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挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)

チョーカー

アイルの装備 そしてダンジョンへ

 アイルは妥協した。 普段の服装から、大きく変わらない軽装の防具。

 まずは普段着……と呼ぶには少し派手すぎると思う。 これは、そのままにする事にした。

 次にマフラー。 もちろん、普通のマフラーではない。

 素材は特殊な金属。 それを上級錬金術師が繊維状に加工したものを編んだマフラーだ。

 その硬度は鋼鉄と同レベルのものだ。 しかし、注目すべきは高い防御力ではない。

 持ち主の精神波に反応して形状が変化する。 この効果によって、いざと言うときには昆のような武器として使用できる。

 また精神波が浸透しやすい性質上、本来は物理攻撃を無効化する亡霊系アンデットのモンスターにも有効打を与えることが可能。
 
 
 そして、ブーツ。

 幻想獣である一角獣ユニコーンの革を素材にしたブーツだ。

 一角獣と言えば、清い女性を好むイメージではあるが、その反面、気高く攻撃的な幻想獣である。

 その獰猛さ。僕らの世界では、キリスト教で有名な七つの大罪では『憤怒』の象徴である。

 それは、こちら側――――異世界でも同じらしく、装備者の感情に応じてステータスを向上させる効果がある。 ……もちろん、女性限定の効果だ。

また、解毒の象徴である一角獣の角の影響で耐毒能力もある。

 
 最後に胸当て

 これに関して、本当にただの胸当てだ。

 宝物庫でアイルのサイズに合う装備がなかったのだ。

 マフラーはともかく、ブーツに関してはメイドが一晩でサイズを合わせたのだが、流石に金属の加工は無理だった。
 
 仕方がなく、早朝から懇意にしている商人に訪ねて、子供サイズの胸当てを譲ってもらった。

 それらを身に着けたアイルは――――


 「うん、思ったよりは悪くないわね」と辛辣なコメント。

 しかし、その辛辣さとは裏腹に、鏡の前でクルクルと回転している。

 案外、気に入ったのかもしれない。


 「それで、アンタはその格好なの?」

 「ん?」と俺は改めて自分の格好を見直した。

 普通の服装。と言っても貴族基準の普通だ。


 「あぁ、これでも普通の防具より防御力が高い素材が使われているからね」

 「そうなんだ。 あんなにも装備は重要って言っておきながら、自分は普段着で行くのかと思ったわ」


「言ってろよ」と俺は笑った。

「ダンジョンは準備しても準備し過ぎることは無い。眼を閉じて想像してみろ」

アイルは素直に瞳を閉じた。


 「光源はあるものの、薄暗い視界が利かないダンジョン。足場も酷く悪い。激しく動けば足をとられて転倒する可能性もある。さらに悪意のある罠の数々。 油断をした途端に影から奇襲をしてくる複数のモンスターたち」

 どのような感情を抱いたのだろうか? ゴクリとアイルは喉を鳴らした。


「ダンジョンでは戦闘は通常の戦闘と比べて難易度が跳ね上がる。それは慣れである程度は抑えれるが、初心者のお前には脅威になるだろう」

 半分、脅かすように言った。しかし、半分は事実だ。

 それをきいたアイルは――――

 
「上等じゃない! むしろ興奮してきた!」


 見ればアイルの膝は震えていた。 しかし、それは恐怖心から来ているものではなく、本人の言うとおり武者震いなのだろう。


 ・ ・ ・

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 そして出発の直前。 屋敷の前。

 「やはり、私も同行すべきではないでしょうか?」

 突然、同行を申し出てきたメイド。 

 アイルからは視線で「ちょっとお宅のメイドさん、過保護過ぎじゃありません?」と伝えてくる。

「さすがに心配し過ぎだ。 アイルの初めてのダンジョン探索に無茶はしないさ。簡単に1層周辺を回って帰ってくるよ」

 「わかりました。差し出がましい事を……申し訳ありませんでした」


 そんな一悶着もあったが、俺とアイルはダンジョンに向けて出発した。

 ダンジョンは町から歩いて30分程度の場所。

 徒歩30分。 どうしてだろうか? 現役冒険者だった頃には苦にもならなかった距離なのに、今では非常に億劫に感じられる。

 というわけで移動手段は従者が操る馬車だ。 これならダンジョンまでの到着時間を3分の1まで短縮できる。

 やったね!

 しかし、ダンジョンに近づくにつれ、早朝にも関わらず冒険者とすれ違う回数が増えてきた。

 そしてダンジョン到着。 こんな所に馬車で来るのが珍しいのだろう。かなり好奇の目で見られる。

 意を決して馬車から出るとどよめきの声が聞こえる。


 「まさか、あの方は……」

 「本当だったのか、復帰されるという噂は」

 「弟子と取ったらしいからな。自ら率先してダンジョンへ向うのだろう」


 賞賛の声。

 それは俺に取ってプレッシャーだった。だから俺は――――

 そのタイミングで誰かがポンポンと肩を叩いた。

 振り向くと、そこにはアイルがいた。

 どうやら、馬車の段差を利用して、身長差を埋めたらしい。

「アンタの過去に何があったのか知らないけど、今日が私のデビュー戦なのよ。今は私を指導しなさい……我が師マイマスターよ」 


一瞬、呆気に取られた俺だったが―――― 


「そうだな。文字通り、立ち止まっている場合じゃないな」


俺はアイルに道を空け、それから「お手をどうぞ。お嬢様」と手を伸ばした。

「悪い気分じゃないわね」と俺の手を取るアイル。

「それじゃ行きましょう。 いざダンジョンへ」
 

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