挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)
狙撃エルフの本名
技術的な理屈ではなく感覚で狙撃を可能とする。
なるほど、確かに常人では理解できない天才の為業だと思われる。
――――思われる? いや、勘違いされると言い直そう。
感覚頼りで神業の如き、敵を狙撃する。
その感覚を得るために努力はなかったと本当に思っているのだろうか?
天才という言葉は、怠け者が努力を怠るための免罪符として使われがちだ。
もしかしたら――――
あんな努力をして天才と呼ばれるくらいなら凡人として生きたほうが、まだマシだ。
人間の精神には努力という狂気に対してそんな安全装置が設けられているかもしれない。
さて――――
今の俺からは想像できないかもしれないが、あの時代の俺たちは非常に高いモチベーションを持っていた。
それこそ勇者として正しいことを行おうと常に意識していた。
有名な格言に
『正義なき力は無能なり、力なき正義も無能なり』
なんて言葉があるが、過剰な力は人を過剰に正義に突き動かせるのだろう。
正義を執行するために、より強い力を……
ならば、あの時代の彼女は、狙撃エルフは俺をどう思っていたのだろうか?
少なくとも彼女は必死だった。 弓矢も剣も魔法も平凡だった彼女。
それでも、凄まじい目的意識と存在意義で駆け抜けていく俺たちに必死に喰らいついていった。
その結果、狙撃の専門家として弓矢も剣も捨てざる得なかったのだ。
これは閑話休題ってやつだ。 話を戻そう。
狙撃手。 その役割から単独行動を強要させられるのが常だ。
だから、俺は軽い話題……他愛のない与太話で言ったんだ。
「近接格闘技を身に着けてみたらいいんじゃねぇ?」
今思えば、狙撃を極めるために様々な技能を捨ててきた彼女に言うにはあまりにも残酷な言葉だったと猛省しているが―――― 彼女はそれを身につけた。
・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「本当に、あのままでよかったの?」と狙撃エルフ。
あの後、ダークエルフのジュンを追い出した事を言ってるらしい。
「一応、俺って貴族だからな……」
「?」
「出る所に出たら、彼女は国家反逆罪になる」
「!?」
今更、説明することでもないが国家反逆罪は重罪だ。
高確率で死罪になる。 流石に、それは俺の望む事じゃない。
殺されかけたのだから殺されてしまえと言い切れない弱さ?
別に殺さずの誓いをたててるわけでもなく――――
だからと言って、俺の手はどうしようもなく汚れていて――――
「ところでキョウくんは、どうして私の事を狙撃エルフって呼んでいるの?」
「いや、お前って狙撃エルフだろ?」
「そういう事じゃなくて、どうして本名じゃなく二つ名とか通り名みたなので呼んでるの? 昔は本名で呼んでいたよね?」
「……」
「あっ! 目を逸らした!」
そのまま「教えなさいよ! 喋りなさいよ!」と地団駄を踏む狙撃エルフ。
こいつのどこがクールビューティだ!
仕方がないので、俺は近くにいたアイルを見つけて手招きした。
「どうしたの?」
「うわぁ、かわいい! この子がキョウくんのお弟子さん? 」
狙撃エルフはアイルに抱きついた。 しかし、小柄のアイルにしてみたら強烈なタックルを受けたような顔になっている。
「これがクールビューティの正体だぞ?」と嫌味でも言おうと思ったが、アイルの無残な姿を見てやめた。
「なぁ、アイル。お前、元の世界の文字はまだ分かるか?」
「? そりゃ、10年以上日本から離れてもわかるわよ。なに? もしかしたら私が元日本人じゃない可能性とか考えてたの?」
「いや、そこまでは考えてなかったが…… 狙撃エルフ。お前、自分の名前を書いてみろ」
「ほえ? 名前を?」と落ちていた小枝を拾い、さらさらと地面に書いた。
問題は、その文字だ
「こ、これは!?」とアイルも動揺した。
狙撃エルフの本名は――――
「リィゼ・雷・リコだよ」
「なんで、異世界の文字に漢字が混ざってるのよ!」
「ほえ? 漢字? 昔のキョウくんも同じような事を言っていたけど、雷は立派なエルフ文字だよ? ちなみに雷と書いてブリッツと読むの」
「唐突なドイツ語!? ブリッツってドイツ語で雷よね? よね?」
「な? 混乱するだろ? だから、俺はコイツの事を狙撃エルフって呼んでいるんだ」
「もう! リィゼって呼ぶだけで良いって言ってるでしょ!」と狙撃エルフがわめき始めた。
なるほど、確かに常人では理解できない天才の為業だと思われる。
――――思われる? いや、勘違いされると言い直そう。
感覚頼りで神業の如き、敵を狙撃する。
その感覚を得るために努力はなかったと本当に思っているのだろうか?
天才という言葉は、怠け者が努力を怠るための免罪符として使われがちだ。
もしかしたら――――
あんな努力をして天才と呼ばれるくらいなら凡人として生きたほうが、まだマシだ。
人間の精神には努力という狂気に対してそんな安全装置が設けられているかもしれない。
さて――――
今の俺からは想像できないかもしれないが、あの時代の俺たちは非常に高いモチベーションを持っていた。
それこそ勇者として正しいことを行おうと常に意識していた。
有名な格言に
『正義なき力は無能なり、力なき正義も無能なり』
なんて言葉があるが、過剰な力は人を過剰に正義に突き動かせるのだろう。
正義を執行するために、より強い力を……
ならば、あの時代の彼女は、狙撃エルフは俺をどう思っていたのだろうか?
少なくとも彼女は必死だった。 弓矢も剣も魔法も平凡だった彼女。
それでも、凄まじい目的意識と存在意義で駆け抜けていく俺たちに必死に喰らいついていった。
その結果、狙撃の専門家として弓矢も剣も捨てざる得なかったのだ。
これは閑話休題ってやつだ。 話を戻そう。
狙撃手。 その役割から単独行動を強要させられるのが常だ。
だから、俺は軽い話題……他愛のない与太話で言ったんだ。
「近接格闘技を身に着けてみたらいいんじゃねぇ?」
今思えば、狙撃を極めるために様々な技能を捨ててきた彼女に言うにはあまりにも残酷な言葉だったと猛省しているが―――― 彼女はそれを身につけた。
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「本当に、あのままでよかったの?」と狙撃エルフ。
あの後、ダークエルフのジュンを追い出した事を言ってるらしい。
「一応、俺って貴族だからな……」
「?」
「出る所に出たら、彼女は国家反逆罪になる」
「!?」
今更、説明することでもないが国家反逆罪は重罪だ。
高確率で死罪になる。 流石に、それは俺の望む事じゃない。
殺されかけたのだから殺されてしまえと言い切れない弱さ?
別に殺さずの誓いをたててるわけでもなく――――
だからと言って、俺の手はどうしようもなく汚れていて――――
「ところでキョウくんは、どうして私の事を狙撃エルフって呼んでいるの?」
「いや、お前って狙撃エルフだろ?」
「そういう事じゃなくて、どうして本名じゃなく二つ名とか通り名みたなので呼んでるの? 昔は本名で呼んでいたよね?」
「……」
「あっ! 目を逸らした!」
そのまま「教えなさいよ! 喋りなさいよ!」と地団駄を踏む狙撃エルフ。
こいつのどこがクールビューティだ!
仕方がないので、俺は近くにいたアイルを見つけて手招きした。
「どうしたの?」
「うわぁ、かわいい! この子がキョウくんのお弟子さん? 」
狙撃エルフはアイルに抱きついた。 しかし、小柄のアイルにしてみたら強烈なタックルを受けたような顔になっている。
「これがクールビューティの正体だぞ?」と嫌味でも言おうと思ったが、アイルの無残な姿を見てやめた。
「なぁ、アイル。お前、元の世界の文字はまだ分かるか?」
「? そりゃ、10年以上日本から離れてもわかるわよ。なに? もしかしたら私が元日本人じゃない可能性とか考えてたの?」
「いや、そこまでは考えてなかったが…… 狙撃エルフ。お前、自分の名前を書いてみろ」
「ほえ? 名前を?」と落ちていた小枝を拾い、さらさらと地面に書いた。
問題は、その文字だ
「こ、これは!?」とアイルも動揺した。
狙撃エルフの本名は――――
「リィゼ・雷・リコだよ」
「なんで、異世界の文字に漢字が混ざってるのよ!」
「ほえ? 漢字? 昔のキョウくんも同じような事を言っていたけど、雷は立派なエルフ文字だよ? ちなみに雷と書いてブリッツと読むの」
「唐突なドイツ語!? ブリッツってドイツ語で雷よね? よね?」
「な? 混乱するだろ? だから、俺はコイツの事を狙撃エルフって呼んでいるんだ」
「もう! リィゼって呼ぶだけで良いって言ってるでしょ!」と狙撃エルフがわめき始めた。
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ノベルバユーザー385074
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