異世界転移の覇王譚

夜月空羽

04 地上へ

元魔王であるエルギナを下僕にすることに成功した影士はエルギナと共に再びレベル上げを行う為に魔物を殺しては食べている。
「グオオオオオオオッッ!!」
黒い体毛をした二メートルを超えた巨躯の熊のような魔物は鋭い爪を振り下ろすもそこには敵はいない。
「こっちだ」
背後から聞こえた声に振り返ろうとするよりも速く熊モドキは首と胴を分断され、命を絶たれた。
影士はその熊モドキの肉を適当なサイズに斬って口に運び、クチャクチャと音を立てながらゴクンと飲み込んでいく。
「相変わらずマズイが、これも弱肉強食。お前を糧に俺は強くなる」
口に付いた血を手で拭いながら弱者を糧とすると、エルギナに魔法のことについて尋ねる。
「なぁ、魔法ってどう使えばいいんだ? 詠唱とかあるのか?」
「お主、そんなことも知らぬのか? 魔法など誰でも使えるであろう?」
魔法の使い方もわからない影士に呆れるように言うも、影士は自分がこの世界の住人ではないことを告げる。
「俺は女神によってこの世界に召喚された異世界人なんだよ。俺がいた世界には魔法なんてなかったからな」
「ふむそうか。異世界人であったか。それなら魔法を知らぬのも頷ける」
あっさりと影士の言葉に納得する。
「驚かねぇんだな…………」
「驚くほどではない。封印される前は妾もお主のような異世界人と戦ったことがあるのでな。まぁ、お主ほど常識外れな異世界人は流石に初めてではあったが」
「そんなことどうでもいいからさっさと教えろ」
自分でも既に常識はずれなのは自覚しているからなんとも言えず、さっさと話を進める。
「魔法とはステータスに表示されている魔法をイメージによって具現化させるものだ。そのイメージを鮮明に具現化するほど威力、性能、効果が上がる。だから大抵の者は詠唱を口にして鮮明なイメージを具現化させておる。慣れれば詠唱無しでそれなりの魔法を発揮することも可能だ」
「イメージか…………」
「そう、そして魔力が高ければ当然魔法も強くなる。妾も無詠唱でそれなりの威力を発揮する魔法を使えるようになるまで苦労したものだ。まぁ、魔法という概念が存在しない世界から来たお主がいきなり無詠唱は無理であろうから妾が指導してやっても―――」
「できたぞ?」
「え?」
よいぞ? と言い終える前に影士の掌に火の玉が出現している。
「い、いや、それは流石に偶然であろう? 妾とて」
「ブフゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!」
そんな二人に突進してくる猪の魔物。先程の熊モドキの魔物にも劣らない巨躯を最大限まで使った突進攻撃で二人を吹き飛ばそうと向かって来るが、影士は掌にある炎を猪モドキに向ける。
すると、炎は火炎放射器のように噴出されて轟炎は猪モドキを一瞬で丸焼きにする。
「……………………」
「理屈さえわかればこんなもんか。もう少し威力が欲しいところだがそこは慣れるしかねえな」
魔法の使い方を教えてすぐに無詠唱を獲得して尚且つ一撃で魔物を倒した影士にただ啞然とするエルギナだが、影士本人は魔法の威力不足に些か不満を口にする。
「…………お主の世界は魔法が存在せぬのでは?」
「要はイメージだろ? なら簡単だ。特に問題はねえ。後は場数だな」
「……………………妾の苦労が」
地道な努力と時間をかけて辿り着いた領域に影士はたった一歩でその領域に踏み込まれたことに少なからずのショックを受ける。
エルギナがショックを受けている間に影士は猪モドキの丸焼きを食べて己の糧にしている。
「焼いたら少しはマシか。まぁ、他の魔法も使えるようになったし、地道に試していくか。おい、行くぞ」
「も、もう少し待って欲しい………ちょっとショックが」
「知るか。働け、下僕」
「お主、本当に容赦がないな…………」
エルギナのことなどお構いなしにレベル上げてはその魔物を食べていく。
目に映る魔物を見つけては剣で殺し、魔法で殺し、食べて、食べて、食べ尽くして、強者になる為の糧としていく。弱い魔物も強い魔物も関係なくぶっ殺して食べて、レベルと魔力を上げていく。
初めてここに転移した時はただ喰われるだけの弱者だったにも関わらず、今では喰らう側として魔物を探しているその姿はただの一方的な狩りだ。
異常なまでに強くなっていく影士に恐れて逃げの一手を取る魔物でさえも影士は見逃してやることもなくただひたすらに狩り尽していく。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
「これは大物だな」
「うむ」
魔物を狩っている二人に姿を現したのは単眼の巨人。八メートルはある筋骨隆々の巨人は魔窟ダンジョンを荒らした張本人である二人を睨み付け、怒声を上げる。
しかし、二人はその巨人に怯えることも怯むこともなく悠然と立っている。そのことに更なる怒りを買った巨人は腕を振り上げて巨拳を振り下ろす。
「ただデカいだけの木偶では意味がないぞ?」
風魔法で宙を浮き、威風堂々とした態度で告げるエルギナは自身の周囲に幾多の炎の塊を生み出してそれを巨人に放つ。
「グゥゥゥゥウウウウウウウッッ」
炎の塊が巨人に着弾し、呻き声を上げる。されど、エルギナの攻撃はそこでは終わらなかった。
「喰らうがいい」
エルギナから放たれたのは小さな太陽を思わせる炎の玉。それが巨人に当たると巨人は灼熱地獄に包まれる。
「―――――――――っ――――――――っ」
悲鳴すら上げられない巨人に影士は剣に風を纏わせて剣を振るい、半月状の巨大な風の刃が巨人の首を斬り落とす。
「鎌鼬。風魔法を調整すれば威力は落ちるが連撃はできそうだな」
巨人を倒してその巨人の肉を喰らう。
「さて、ステータス」
目に映る魔物を狩り尽してどれだけ強くなったのかステータスを確認する。


唯我影士 年齢:17歳 性別:男
Lv:92
体力:8900(+500)
筋力:8750(+500)
耐久:9210(+500)
敏捷:8650(+500)
器用:8300(+500)
魔力:13600(+500)
魔法:呪詛魔法 炎魔法 風魔法 土魔法 闇魔法 変身魔法 複合魔法 
スキル:物理耐性7/10 苦痛耐性8/10 逃走1/10 脚力強化3/10 夜目5/10 状態異常耐性2/10 恐怖耐性1/10 悪食4/10 
アビリティ:魂縛 魔食 
ギフト:冥府神の寵愛 


「よし。まずまずだな」
もうすぐレベルが100に近づいてきているところまで強くなることが出来た。魔力値も1万を超えているのも魔食のおかげだ。
「だが足りない」
それでもこれでは足りない。もっと、もっと強くなる為には絶対的な強者になる為にはまだ足りない。けれど、既にこの魔窟ダンジョンの魔物は影士にとってただの餌でしかない。100体殺したところでレベルは一つも上がらないだろう。
「そろそろ頃合か…………」
そろそろ地上を目指して外の世界で更なる強さを獲得するしかない。そう考えた。
「おい、ここから外に出る方法はあるのか?」
『ここは我とエルギナを封印する為に創り出された魔窟ダンジョンだ。そのようなものは存在せぬ。だが、貴様のおかげでその問題は解決された』
「どういうことだ?」
『貴様がこの世界に召喚された場所に転移魔法の魔力が感じる。恐らくは貴様をこの世界に召喚した冥府神の置き土産であろう。貴様をここから外に出す為のな』
「アルガの言葉通り、この先に転移魔法の魔力を感じる。冥府神もなかなか気が利くではないか」
二人の言葉に影士も魔力を探ってみると確かに感じる。二人はそこに赴くと薄っすらと紫色に輝く魔法陣がそこにあった。
「いよいよここともお別れか」
「ほう、お主も感傷に浸るのか?」
「ここで濃い生活をしていたからな。たくっ、何度死んだことやら」
ここには時間という概念は存在していないから召喚されてからどれぐらいの年月が経ったのかわからない。けれどそれだけ強くなることに集中することができた。
もう二度とここには戻って来れない。そう思うと名残惜しいと思わないわけではない。それでも更なる強さを手に入れる為に影士はここを去る。
「お主は外に出たら何をするつもりだ? どこかで国でも興すのか?」
「ああ、国力は力だ。いずれは国を手に入れるがその前にやることはたくさんある。しっかりと働いて貰うぞ? エルギナ」
「承知しておる。存分に妾を使いこなしてみせよ」
剛毅な笑みを向けられ、影士もまた笑みで返す。そして二人は魔法陣に足を踏み入れると魔法陣は起動する。輝きが増すその光景はかつて教室に出現した時と同じ。
輝きが最高潮に達した時、二人は転移する。

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