甘え上手な彼女4 冬編

Joker0808

第25話

 八重家の食卓に紗弥が居るのは珍しくない、むしろ日常化しつつある。
 しかし、それだと紗弥のご両親が申し訳ないと言うことで、たまに紗弥の両親(母親のみ)も食事に来る。
 食事を終えた高志と紗弥は、自室に戻りテスト対策の勉強を済ませた。
 時間は夜の23時、結構遅い時間なので高志は紗弥を家まで送っていた。

「すっかり遅くなったな……」

「そうだね、明後日からテストだし、頑張らないとね」

「そうだね」

 季節は冬、外は寒く吐く息も白い。
 
「寒いね……」

「もう冬だしね……そろそろ雪も降るんじゃないか?」

 そんな事を話していると、紗弥が不意に高志の手を握ってくる。
 高志はそんな紗弥の手を握り返し、手を繋いで紗弥の家に向かう。

「ありがとう、送ってくれて」

「いや、気にしなくて良いよ……じゃあね」

 高志はそう言って紗弥を送って自分の家に戻る。

「……高志」

 紗弥はそんな高志の背中が見えなくなるまで目で追っていた。
 紗弥はなんだか嫌な予感がしていた。
 このまま高志が遠くに行ってしまうような、そんな感じがしていた。





 バイト二日目、今度の仕事は部屋の掃除だった。
 昨日のゴミ屋敷を綺麗にして住めるようにするらしい。
 高志と優一は、昨日と同じく車で現場に向かい、部屋の掃除をしていた。

「意外に床とかはあんまり汚れてないな……」

「衣服とか散らばってたろ? アレのおかげで汚れが床にまで行かなかったんじゃないか?」

 マスクに手袋で高志と優一は床を拭いていく。
 ゴミを片付けても、部屋の悪臭は消えない、窓を全開にして作業をしているが、マスクは必須だった。
 しかも冬と言うこともあり、部屋の中は極寒だった。
「うぅ……寒いなぁ……」

「電気が使えるだけありがたいよ、お湯まで出なかったら地獄だったよ」

「まぁな……さっさと終わらせようぜ」

「そうだね」

 その日の作業は昨日よりも大変では無かった。
 基本的にお掃除だったこともあり、昨日のゴミを運び出す作業よりは楽だった。
 時間通りに作業が終わり、高志と優一は事務所に戻ってバイト代を受け取る。

「お疲れさん! いやぁ~マジで助かったよ! また何かあったら頼むよ!」

「今度はゴミ屋敷は勘弁っすよ」

「確かに……」

 一日目の部屋の様子を思い出しながら、高志と優一は市川にそう言う。
 
「あはは! あんな仕事はそんなに来ないさ、えっと……高志君は明日も手伝ってくれるんだろ?」

「あ、はい。学校が終わってからですけど……」

「全然大丈夫だよ! 良かったら迎えに行くけど?」

「本当ですか?」

「あぁ、明日の現場は君たちの学校から近いからね」

 優一は今日でバイトは終わりだが、優一以上に金を必要としている高志は明日もバイトをする予定だった。 迎えに来て貰えるならありがたいと、高志は市川に迎えに来て貰うことにした。

「はぁ……終わった終わった」

「俺は明日もだよ……優一はこれから買いに行くの?」

「あぁ、忘れたら大変だしな……じゃあ、俺はこの辺で」

「おう、じゃあまた明日学校でな!」

 高志は優一と別れ、一人街中を歩く。
 時間は15時、このまま真っ直ぐ帰れば昨日よりは早く家に帰れる、なんて思いながら高志は自宅までの道を歩いていた。
 そんな時だった、ふと高志は瑞稀の事を思い出してしまった。
 今頃何をやっているのだろうか?
 そんな事を考えていると、昨日の瑞稀が話していた事を高志は思い出す。

『部屋に一人は退屈なんです』

 そう彼女が言っていたのを思い出し、高志は少し考えて元来た道を引き返し始めた。
 そして向かった先は昨日と同じ、瑞稀の家だった。
 
「クリスマスが終わったら、紗弥にも紹介しよ……」

 クリスマスの為にバイトをしていることがバレ無いように、今は紹介出来ないが、高志は近いうちに紗弥と瑞稀を会わせようと考えていた。
 きっと二人は仲良くなれる。
 同じ女の子だし、話しも自分以上に合うのではないかと高志は思っていた。
 もちろん紗弥だけではない、泉や優一、芹那や由美華も高志は瑞稀に紹介するつもりだった。

「もう一人なんて……言わせたくないしな……」

 高志はそんな独り言を呟きながら、瑞稀の家のインターホンを鳴らす。 

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コメント

  • 水野真紀

    応援します
    久しぶりに面白いと思えるような作品に出くわしました
    僕の下手な文章ですけど一応書いてるので是非

    2
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