甘え上手な彼女4 冬編

Joker0808

第66話




 クリスマス会が終わり、生徒が全員帰ったのを確認した後、大石は学校の扉に鍵を掛けた。

「はぁ……」

 大石はため息を吐きながら、車を止めてある駐車場に向かった。

「あ、幸輔さん来たんですね」

「えぇ、鍵を掛けてきたので……もう呼び方を変えてるんですか……」

「はい! あ、幸輔さんも二人っきりの時は名前で呼んでくださいね!」

「いや……私はまだ心の準備が……」

「呼んでくださいね!」

「いや、ですから……」

「ねっ!」

「うっ……はい……」

 愛奈に圧倒され、大石は思わず頷く。
 そんな大石を見た愛奈は満足そうに笑い、大石の車の助手席に乗る。

「さぁ! 早くクリスマスデートの続きをしましょう!!」

「本当に私の家に来るんですか……」

「む、なんですか? その嫌そうな顔は?」

「だって……絶対に襲いますよね?」

「もう、何を言ってるんですか~、私だって大人の女性ですよ? そんな自分からだなんてはしたない」

「自分からキスを迫っていた人が言わないでください……」

 大石は愛奈にそう言いながら、運転席に座る。
 すると愛奈は素早い動きで、大石の手を握った。

「……運転しにくいんですが?」

「幸輔さん、運転の時はほとんど片手で運転してるじゃないですか? たばこを吸いながら運転してたこともあったし」

「それとこれとは状況が違います……」

 大石はため息を吐き、車のエンジンをかけて車を動かし始める。

「大体……確かに付き合うとは言いましたが、物事には順序と言うものがですね……」

「キスしたら次にやることは決まってるじゃ無いですか?」

「……貴方のその考えは間違ってると思います……」

 大石は愛奈にそう言い、胸ポケットのたばこに手を掛ける……しかし……。
 
「あれ? 吸わないんですか?」

「はい……あぁ……なんか今から禁煙しようかなって」

「え? なんでですか?」

「はぁ……貴方も結構鈍感だと思いますけど?」

「え?」

 大石はたばこに手を掛けていた手を愛奈の手に戻す。

「あ、そう言えば幸輔さん」

「なんですか?」

「まだクリスマスプレゼントを渡してませんでしたね、後でベッドの上で渡しますね」

「なんでベッドなんですか? シチュエーションが怖いんですけど……」

「怖くなんてありませんよ! 安心してください、きっと気に入ります!」

「何がですか……」

 大石は愛奈に静かにツッコミながら、自分の家まで車を走らせる。





 高志は家に帰宅していた。
 最低最悪のクリスマスだと、高志自身はそう思っていた。
 いくら紗弥に連絡を取っても相手にされず、自分が完璧に振られてしまったと高志はそう思っていた。

「にゃ……」

「ん? あぁ……ちょっと一人にさせてくれ……」

「んにゃぁ~」

 高志が自室のベッドの上で背中を丸めていると、チャコが高志の背中に自分の体を擦りつけてきた。
 恐らく慰めようとしているのだろうと思い、高志はチャコの頭を撫でる。

「ありがとよ慰めてくれて……でも……これは俺の自業自得なんだ」

「ふにゃ~……」

 高志はチャコをベッドから下ろし、スマホを操作し始める。
 優一や土井、繁村などからメッセージが来ていた。
 内容はどれも紗弥と仲直りしろと言う内容だった。
 繁村のメッセージでは瑞稀の事が書いてあった。
 すべてがバレてしまい、瑞稀にも悪い事をしてしまったと高志は罪悪感を感じていた。

「はぁ……俺……何してたんだろ……」

 肩を落とし、帰ってきて何度目かも分からないため息を吐く。

(でも……助けてくれた優一達の為にも……騙してしまった紗弥の為にも……俺はもう一度紗弥と話しをしなくてはいけない。今度はちゃんと……俺の本音をぶつける)

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