エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!
光世戦のその後
まどろみ。
光世は目を覚ますと夜の帳が下がっていた。
場所は橋の下。すでに観客たちの姿はない。
しかし、1人だけ座り込み光世を待っている影があった。
誰だろうか? 見覚えのない老人だった。
鋭い目つきが特徴的な老人。 どこかで見た事あるような……
そうだ。今日戦ったエルフの女性に似ているのだ。
確か、名前は――――
「あぁ起きたかい?」
そう老人が言った。 ――――いや、さっきまでいたはずの老人は消えて、代わりに座っていたのは李書文だった。
「不思議な夢を見ていました」
「へぇ~ どんな夢だい?」
「貴方が変な老人に変身してる夢でした」
「……それは、面白い夢だ」
「……面白いですか」
「面白いさ」
「へぇ」と言いながら光世は立ち上がった。それから、
「すいません。金は少し待ってください」
「むっ? それは構わないが……」
「あいにく、これが全財産で。これで人を呼び込まないと商売になりません」
「これは商売なのかい?」と書文は自身の拳をぶつけて見せた。
「ん~ 改めて商売と聞かれると、違うって答えますね」
「ほう……では、なんで人を殴ったり、戦ったりしている?」
「結局は、趣味です」
「趣味?」
「あぁ、好きなのですよ。旅をして、強い人と殴り合うが……貴方もわかるでしょ?」
「ワシも殴り合いが趣味のように見えるかい」
「見えますよ。 それも、とびっきり大好きにね」
「そうかい、少し驚いた」
「驚いた? それはなぜ?」
「そういう物が体から消えたものと思っていたからね」
「そういうものですか?」
「戦って楽しいって感情」
「はっはっはっ……」と光世は笑った。それから、
「消えたなんて嘘です。 嫌なら毎日、殴り合いを考える生活なんてやってない……そうでしょ?」
「なるほど、久しく真剣に考えた事がなかった」
「殴り合いが楽しいって事をですか? まるで仙人とか、弓の達人の話みたいですね」
「弓の達人?」
「知りませんか? 年老いた達人が、食堂に立ち寄った時に店の亭主に尋ねるんですよ。あの道具は何ですか?ってね」
「あぁ、弓の達人が弓矢を見ても、それが何かわからなくなっているって話か」
「あれって不思議なんですよね。要するに達人は弓を忘れるほどに鍛錬を怠っていたって事でしょ? なんで、その話を聞いた国中の達人たちが、自身を恥じて、しばらく道具を手にしなかったのですかね?」
「む? それは、途中で話が変わってないか? しかし……うむ、わからぬ」
「でしょ? たぶん、それは私も貴方もわからない人種なんですよ。突いたり、蹴ったり、投げたりする事が楽し過ぎて、それを忘れる事が、何よりも辛い人種……本当はね」
「なるほど、なるほど……それがワシの本質か」と書文は頷き「旅をして、強い人と殴り合うのは趣味か」と繰り返した。それから――――
「やはり、金貨100枚はいただいておこう」
「え? 話を聞いてました?」
「聞いてたわい。その代わり、いい話を教えておく」
「いい話ですか?」
「ここはバッドリッチ侯爵の領地じゃ。彼の御仁について聞いているか?」
「無論、戦場の猛牛と二つ名を持った武人。むしろ、ライン街道の撤退戦を知らぬ者がいるのでしょうか?」
「うむ、その猛牛は娘にたいそう甘くてな。その娘が武の道へ熱狂しておる。
有能な武人ならば、客人として迎えてくれよう。かくいうワシも、そこの客人じゃ」
「それは……要するに、一緒に暮らそうというプロポーズですか?」
「ふん、抜かせ! ……そんな冗談が言えるなら、もう動けるだろう」
「はっはっ……酷い人だ。私を暫く、この地に滞在させるために金貨100枚を持っていきながら、随分と素っ気無い」
「……いや、100枚を貰うのは、当然の権利じゃろ」
こうして前田光世もバッドリッチ家の客人となる事が決まった。
それから6年後――――
バッドリッチ家には、
李書文も
武田惣角も
前田光世もいない。
ノア・バッドリッチ――――灼熱の15才が始める。
光世は目を覚ますと夜の帳が下がっていた。
場所は橋の下。すでに観客たちの姿はない。
しかし、1人だけ座り込み光世を待っている影があった。
誰だろうか? 見覚えのない老人だった。
鋭い目つきが特徴的な老人。 どこかで見た事あるような……
そうだ。今日戦ったエルフの女性に似ているのだ。
確か、名前は――――
「あぁ起きたかい?」
そう老人が言った。 ――――いや、さっきまでいたはずの老人は消えて、代わりに座っていたのは李書文だった。
「不思議な夢を見ていました」
「へぇ~ どんな夢だい?」
「貴方が変な老人に変身してる夢でした」
「……それは、面白い夢だ」
「……面白いですか」
「面白いさ」
「へぇ」と言いながら光世は立ち上がった。それから、
「すいません。金は少し待ってください」
「むっ? それは構わないが……」
「あいにく、これが全財産で。これで人を呼び込まないと商売になりません」
「これは商売なのかい?」と書文は自身の拳をぶつけて見せた。
「ん~ 改めて商売と聞かれると、違うって答えますね」
「ほう……では、なんで人を殴ったり、戦ったりしている?」
「結局は、趣味です」
「趣味?」
「あぁ、好きなのですよ。旅をして、強い人と殴り合うが……貴方もわかるでしょ?」
「ワシも殴り合いが趣味のように見えるかい」
「見えますよ。 それも、とびっきり大好きにね」
「そうかい、少し驚いた」
「驚いた? それはなぜ?」
「そういう物が体から消えたものと思っていたからね」
「そういうものですか?」
「戦って楽しいって感情」
「はっはっはっ……」と光世は笑った。それから、
「消えたなんて嘘です。 嫌なら毎日、殴り合いを考える生活なんてやってない……そうでしょ?」
「なるほど、久しく真剣に考えた事がなかった」
「殴り合いが楽しいって事をですか? まるで仙人とか、弓の達人の話みたいですね」
「弓の達人?」
「知りませんか? 年老いた達人が、食堂に立ち寄った時に店の亭主に尋ねるんですよ。あの道具は何ですか?ってね」
「あぁ、弓の達人が弓矢を見ても、それが何かわからなくなっているって話か」
「あれって不思議なんですよね。要するに達人は弓を忘れるほどに鍛錬を怠っていたって事でしょ? なんで、その話を聞いた国中の達人たちが、自身を恥じて、しばらく道具を手にしなかったのですかね?」
「む? それは、途中で話が変わってないか? しかし……うむ、わからぬ」
「でしょ? たぶん、それは私も貴方もわからない人種なんですよ。突いたり、蹴ったり、投げたりする事が楽し過ぎて、それを忘れる事が、何よりも辛い人種……本当はね」
「なるほど、なるほど……それがワシの本質か」と書文は頷き「旅をして、強い人と殴り合うのは趣味か」と繰り返した。それから――――
「やはり、金貨100枚はいただいておこう」
「え? 話を聞いてました?」
「聞いてたわい。その代わり、いい話を教えておく」
「いい話ですか?」
「ここはバッドリッチ侯爵の領地じゃ。彼の御仁について聞いているか?」
「無論、戦場の猛牛と二つ名を持った武人。むしろ、ライン街道の撤退戦を知らぬ者がいるのでしょうか?」
「うむ、その猛牛は娘にたいそう甘くてな。その娘が武の道へ熱狂しておる。
有能な武人ならば、客人として迎えてくれよう。かくいうワシも、そこの客人じゃ」
「それは……要するに、一緒に暮らそうというプロポーズですか?」
「ふん、抜かせ! ……そんな冗談が言えるなら、もう動けるだろう」
「はっはっ……酷い人だ。私を暫く、この地に滞在させるために金貨100枚を持っていきながら、随分と素っ気無い」
「……いや、100枚を貰うのは、当然の権利じゃろ」
こうして前田光世もバッドリッチ家の客人となる事が決まった。
それから6年後――――
バッドリッチ家には、
李書文も
武田惣角も
前田光世もいない。
ノア・バッドリッチ――――灼熱の15才が始める。
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