エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!

チョーカー

ノア、成長の秘密

 ノアの様子を見て、書文は首を捻った。

 (功夫の成長が早すぎる)

 まだ数日の指導……と言うよりも站樁たいとうしか教えていない。

 しかし、その站樁が妙に様になっている。

 書文がノアの才能を評価するならば、平凡よりも少しだけ上。

 長時間、站樁を行う事ができるのは才能だ。 

 站樁というのは、下半身を鍛えればいいと言うだけではない。

 実を言えば、疲労しないように僅かながら体を動かしているのだ。

 そうして、体を精密にコントロールする事を可能とする。

 そういう意味合いもある。

 (しかし、それを含めて、ノアの才能は天才のそれには遠く及ばない……ならば、なぜ? 成長が早い?)

 「そこまで! 止めてよし」と書文の合図で今日の鍛錬は終了した。

 「ありがとうございました」とノアは頭を下げる。

 「ふむ(汗も少量、足の疲労も少ない……か)」

 「あの……何か?」とノア。

 「うむ、なんでもない」

 しかし、李書文は武に関しては、尋常ではない探究者。

 秘術の謎を解くために、わざわざ夜道で達人を襲って技を受けた事もある。

 「これ、そこの娘!」

 「は、はい! 何でしょうか? 書文先生」

 「お主は、確かノアのお付きの……」

 「はい、メイドリーと言います」

 「ふむ……1つ、聞きたい事がある」

 「私にですか?」

 「そうだ。ノアは練習の後に独学で何かしているのではないか?」

 「えっと……その……」とメイドリーは少し困った顔をした。

 「?」

 「実はノアさまは、拳法の練習に疲れ果てて眠るのですが……」

 「それは、そうだ。 そうなる強度で鍛えさせている」

 「そうなのですが、ノアさまは寝る前に復習を行うのです」

 「……ほう、それは関心だ。 まだ余裕が残っていたのか」と書文は鍛錬の強度を高めようと決めた。

 決めたのだが……

 「いえ、そのまま疲れ果てて眠るのです」

 「? それは先ほど聞いたが……いや、まさか!」

 「はい。あの站樁というのをしたまま寝てしまっています」

 それを聞いた書文はブルブルと震え始めた。

 それを見て、怒り狂っていると判断したメイドリーは、どう声を掛けたら良いのか、

「あの……書文…さま?」

 だが、書文は――――

「かっかっかっ!」と大きく笑った。

「おもしろい! 寝たままで站樁を行うか! それは成長が早いはずじゃ」

やがて笑いをこらえながら「おい、娘」とメイドリーへ言った。

「は、はい?」

「ノアに伝えておいてくれ。 明日からは站樁だけではなく、八極拳の基礎を教えてやるとな」

 そのまま「かっかっかっ……」と笑いながら歩く書文の後ろ姿をポカンとした表情で見送ったメイドリーだった。

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・

 それが数か月が経過した。 書文がノアを指導する内容は――――

 八極小架

 八極拳の套路《とうろ》(日本武術で言う型のようなもの)を行う。

 それが終わると沖垂と頂肘の練習。

 沖垂―――八極拳の基本となる突き。

 頂肘―――肘を突き出す攻撃。体当たりのように肘を突き出したり、投げや関節技に派生する。

これを繰り返し、繰り返し行われている。 

そして、疲れ果てたノアは站樁たいとうの状態で眠りにつく。

それが日常へと変わっていった頃に妙な話がバッドリッチ邸まで聞こえてきた。

「隣国の魔剣が盗まれ、盗賊が我が領土にまで入ってきた?」

そう聞き返して、顔を顰めるのはノアのパパだ。

相手は憲兵、この世界の警察……みたいなもの。

「はい、それも奇妙な事に賊は仲間割れを起こしたらしく、魔剣を持った1人が仲間を全員切り殺したようです」

「なんと……その魔剣に魅了されたか。厄介だな」

いわくつきの魔剣に魅了され、普通の人が殺人鬼になる。

珍しい話だが、決してあり得ない事ではない。

「わかりました。我々も山狩りに協力しましょう。ただ……」

「ただ? 何でしょうか?」

「相手が魔剣に魅了された者だとすれば、普通の兵士では歯が立たぬ。国から優秀な兵の派遣を望む」

「はい、抜かりはありません。すでに百人隊長クラスの者が出発しています」

「ほう、百人隊長か。それは心強い!」

そんな会話が行われいたが、ノアのパパも憲兵も気づかない。

扉の裏で李書文が話を聞いていた事を……       

「 エロげーの悪役令嬢に転生した俺は凌辱END回避のために世界最強を目指す!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く