ふふふ、勝者に従うのも敗者の義務。何でもお答えしますわ」
エルザは立ち上がるとドレスの端を抓み優雅な一礼を披露する。
「改めまして私の名前はエルザ・ユリシア。拷問・処刑を生業とする公爵家の一人娘ですわ」
「公爵? 貴族ってやつか」
「ええ。そのような認識で構いませんわ。ただ普通の貴族とは程遠い家系ではありますが」
「そりゃ拷問と処刑をする貴族が普通とは言えねえな………」
「しかし、国には私達のような人も必要なのですわ。貴族や王族に反発する者や異を唱える者、テロ行為に加担する者、時には貴族や王族に拷問方法を教授もしますわね。まぁ、悪く申し上げれば国の汚れ仕事を押し付けられた家ですわ」
なるほど。と納得する。
自分達にとって都合の悪い存在を消す為に爵位を与えられてそれを行う貴族や王族の裏の顔。それが彼女の一家なのだろう。
どこの世界でも裏は存在する。エルザは生まれ持ってのその住人だ。
「そうやって幼い頃から多くの人を処刑して参りましたからレベルは高いのですわ。最も私の場合はそれだけでは飽き足らず、こうして迷宮ラビリンスまで足を運んでおりますから今ではレベルは85になりましたの」
エルザの話に頷く。
小さい頃から処刑と称して殺していけばレベルは上がるだろう。そこに迷宮ラビリンスで魔物を殺していればそれだけレベルが上がるのも頷ける。
「その魔眼は魔法か?」
「いえ、これはアビリティですわ。まぁ、発動させるたびに魔力は消費しますが」
「アビリティか………」
そこで影士は顎に手を当てて考えると、エルザを手招きする。
「?」
首を傾げて近づくと不意に影士がエルザの手を取って腕に噛みつき、その肉を喰らった。
「あらあら、肉食ですのね」
腕の肉を噛み千切られてもエルザは微笑みを崩すことなく魔法でその傷を癒した。
ゴクリ、とエルザの肉を飲み込んだ影士は早速己のステータスを確認する。

唯我影士 年齢:17歳 性別:男
Lv:92
体力:8900(+500)
筋力:8750(+500)
耐久:9210(+500)
敏捷:8650(+500)
器用:8300(+500)
魔力:16600(+500)
魔法:呪詛魔法 炎魔法 風魔法 土魔法 闇魔法 変身魔法 複合魔法 水魔法 回復魔法
スキル:物理耐性7/10 苦痛耐性9/10 逃走1/10 脚力強化4/10 夜目6/10 状態異常耐性3/10 恐怖耐性2/10 悪食4/10 剣技1/10
アビリティ:魂縛 魔食 魔眼(発火)
ギフト:冥府神の寵愛 

「やっぱりか………」
魔力のステータスが上昇し、新しい魔法が二つ増えただけではない。アビリティにエルザが使っていた魔眼が記されている。
アビリティ『魔食』は魔力を上昇させ、魔法を増やすだけではない。魔に関する全てを糧にすることができることがこれで証明された。
これでまた一つ強くなることができたことに影士は口角を上げた。
「それで影士。お主はこの女子をどうする?」
ステータスを確認して新たな力を得たことに喜んでいるとエルギナがエルザのことについて尋ねる。ここで殺すのか、もしくは仲間げぼくにするかを。
「そんなもん仲間げぼくにするに決まってんだろ。レベル85。おまけに魔眼持ちだ。しない理由がない」
良い拾いものをしたと言わんばかりの笑みで答えた影士にエルギナは小さく息を吐いた。
「というわけだ。お前はこれから俺の下僕として働いて貰う。拒否権はない。どうしても嫌だというのなら殺すまでだ」
あまりにも一方的な決定事項にも関わらず、エルザは落ち込むどころか逆に嬉しそうに喜んだ。
「ええ! ええ! どこまでもお供しますわ! 世界の果てでも、地獄の底でもどこまでも! 貴方様の望むがままにこの身を委ねますわ!」
「お、おお………」
予想外の反応に逆に影士が戸惑ってしまう。
普通そこは嫌がるところでは? と思うもエルザはそこで小躍りするほどの喜びを見せる。
「……………お主、それでよいのか?」
「勿論ですわ。それに決めておりましたもの。私より強い殿方に全てを捧げると。ですので旦那様がそう仰るのであれば私はそれに従うまでですわ」
「旦那様? 誰が?」
「それは勿論、貴方様のことですわ」
熱っぽい眼差しで影士を見詰めるエルザは熱を孕んだ吐息をつきながら影士に寄り添う。
「ふふふふふ。旦那様、どうかこの昂った気持ちを鎮めてくださいまし。激しく、乱暴に、この身を犯し、貞潔を奪い、心身を共に旦那様自らの手で蹂躙してくださいませ。遠慮も容赦も一切不要。旦那様の求めるがままに私の全てを委ねますわ」
ドレスに手をかけ柔肌を晒すエルザに影士は厄介な女に惚れられてしまったと思うも、自分に惚れているのなら都合がいいと判断して自身とエルザを取り囲むように土の壁を形成する。
「エルギナ。悪いが少し時間をくれ」
「さっさと済ませるのだぞ?」
壁の外にいるエルギナに引き続き警戒を任せて影士はエルザの望み通りにその身を蹂躙することにした。その間エルギナは壁の内側から聞こえてくる喘ぎ声に頭を押さえるのであった。
「まったく………」
行為が終わるまでエルギナは聞こえてくる声に頭を悩ませた。

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