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挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)

チョーカー

 冒険者ギルドでの振舞い

 朝の訓練も終わり、俺はアイルを連れて冒険者ギルドに向う事にした。

 もちろん、アイルを冒険者として登録するのが目的だが…… 

 俺と会うまで、彼女は冒険者に喧嘩を売ってまわっていた。

 彼女の被害者も冒険者ギルドに普通にいるはずだ。

 冒険者になる以上、何らかの形で謝罪や賠償を支払わなければなるまい。


 「っておい! 何してるの! 裏口から入るって事前に言っただろ!」


 眼を離した隙にアイルはギルドの正面入り口から堂々と入っていった。  

 慌てて、後を追ってギルド内部に入る。

 しかし、時すでに遅し。

 誰かが「アイツ、冒険者狩りだ!」と声を上げていた。 

 それが引き金となり、冒険者たちの全員がアイルを凝視する。

 それらの視線を集めた当の本人は、不遜な態度で笑みすら零れ落ちていた。
 
 まるで、いたずらが見つかった子供のような笑みだ。


 「……冒険者狩りなんて二つ名がついてるのかよ」


 場違いな俺のツッコミに誰も反応しない。

 剣呑な雰囲気がギルド内を支配する。

 それすら楽しんでいるようなアイルは、その場から飛翔した。

 魔法ではなく、身体能力での大ジャンプ。 ギルド内で中心に設置されているテーブルに着地した。

そこは冒険者でも有力者が優先的に座るような席だ。

今も、席に着き、下からアイルを見上げている冒険者パーティはこの町で2番、3番くらいの実力者たちだ。

しかし、彼らもアイルが魔法ではなく、単純な脚力での跳躍だと気がついているのだろう。

あまりにも無礼なアイルの行為だあるが…… すぐさま抗議さず、むしろ警戒心を強めている。

それを満足そうな顔で確認したアイルは――――


「初めまして冒険者さま。私はアイル。アイル・D・スタンピング」

まるで演劇の一幕のように恭しく頭を下げる。

静寂が訪れた。 ある種、幻想的な立ち振る舞いに冒険者たちも口を閉じた。


「さて――――

 いつしか、私は冒険者狩りなどと言う二つ名を授からせていただけました。どうして、そのような名前をつけていただけのでしょうか? ……そうです。私が冒険者を襲ったという話が広まったからです。しかし、考えてみてください。 なぜ、私のような年幅いかぬ年齢の女性が屈強な冒険者さまたちを襲うなんて事がありましょうか? 

 いえいえ、私が冒険者さまに意図せぬ怪我を負わせてしまいましたのは事実でございます。

  ――――しかし、しかしですよ。
 
 もちろん、それには理由というものがあります。 

 その理由とは――――

 そう、私は尋ねただけのでございます」


 アイルの人差し指は真っ直ぐ、俺に向う。


 「そこに居られます早風教雅さまにどうすればお会いする事ができるのでしょうか?

 私はそう尋ねただけでございます。しかし、しかしどうでしょうか?

 彼らは皆、私を笑い、あまつさえ―――― そうあまつさえ、私をハエのように振る払う輩まで居りました。 

 その時、抱いた私の感情はご理解いただけますか?」

 それだけ言うと再び恭しく頭を下げるアイル。

 その様子をみた俺は――――

「馬鹿な……ありえない」と思わず呟いた。

例え、どのような理由があれアイルが行った行為は許されるものではない。

だが、脳が甘く痺れるような感覚。 いつの間にか、アイルの姿に見入っている俺がいる。

……いや、俺だけではない。

ギルドにいる冒険者たち全員から剣呑な雰囲気は消え去り、アイルを称えるような表情を見せている者すらいる。


・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

場所は移って、ギルド内の個室。 待合室のような部屋だ。

新しく冒険者として登録した者には簡単な書類審査がある。 その待ち時間に使える部屋。


「一体、何をしたんだ?」


俺は先ほどの出来事を尋ねた。

アレから、誰もアイルに対して訴えようとしない。 それどころか、宗教団体の信者が教祖さまをみるような眼でアイルを見ている者すらいる。

「説明は難しいのよね。 昔から私できるのようね」

「できる? 何をだ?」

「あぁ、やって怒っている人の説得」


「いや、絶対にアレは説得じゃないだろ」と俺は言いかけた言葉を飲み込んだ。

何をしたのか? アイル自身にも分かっていないのという事だ。

もしかしたら、彼女固有のスキルなのかもしれない。

スキルというのは、日本語だと技術と訳される言葉だが、この世界では単純な技術という意味では使われない。

魔法と違う特殊な力。 俺もこの世界に来て10年以上は経過しているが、いまだに感覚的に理解しているだけで、うまく他人に説明することはできない。

魔法が魔力を消費して、特殊な事柄を引き起こす現象とするなら、

対してスキルは、状況に応じて自動的に発動、あるいは常時発動される特殊な現象と言えばいいだろうか?

ちくしょう、やっぱり説明は難しいな。

要するに特殊なスキルを持った人間は、そこにいるだけで特殊な現象を引き起こしてしまう……ある意味では体質のようなものだ。

例えば……本番に強い人間や金運の強い人間がいるだろう?
 
スキルってのは、それの凄く特殊なバージョンだと思ってもらえればいい。

俺の知ってる奴は、100日中99日は幸運が続き、翌日は尋常ではない不幸に見舞われるなんてスキルを持っていた。

しかし、間もなくすれば、アイルがスキルを保有しているのかわかる事になる。

冒険者ギルドに登録されれば、ステータスの把握が可能になる。

ステータスにはスキルの詳細が書かれることになっているからだ。

そして、扉は開かれギルドの職員が…… いや、現れたのは職員だけではなかった。

職員の後ろからギルマスとサブギルマスと2人も現れた。

……この時点でアイルのステータスが異常なものなのだろうと簡単に予想はついた。



 
 
 

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