エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!

チョーカー

背中の攻防

  ノバスの猛攻。 
 
 コマのように回転して放たれる蹴りの数々。それは、台風や竜巻を容易に連想させる。

 しかも、それは単調な回し蹴りというわけではない。

 上段の回し蹴り――――いや違う。

 次の瞬間、背中から槍のように真っ直ぐな蹴りが打ってくる。

 さらに地を這うような低い体勢からの水面蹴り+飛ぶような上段蹴りのコンボ技。

 上段、中段、下段と隙がない。
 
 けど、ノアも負けないよ

 体が躍動する突きを――――いや、誘われた!

 ノアが狙っていたのは蹴りと蹴りの継目。強引に前へ――――

 そのタイミングで振るわれたのはノバスの拳。

 「ぐえぇ」と声にならない悲鳴のような異音がノアのノドから発せられる。

 カポエラにある数少ない腕での打撃。 その1つとして、ノドを狙い縦拳をねじ込む技がある。

 続けても拳を使用した打撃 ガロパンチ。 フックの軌道でノアの顔面、それも側面に叩き入れ――――

 「――――ッ! 信じられねぇ奴だ」とノバスは絶賛した。

 ノアはノドを拳で打ち抜かれ、のたうち回ってもおかしくない状態でノバスの打撃を防御したのだ。

 「けど、コイツはおまけだ! 喰らっていけ!」

 ノアは強烈な打撃を受けて、意識が、構えが自然と上へ重心が上がっている。

 だから、決まる。背中を相手にぶつけるて転がせる体当たりような技。

 『報復《ヴィンガチーヴァ》』

 しかも、より攻撃的なモーション――――背中をぶつけ、ついでに後頭部での頭突きを相手の顔面に叩きこむバージョン。

 ノアの体が浮き上がり、後方へ倒れて――――いや、そのまま体を丸めて後転。

 一瞬も止まる事のない滑らかな動きで立ち上がる。

 だが、その顔には深いダメージが見て取れる。

 当たり前だ。 ノドに強打を受け、顔の真正面に後頭部を叩きこまれたのだ。

 ポタポタと鼻。それから口から鮮血が落ちている。

 (――――けど、痛みじゃ俺は止まらない……止まれない!)

 ノアは強く、強く踏み込む。

 ――――被弾。 蹴りを2発。 けど進む。 さらに被弾。

  烈な蹴  意識 途切 る。 けど!

 手離しかけた意識の手綱。 それを再び握り直し、近距離へ。

 そして、繰り出した技。 ノバスは、錯覚する。

 「この技は、さっき私が放った『報復』だ……いや違う!」

 背中をぶつけて攻撃する技なら八極拳にだってあるのだ。

 その名――――

 『鉄山靠《てつざんこう》』

 フワリと体が浮き上がる? 

 そんな表現など、生ぬるく。 吹き飛ばされ、闘技場の壁に叩きつけられるノバス。

 自分の意識に反して倒れていく肉体。 壁に手をつき、無理にダウンを拒否する。

 ノバスのダメージは深い。だが、その代償……無理に技を決めるために受けた蹴りは幾つだろうか?

 もはや、立っているノアの意識は――――

 「うおぉぉぉぉぉぉぉ!? 行くぞ! 憤怒のノバス!」

 意識は覚醒。 けれども、裂帛の気合の如く雄たけびを持っても動きに酷く遅く。

 それでもノアは――――こう呟いた。

 「絶招の……解禁を」

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