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挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)

チョーカー

冒険者ギルドの雑務

 俺は冒険者ギルドの中に入った。

 一斉に冒険者たちの視線が集まり、先ほどまでうるさかった騒音が嘘のように静まり返った。

 冒険者たちの瞳に浮かぶのは憧れ。それから少しばかりの嫉妬。

 俺が来るといつもこうなる。 元冒険者の貴族なんていくらでもいるだろうに……

 そんな様子に気がついたのは副ギルドマスターだった。 

 サブギルドマスターとも呼ぶ。 略してサブギルマスだ。
 

 「あら、キョウさんご無沙汰しています」


 たったったっ……とリズミカルな足音を鳴らして近づいてきた。

 彼女は元受付嬢であり、俺の担当だった。

 もしかしたら、若くしてギルドの副マスターまで出世したのは俺のおかげ……なんて自惚れても手前味噌ではあるまい。

 しかし……


「相変わらず、お若いですね。サブギルマス」


俺と出会ってから10年以上経過しているのが嘘みたいな若さだ。

どんなアンチエイジングをしているのか? いや、もしかしたらエルフみたいな長寿の種族のハーフやクォーターなのかもしれない。

「あらあらキョウさん。それだと、まるで私が若作りが凄いみたいな言い方じゃありません?」

ゴゴゴゴゴゴ……と背後に文字が見えるような威圧感。

元受付嬢の前に何らかの戦闘職として訓練を受けた人間のソレだ。

過去の経歴を聞いたわけではないが……若い頃は、相当ブイブイと言わせていたのだろう。


「また変な事を考えていますね!」とサブギルマス。

頬を膨らませながらも「それで本日は、どのようなご用件でしょうか?」と営業スマイルを見せた。


「いや、ギルドマスターに呼ばれた……というか、第三者委員会っていう天下りでお情けの名誉職の仕事だ」


「また、自分を卑下するよな事を言うのは、例え冗談でもよくありませんよ。キョウさんは、このギルドの出世頭で皆さんの憧れなのですから」

「憧れ……ね」と俺は呟いた。

リタイヤした俺が今も憧れ続けてる人間がいるって事は……
 
挫折した俺に取って愉快な話ではない。

いけない。自分を卑下するなと言われたばかりじゃないか。


「それでは、マスターの部屋まで案内いたしますわ」


サブギルマスに言われ、俺は雑念を振り払った。


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白く長い髪とヒゲが印象的なギルドマスター。彼は当たり前のように自室にいた。


「キョウさん、お待ちしました。コチラにお座りください。飲み物もすぐにご用意いたしますので暫しのお待ちを」


天下りの名誉職ってのは冗談で言ったわけではない。

部屋でする事は簡単な雑務と世間話だ。

あーでもない。こーでもない。なんて非生産的な話を繰り返し、自分たちは知的な会話を楽しめる優秀な人間であるという事を錯覚するための作業。

話題が終わりかけた時、ギルド前で起きていた騒動を思い出した。


「そう言えば、俺の事を聞きまわって、冒険者に喧嘩をふっかけている奴がいるらしいね」


ギルマスはピクリと眉は上げた。それから深く頭を下げた。


「恥ずかしながら、内々で処理できずにキョウさんのお耳を汚す事になり、申し訳ありません」

「いや、構わぬさ。たまたま、ギルドの前で、そういう喧嘩を見ただけだから……」

「なんと!」とギルマスは声を荒げた。

「このワシのお膝元で、堂々と冒険者に喧嘩を売るなどと!」

「あぁ、それも冒険者が数人がかりで戦ってボロ負けしてたぞ」


「ぬぐぐ!」と顔を真っ赤にするギルマス。 このままだと憤死するかもしれないくらい怒っている。

「気にするな。どうせなら、俺の住まいを教えてやれ」

「それは……冗談ですかな?」

「いや、どうせ隠れ住んでいるわけでもない。下手に教えず冒険者が怪我をする方がつまらないだろ?」

「それは、随分と豪快ですな」とギルマスは笑った。

話は、そこで終わり。 雑務も終わりとなった。

そして、冒険者ギルドを出た俺は、何者かに襲われる事になった。





 





 

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