エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!

チョーカー

彼女の名前はヤマト?

 「確か、ここのはず」と書文。

 そこは橋の上。 人通りは多くないが、馬車がすれ違っても通れる余裕がある広さ。

 書文とノアが周囲を見渡すと、

 「先生、あの人」をノアが見つけた。 そこで紙を配っているの女性を。

 その紙の内容は書文が持ち帰った物を同じ物。

 『挑戦料は金貨10枚。勝てば、金貨100枚差し上げます』

 「うむ、行くか」と書文は女性に近づき、持っていた紙を女性に見せた。

 「これは本当か?」

 「はい」と女性は笑顔で返す。 

 「挑戦希望の方ですか?」

 「うむ」

 「それではこちらに……実は予約が入っているので、少しお待たせしてもよろしいですか?」

 「予約?」

 「はい。 昨日、挑戦をしたいという方がいましたので」

 そう言いながら女性が案内した場所は橋の下。 広い土手が広がっていた。

 そこにすでに見物客らしい人がちらほら見かける。

 その中から男が1人、前に出る。

 「金貨10枚だ」と男は女性に手渡した。

 「確かに受け取りました。では、少々お待ちください」

 どうやら、この男が事前に戦いの予約を入れていた人物のようだ。

 腰に剣に真新しい服。 おそらくは騎士階層なのだろう。それも高い階級。

 騎士が修める武術は剣術だけではない。 戦場で剣が折れた時のために徒手空拳の技を身につけている。

 「お待たせしました。それではお確かめください」と女性は騎士に袋を手渡した。

 おそらく、中身は金貨100枚。その確認なのだろう。

 「確かに100枚だ」

 おそらくは知り合いなのだろう。騎士は剣を隣の男に渡し、さらに服を脱いでは上半身裸になった。

 だが、ノアの脳裏に「?」と疑問符が浮かび上がる。

 「相手はどこに?」

 これから賭け試合が行われる。 その主催者(?)と言うべきか、騎士と戦う相手。それらしき人物が見当たらない。

 しかし、それが誤解だという事はすぐにわかった。

 さきほどまで騎士の対応していた女性が外套を脱いだ。

 それ姿は――――

 「柔道着? いや、でも……違う。サンボ?」とノア。

 一見するとサンボの選手ように、上だけが道着で下は短パン。

 だが、それは確かに柔道の稽古着なのである。 

 ただし、柔術から柔道が誕生した頃に使用されいた物――――いや、そんな事よりも!

 「まさか、あの女性が賭け試合を!」

 「何をそんなに驚いておる? ワシだって今は女性じゃぞ?」と書文は愉快そうな顔。

 ノアは心中で

 (いやいや、あなたは別格でしょ?)

 と突っ込みを入れた。

 「しかし、彼女は……」

 「いいや、奴は強いさ。ワシの血が猛るほどにはな」

 「――――ッ!?」と書文の言葉に絶句するノア。

 騎士と対峙している彼女を観察した。

 黒髪を後ろにまとめたポニーテール。 

 その顔立ちは、こちら側では珍しい。 ……と言うよりも日本人に見える。

 (転生者……いや、召喚者? 日本の女性格闘家?)

 「彼女の名前はヤマトと言うらしい」と書文

 「ヤマト……大和?」

 それは日本の古称。 間違いなく彼女は日本人であろう。

 けれども、書文を持って称賛する実力者? 一体、何者なのか?

 やがて試合が始まった。

 騎士の構えは、体の中心に腕を持って行きている。

 右手を上。 左手を下。

 人体の弱点が多い体の中心(正中線)を守る構え……と言うよりも、剣を持って戦う事を想定した構えではないか?

 そうノアは推測した。

 一方、相手の女性――――ヤマトは、何も構えていない。

 いや、そう見えるだけで、アレが構えなのだ。

 柔道で言う自然体。 

 投げの攻防に適した構えではあるが……打撃ありの戦いでどこまで有効なのか?

 騎士が前に出ると同時に前蹴りを放つ。 技と言うよりも力任せの暴力と言える蹴りだ。

 それを余裕をもって躱すヤマトだったが――――

 「馬鹿め!」と騎士は笑う。

 その前蹴りの目的は間合いを詰める事。 地面に残した軸足で前に飛び、大きく伸ばした足を、そのまま地面に付け――――

 騎士は腕を振り上げる。

 おそらくは剣戟に見立てた技なのだろう。 上げた腕をそのまま振り下ろし――――

 鉄槌!

 ヤマトの頭部に狙いとすまし、握られた拳が叩き落される。

 だが、次の瞬間――――

 「ぐっはッ……」と呻き声をあげていたのは攻めいたはずの騎士の方だった。

 騎士は投げ飛ばされ、背中を強打していた。 辛うじて受け身は間に合い頭部の強打は免れている。

 しかし、ヤマトがどうやって騎士を投げたのか? あまりの早業にノアの動体視力はとらえきれなかった。

「このッ!」と騎士は立ち上がり、反撃に転じようとする。

 ――――だが、できない。

立ち上がろうとする騎士の体にヤマトは上から覆いかぶさり、寝技で抑え込む。

そう思った次の瞬間だ。

「よっこいしょ」と、ヤマトの可愛らしい声が聞こえてきたかと思うと

「うっがっぎゃあああああああああああああああ!」と騎士の口から叫び声があがった。

周囲の観客たちはヤマトが騎士に何を行ったのか理解できていなかった。

しかし、ノアにはその技の正体が分かった。

腕十字固め

おそらく、日本で一番有名な関節技サブミッションだ 

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