転生したら愛がいっぱい?!(仮題)

シーチキンたいし

お散歩


その後、クマさんに連れられて、クマさんのお家にお邪魔することになった。「宿とるよ?」と言ったのだが、とんでもないと拒否られた。

仕方ないので、クマさんのお家にしばらくお邪魔することにした。

翌日、クマさんは九勇士円卓会議エニアグラムの詳細を聞くため、ギルドへと出掛けていった。なので、私は一人でお散歩することにした。

街は活気があり、朝だということもあって、朝市のような通りがあった。

売っているものも珍しくて美味しそうなものばかり。

「おいしそー!」

「お?お嬢ちゃん見る目があるな!これは今朝取れたばかりのリッガだ」

「リッガ?……(あぁ!リンゴか!)」

「なんだ、初めて見るのか?」

「うん!お一つ下さいな!」

「おう!銅貨1枚だ」

私はクマさんにもらったお小遣いから銅貨一枚を渡した。代わりに店の店員はリッガ(リンゴのような果物)を手渡してくれた。

一口噛れば、口に広がる果汁。味も食感もリンゴに近い。

「おいしぃ~!」

「そりゃよかった」

私は色々なところを見て回りながら、街の散策を続けた。

しかし、子供の足でそう遠くに行けるはずもなく、仕方なくクマさんのお家の近くだけだ。それでも、やはり冒険者が多いと言うこともあり、活気に溢れている。

初日にクマさんに案内して貰ったお陰で、迷うことなく快適に散歩をしていた。珍しい魔道具や、美味しそうな屋台に目を奪われる。

見て回りながら思った。屋台とか魔道具やとか、私にとっては目新しいモノが沢山だけど、この世界ってもしかして、娯楽が少ない?

(解答、魔物が多いこの世界では魔道具や、生活向上品の開発のほうが重視され、娯楽があまり発展しておりません。)

やっぱりそうなんだ。この世界に地球あっちにあった娯楽って流行らせられるかなぁ?

(解答、おそらく可能です。スキル:加工もしくはスキル:創造があれば、今すぐ手元の材料で作ることが可能です。問、スキルを取得しますか?)

鑑定さんがスゴすぎる…。もし、作ったとして、売ることってできる?

(解答、可能です。商人を介して販売することをオススメします。その際、商業の神に奉納すれば、あなた様の商品として登録され、あちらの世界で言う特許と同じ様に、類似品などは所有者の許可がなければ作れなくなります)

へぇ!そんなことも出来るんだ!今度やってみようかなぁ?

そんなことを考えながら歩いていると、左に大きな白い建物が見えた。

「あ!あそこって……」

そこにあったのは立派な神殿だった。

もしかしたら、また声を聞けるかもしれない。私は気分が上がりながら、神殿に足を踏み入れた。

神殿の中はとても静かで、たくさんの人か祈りを捧げに来ていた。神殿の中は正面に創造神様の像があり、等間隔に左右に11神の像が並んでいた。

みんな神様なの?

(解答、この世界の神は創造神様を入れて12神です。命の神、火の神、水の神、大地の神、風の神、商業の神、鍛冶の神、魔法の神、戦いの神、知恵の神、運命の神。以上がこの世界におられる神です)

色々いるんだなぁ。私が会ったのは、命の神イナン様と創造神様のお二人だ。お陰でこうして転生して、楽しく生きている。

私は創造神様の像の前で祈りを捧げた。すると、頭の中にあの優しげな声が響いた。

『健やかに生きているようじゃな我が愛しい子よ』

『アリス、不自由はありませんか?』

「(イナン様!ゼウス様!はい、何も不自由なんてありません!アリスは楽しく過ごしています)」

『それはよかった』

『我ら神は、何時でもお前を見守っている。アリスよ、そなたの思うままに生きるのじゃよ』

「(はい!)」

お二人の声が再び聞けてよかった。今度、娯楽品とか作って奉納したら神様に届くかな?

(解答、奉納し祈りを捧げれば、それは神界に転送される仕組みです。)

そうなんだ!今度やってみよう!

私は二人への感謝と共に、強く祈っておいた。

すると、何やら回りがうるさい。どうやら私の隣で騒いでいる人が居るみたいだ。だけど、私は祈りの途中だし…無視でいいか。

「貴様!私を無視とはいい度胸だな!」

「ん?」

いい加減うるさくて、声の方を見れば、白い神官服を来た男が立っていた。

「何ですか?あなた」

「私をさんざん無視しておいて、その態度はなんだ!私はこの神殿の司祭だぞ!」

「……だから?」

「なっ?!私は神聖なる身分なのだ!敬って当然だろう?!」

「それって…神様より偉いの?」

この人頭が悪いのだろうか?神殿の神官って神に仕える人で、別に偉い人じゃないよね?

「ッ!貴様ぁ!」

「それより何なの?用がないなら、参拝も終わったし、アリス帰りたいの」

「帰るだと?貴様は私と本国へ行くのだ」

「本国?」

「メルアリス聖国だ。貴様は加護持ちだろう?ならば当然だ」

この人は何言ってるの?私が何で聖国なんか行かなきゃいけないの?っていうか、その態度なんなの?私今子供だけど、これって怒っても文句ないよね?

(解答、問題ありません。この男の言い分にはなんの強制力もありません。鑑定結果、この神殿に鑑定魔道具が存在しています。あなた様のステータスを勝手に見たと思われます )

何それ、盗み見かよ!オルグおじ様は、ちゃんと自分が鑑定持ちだって言ったのに、この人失礼すぎない?

「そんなとこ行かないの。って言うか、勝手にステータスを盗み見して、誘拐するの?聖国って、そんな国なんだ」

「ッ!なんだと!」

(申告、この男のステータス値はあなた様に劣ります。攻撃されても、この男はあなた様に害意を持っておりますので、結界に弾かれます。問題にもならないかと)

鑑定さんがこの人に辛辣だ。

まぁ、私もこの人はちょっと嫌な感じがするし、聖国なんか行きたくないしね。

『グルルルルルッ!(こいつ嫌いだ!)』

白銀も、すごく怒ってる。これは早くここを出たほうがいい。回りに野次馬も増えてきたし。

「用がないなら帰るね」

「待て!貴様は本国へ行くのだ!そうすれば、聖女として一生不自由なく暮らせるのだぞ!」

「そんなもの要りません、アリスはアリスの好きなように生きるの」

ゼウス様も思うままに生きろって言っていた。私は、その言葉に従う。

「ぐッ!貴様の言い分など興味はない!さっさと着いてこい!」

「司祭様が誘拐するの?酷い人」

「私を愚弄するなぁ!!!」

男が手を振り上げて、私に目掛けて振り下ろす。しかし、私はそれを避けない。だって、私にその攻撃が届くことは無いもの。

しかし、結界に弾かれるより前に私と男の間に入った人がいた。

「大丈夫か?アリス」

「クマさん!!」

クマさんは男の拳を軽々と受け止めていた。さすがSランク冒険者。

「司祭が子供を殴ろうとするなんて、最低だな。それでも神官かよ?」

「何だ貴様!私の邪魔をするな!」

「邪魔?邪魔なのはお前だ。アリスは俺の大切な女だ。勝手なこと言ってんじゃねぇ」

うおおっ!何だこのラブコメ見たいなセリフ!クマさんにちょっとときめいた…。

「なっ?!わ、私は彼女のためを思って!」

「今さら取り繕っても無駄だ。ここは野次馬が多すぎる。さっきまでのテメェの醜態も、全部見られてんだよ」

「ぐッ……!」

この人、気付いて無かったの?あんなに騒いでたら、この静かな聖堂の中だと響くのに。

「彼女は私と共に本国へ行くのだ!ね、そうですよね?」

その瞬間、何かぞわりと悪寒がしたが、バチッと言う結界の音がした。

何か弾いた?

(解答、相手が精神洗脳系の魔法を施行しました。害意と判断。結界により、弾かれました)

「……行かないの。さっきもそう言ったの」

「なッ?!どうなっている?!」

「アリスに害意ある魔法は効かないの。おじさん、アリスに精神洗脳系魔法を使ったでしょ?」

「何故……ッ!?し、知らぬ!そんなもの使ってない!私は失礼する!」

男はどかどかと怒りながら出ていった。

知らないなんて嘘ついても、鑑定さんにはお見通しなの。

「大丈夫だったか?来るのが遅くなってごめんな」

「うんん、来てくれて嬉しかったの!ありがとうクマさん!」

「当たり前だ。アリスは俺が守る」

ひゃああああ!この人羞恥心は無いのでしょうか?こうもさらっと、ベタなセリフを言われると、こっちが恥ずかしい。

「帰るか?アリス」

「うん!」

私はクマさんに抱き上げられ、帰路に着いた。

今日は色々あった1日だったなぁ。


そんな事を考えていたアリスとは反対にラクマは、一人思案していた。

(アリスの存在が、聖国に知られたかもな。聖国のことだ、このまま何事もない…とは行かねぇだろう。九勇士円卓会議エニアグラムでアリスを一人ここに残していくのもなぁ。いっそのこと、連れてくか?)


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