挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)
狙撃エルフの切り札
死の前の高まった集中力。 周囲の様子は走馬灯の如き……酷く遅い。
だから、見えるのだろう。 俺が投げた椅子は歪に変化していく。
放たれた弾丸は鉄の部分ですら突き進み――――やがて貫いた。
回避と考える時間もなく、すでに俺の体は反応して動いていた。
しかし、推定秒速1000メートルの弾丸。
――――避けれるはずもない。
俺の行動は致命傷を防ぐための幸運まかせ。
僅かでも弾丸の軌道が変われば、僅かでも体の中心から離れた場所に当たれば――――
そして、その時は来た。
腹部に押し当てられた弾丸の熱さ。 それは、俺の腹筋は貫くと、そのまま内部へ入り込む。
弾丸の動きを認識できるほどに鋭敏となった感覚が憎い。
まだ痛みはなく、ただただ熱力で臓物と焼かれる苦しみ。
そして、突き進んでいく異物の気持ち悪さ。
弾丸が俺の体を出て行った時、走馬灯の時間は終わった。
・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
激痛。 意識を持っていかれるような激痛。
「うっ……」と俺の肉体は俺の意思を無視して、倒れかける。
「ご主人さま!」とメイドが駆け寄ってくる。
見れば、アイルとインターは俺を庇うように前に立っている。
ダメだ。 弾丸が人の肉なんて簡単に貫通する。 俺を庇うなんて無駄だ。
そう叫んだつもりだったが、内臓のダメージが原因で口内からは声の代わりに吐血がばら撒かれた。
  痛みが極限までに高まった集中力を四散される。
――――だから気づけたのかもしれない。
それは戦いとは無関係な所だった。
捕縛されたまま床に転がる狙撃エルフ。 彼女の口が動いている。
(どうしてこんなマネを? ジュン?)
ジュン? それが狙撃者の名前? いや、そんなことよりも――――
彼女はどこを見ている?
何を見ている――――否。 彼女には見えているのだ。
カチリと歯車が噛み合うような幻聴が脳を揺さぶる。
断言しよう。 2キロの狙撃……それが可能なのは狙撃エルフだけだ。
彼女が狙撃したのは最初だけ……確かにそう言っていた。
なら、2発目や3発目はどうやって、どこから撃っていた?
2キロ先の時計塔から遮蔽物はどこにも存在していないのに?
ならば答えは簡単だ。 俺は砕けた椅子の破片と拾い、それから投げた。
投げた先は狙撃エルフの視線の先。
しかし、投擲した破片は何も当たらず、窓から外へ落下していく。
「けど――――その力を持って敵を穿て 真紅の稲光 」
回避した場所はわかる。狙撃エルフの視線を読めばな!
空中で俺の魔法が何かと接触したように燃え上がり眩い光を発する。
それと同時に聞こえてくるのは叫び声。魔法の直撃を食らった狙撃者の叫び声だ。
髪と肉が焼ける異臭。やがて――――
燃え上がる炎が勢いを失い始めると人影が浮き出てきた。
「姿を消す光学魔法……最初から近くから狙撃していたんだな」
おそらく光学魔法と飛翔魔法の併用。 姿を消して、100メートル付近で撃っていたのだろう。
魔力の炎が消え去り、姿を現したのエルフだった。 しかし、狙撃エルフとは違う小麦色の肌。
「……ダークエルフか」
ポツリと呟いた。 それが、彼女の精神にどのように作用したのだろうか?
禍々しい悪意に満ちた視線を向けてくる。 手には焦げたナイフを持っている。
全身と焼かれ、今だ戦意は衰えていないようだった。
しかし――――
「ジュンちゃん、どうして?」
狙撃エルフの声。 それに反応して彼女の戦意がブレて見えた。
「ただのいたずらで、少し懲らしめようって話だったじゃない? さ、流石にやり過ぎだよ? でも、でも、まだ謝れば……」
「いたずらなわけないでしょ!」
ダークエルフはピシャリと言い放った。
「最初の目的はアンタだったのよ」
「わ、私? 目的って何?」
「アンタは自分の価値がわかってない。 仮にも勇者パーティの一員。殺してくれって人間は山ほどいるのよ。……それも良い金でね」
「そんな……そんな理由で2年も一緒にいたの? そんなわけないよね?」
「えぇ、アンタを殺す前に、アンタの狙撃技術が欲しかったのよ」
「狙撃……技術?」
「えぇ、まさか技術なんてなくて、感覚と魔法頼りに撃ってるとは思わなかったけどね…… アンタを殺した後にアンタに成り代わるって選択肢もあったのよね」
「そんな――――」と絶句する狙撃エルフ。
ダークエルフはそれを見て愉快そうに笑う。
「でも、アンタの話しを聞いて考え方を変えたのね……アンタより勇者を殺した方がおいしいってね!」
そのまま、俺に向けて突進をしてくる。片手にはナイフが――――
「ダメッ!」
いつの間にか椅子に縛られていたはずの狙撃エルフが2人の間に飛び込んでくる。
そう思った次の瞬間――――
狙撃エルフはナイフを持っている腕の手首をキャッチ。
地面から離れた狙撃エルフの両足はダークエルフの腕を挟むように絡ませ――――
2人が絡み合い、地面に倒れた時には完結していた。
腕十字固め。 それも――――
ビクトル式飛びつき腕十字固め。
だから、見えるのだろう。 俺が投げた椅子は歪に変化していく。
放たれた弾丸は鉄の部分ですら突き進み――――やがて貫いた。
回避と考える時間もなく、すでに俺の体は反応して動いていた。
しかし、推定秒速1000メートルの弾丸。
――――避けれるはずもない。
俺の行動は致命傷を防ぐための幸運まかせ。
僅かでも弾丸の軌道が変われば、僅かでも体の中心から離れた場所に当たれば――――
そして、その時は来た。
腹部に押し当てられた弾丸の熱さ。 それは、俺の腹筋は貫くと、そのまま内部へ入り込む。
弾丸の動きを認識できるほどに鋭敏となった感覚が憎い。
まだ痛みはなく、ただただ熱力で臓物と焼かれる苦しみ。
そして、突き進んでいく異物の気持ち悪さ。
弾丸が俺の体を出て行った時、走馬灯の時間は終わった。
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激痛。 意識を持っていかれるような激痛。
「うっ……」と俺の肉体は俺の意思を無視して、倒れかける。
「ご主人さま!」とメイドが駆け寄ってくる。
見れば、アイルとインターは俺を庇うように前に立っている。
ダメだ。 弾丸が人の肉なんて簡単に貫通する。 俺を庇うなんて無駄だ。
そう叫んだつもりだったが、内臓のダメージが原因で口内からは声の代わりに吐血がばら撒かれた。
  痛みが極限までに高まった集中力を四散される。
――――だから気づけたのかもしれない。
それは戦いとは無関係な所だった。
捕縛されたまま床に転がる狙撃エルフ。 彼女の口が動いている。
(どうしてこんなマネを? ジュン?)
ジュン? それが狙撃者の名前? いや、そんなことよりも――――
彼女はどこを見ている?
何を見ている――――否。 彼女には見えているのだ。
カチリと歯車が噛み合うような幻聴が脳を揺さぶる。
断言しよう。 2キロの狙撃……それが可能なのは狙撃エルフだけだ。
彼女が狙撃したのは最初だけ……確かにそう言っていた。
なら、2発目や3発目はどうやって、どこから撃っていた?
2キロ先の時計塔から遮蔽物はどこにも存在していないのに?
ならば答えは簡単だ。 俺は砕けた椅子の破片と拾い、それから投げた。
投げた先は狙撃エルフの視線の先。
しかし、投擲した破片は何も当たらず、窓から外へ落下していく。
「けど――――その力を持って敵を穿て 真紅の稲光 」
回避した場所はわかる。狙撃エルフの視線を読めばな!
空中で俺の魔法が何かと接触したように燃え上がり眩い光を発する。
それと同時に聞こえてくるのは叫び声。魔法の直撃を食らった狙撃者の叫び声だ。
髪と肉が焼ける異臭。やがて――――
燃え上がる炎が勢いを失い始めると人影が浮き出てきた。
「姿を消す光学魔法……最初から近くから狙撃していたんだな」
おそらく光学魔法と飛翔魔法の併用。 姿を消して、100メートル付近で撃っていたのだろう。
魔力の炎が消え去り、姿を現したのエルフだった。 しかし、狙撃エルフとは違う小麦色の肌。
「……ダークエルフか」
ポツリと呟いた。 それが、彼女の精神にどのように作用したのだろうか?
禍々しい悪意に満ちた視線を向けてくる。 手には焦げたナイフを持っている。
全身と焼かれ、今だ戦意は衰えていないようだった。
しかし――――
「ジュンちゃん、どうして?」
狙撃エルフの声。 それに反応して彼女の戦意がブレて見えた。
「ただのいたずらで、少し懲らしめようって話だったじゃない? さ、流石にやり過ぎだよ? でも、でも、まだ謝れば……」
「いたずらなわけないでしょ!」
ダークエルフはピシャリと言い放った。
「最初の目的はアンタだったのよ」
「わ、私? 目的って何?」
「アンタは自分の価値がわかってない。 仮にも勇者パーティの一員。殺してくれって人間は山ほどいるのよ。……それも良い金でね」
「そんな……そんな理由で2年も一緒にいたの? そんなわけないよね?」
「えぇ、アンタを殺す前に、アンタの狙撃技術が欲しかったのよ」
「狙撃……技術?」
「えぇ、まさか技術なんてなくて、感覚と魔法頼りに撃ってるとは思わなかったけどね…… アンタを殺した後にアンタに成り代わるって選択肢もあったのよね」
「そんな――――」と絶句する狙撃エルフ。
ダークエルフはそれを見て愉快そうに笑う。
「でも、アンタの話しを聞いて考え方を変えたのね……アンタより勇者を殺した方がおいしいってね!」
そのまま、俺に向けて突進をしてくる。片手にはナイフが――――
「ダメッ!」
いつの間にか椅子に縛られていたはずの狙撃エルフが2人の間に飛び込んでくる。
そう思った次の瞬間――――
狙撃エルフはナイフを持っている腕の手首をキャッチ。
地面から離れた狙撃エルフの両足はダークエルフの腕を挟むように絡ませ――――
2人が絡み合い、地面に倒れた時には完結していた。
腕十字固め。 それも――――
ビクトル式飛びつき腕十字固め。
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