夏着物のすすめ

増田朋美

夏着物のすすめ

いよいよ夏本番!と言える季節がやってきました。これから、毎日べたっとした蒸し暑さが続くのでしょう。そうしてしばらくしたら、カーっと暑くて、まるでフライパンの中にでもいるような感じになるんでしょうね。
其れこそ夏です。子供のころ、夏はとっても素敵だななんていう歌をよく歌っていたのですが、もははや素敵だなどころか、本当に苦しいなと言わざるを得ません。ほんとこればっかりは、いくら口で言っても変わることはありませんが、でも口にしてしまう言葉です。
そういう夏ですが、タンクトップにショートパンツという服装もあるんでしょうけど、私は夏こそ、本当に着物が役に立つのではないかと思います。とはいっても、袷のいつも着ている着物ではなくて、夏専用の着物というものがあるのです。そりゃ、誰だって、夏に袷の着物を着たら暑くなります。其れは当たり前。そうじゃなくて、夏専用の着物という物を着用するんです。
まず、夏の着物の代表選手と言えば絽。横一列に穴が開いたように見える不思議な織物です。実はこの穴から風が入ってきて、非常に楽なんですよ。しかも絹だから、光を吸収する生地ですので、日焼けの心配もない。
絽は、穴と折り目の間隔により、三本絽、五本絽、七本絽、九本絽、などあります。数が小さくなるほど、隙間の数も多くなり、より暑いときに着用するようになります。今の大変な猛暑には三本絽か五本絽がおすすめですね。それに絽の着物は軽いので、ほかの着物のような動きにくさをあまり感じないところもよいところだなと思います。穴が開いて薄い生地という事もあり、かなり透けて、長襦袢の柄が見えてしまうこともありますので、そこは見せないように注意が必要ですが、其れさえまもれば、結構涼しくて気楽に過ごすことができますよ。
着物は暑くないかと聞かれますが、実際のところ洋服より涼しく感じます。これは、袖の形や衣紋を抜いて着るところなど、直接触れるところが少ないからですね。ズボンなんかは足にべったりくっついていて、非常に暑苦しいということもあるけど、着物はそれがないので、其れが涼しさを演出させてくれます。
絽は、どちらかと言えば、コンサートや外食と言った、外出用として着用される着物ですが、普段着として夏に着物を着るのなら、紗がおすすめです。これは大昔、4世紀ごろに、中国から渡来しいた織物を、改造したもの。日本人のまね好きは、このころから始まっていたようです。
こちらは、穴は開いておりませんが、やはり薄い生地で、全体的にすけます。なのでやっぱり長襦袢の柄には注意ですが、カジュアルな着物だからでしょうか、なぜか派手な長襦袢を着てわざと見せている人も多いです。ウーン、昔はやってはいけなかったそうですが、時代が変わったのかなあ。
紗の場合、穴は開いておりませんが、全体的に透ける生地ですから、やっぱり涼しい。それに、同じ着物ですから、着方は絽と変わりません。普段着から礼装まで全部同じ着方で通せるところ。これも、着物のすごいところなんでしょうね。私はそう思います。
ちょっとおしゃれをしていきたいときは絽、気軽に着てみたいなら紗、二つの夏着物をどうぞ楽しんでみてください。夏に対する思いが変わってくるのではないかと思います。

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