〈並行時空戦争 ─parallel war〉

臼井 リト

第一章 転移

 ロマンチックさの欠片もなく、それは唐突におこる。
 どデカイ魔方陣が出現するわけでもなく、目の前に突然美少女が現れるわけでもなく……
 俺/天宮奏(あまみや かなで)がトイレでンコをしていたとき、瞬きをした瞬間見慣れぬ場所に座っていた。
「うおぉぉぉぉ!なに!?何事!?」
 まあ、当たり前のように驚く俺。
 やばい。怖ぇ。なに、どういう……!?……いや、まて。落ち着け俺!!焦っても何にもならん!!
 そう思い、深呼吸を二回。
「すーはーすーはー……ふう。落ち着いたな?」
 そうして俺は状況を把握しにかかる。
 ……まず、俺はトイレにいたよな?そんで…その格好のまま、このわけのわからんところにとばされ───お、まさかの今流行りの異世界転生!?この俺にもついにハッピーライフが!?
 目を輝かせながらガッツポーズをする俺。
 そんなふうにしていたためか、まわりから突き刺さる物の存在に気づくのが遅れてしまった(と願いたい)。
 そして、ようやく俺は遅まきながら今の本当の状況を把握することになる。

 ────ん?……なんだ、この冷たい視線は?それとほのかな土のかをりが……
───んん?視線?
「─────」
 このときのことを、俺はマジで後悔している。
「ここ、公園じゃねぇかぁぁーー!!!」
と、なかなか広い公園に俺の断末魔が響き渡った。

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