電気使いは今日もノリで生きる

歩海

魔獣の攻略法

神無月一週目水曜日


「復活とかありかよ」
「面倒だな」
『これもう蛇の結合部分をたたっ切った方がいいかもね』


イフリートの案でいいのだろうけど、ちょっと問題があって、どうやって接近するのかってところだよな。隠密魔法を使えるのはクレアだけだけどクレアの方法だと多分バレてしまうんだよな


「なんで?」
「蛇って確か匂いとか体温とかで居場所を探すことができるんだよ…つまり視覚情報に頼りきりじゃないってこと」


目を瞑るだけで人間の感知能力が大幅に減少することと比べるとかなり痛い。まあ感知魔法に慣れてきたからある程度は問題ないんだけどさ。それは置いといて、さすがに蛇の感知をかいくぐって接近するのはほぼ無理だろうな。


「一応隠密使ってみるか?」
「余計な魔力消費は避けようぜ」
『もう捨て身で突っ込む?』


いや、それはさすがに最終手段。もう何もできることがなくなったときに使いましょう。それまでは


『どうするの?』
「いろいろと試してみるよ『地雷trap』」


強力な静電気を発生させたら蛇たちの動きが一瞬だけどひるんだ。うん、これは人間以外にも効くみたいだ。それに敵はかなり図体が大きいし、狙いが着けやすい


「助かる『炎の剣』」


クレアが大量の剣を生み出しそれを蛇の首に次々と突き刺していく。そして


「『発火』『精霊の灯火』」
「まじかよ」


それらが爆発して燃える。再生が始まらないということはあれイフリートの魔法?今ので5匹分が戦闘不能になったんだけど


「そんな手があるなら先に言ってくれよ。初手で『地雷』を使ったからさ」
「いや…今思いついた」
「今かよ」


まさかの即興魔法。確かに今まで『発火』はクレアが持っている剣を投げてそれを起点にしたり僕の電撃を媒介にして発動させていたけど言われてみれば自分の魔法でも使えないはずがないんだよな。でも、一気に半分片付いた。また再生を始める前に…


「あの後ろに下がった首を狙おう」


地面を強く踏んで飛ぶ。そして上から…ああ、当然のように襲いかかってくるのは全部『領域』で吹き飛ばして…奥にいる、さっき他の蛇を食べていた首を狙う。多分あれが再生の役割を担っているんだろう


「『放電thunder』」


狙いは命中。クレアの方にも何匹かいっていたので障害も少なく、当てることができた。よし、これで再生は…


『まあ、こうなると思ってたけどね』


他の首が食べても復活するんかい。なんで?役割をちゃんと分担していたんじゃないの?他の首でも大丈夫なの?


『まあそれだとあの首が殺されたら終わりでしょ?一応の役割だけ決めておくけどどの首でも問題ないわよ…だって治療しているんじゃなくてそもそもの首が再生しているんだし』


そうだった。うっかりしていたよ。喰べることで火を消してそして回復だから別にどの首が喰べたとしても全く問題がないんじゃないか。


「なら一度に全部の首を切れば良いのかな」
『それができればの話ね』


さすがに無理だろうな。となれば蛇の後ろに行くことができればいいんだけど…地上から進めば絶対に気がつかれるだろうな。いや、いっその事


「ちょ、ミライ!?」


地面を勢い良く蹴って向こうがわまで突っ切ることができるか試してみる。首たちは多分クレアがなんとかしてくれるだろうから対応は最小限にして突っ切ることだけを考える。当然蛇たちも気がついたようで僕の進路を妨害するように進んでくる


「『炎の剣』」
「『放電thunder』」


ほら、やっぱり援護してくれた。全部とはいかなかったようでそれでもまだ立ちふさがっている首は電撃で吹き飛ばす。よし、これで多分抜けt…


突然、目の前に蛇の胴体が見えたと思ったら、思いっきり吹き飛ばされてしまった。え?いや、僕確かに抜けたと思ったんだけど


『一匹の蛇に阻まれたわ…胴体で思いっきりぶつかってきたの。どうやらあなたの速度では余裕で感知することができたみたい』


まじか。まだ速度が足りなかったか


『でも今のタイミングで「metamorphose」を使えば抜けれたわよ?どうしてしなかったの?』
「あんまり使いたくないんだよ」


そもそもの魔力消費量とかが大きすぎるのか一回のというか一日に使用できるのはせいぜい3回まで。あれ電気の状態から人間に戻るのってかなりのエネルギーを使うからね。それからあれを使った影響で僕は一度記憶を失っている。それで悲しませた人もいるし…救えなかった命がある。今は大丈夫だとしてもそれでもホイホイ使いたくない。


『そういうものなのね…あ、それなら空中から回り込んでみたら?二人で協力して』


え?それってつまり『電気鎧armor第四形態force』を利用して空から進むってことか。そんなことをしたところで意味ないと思うけどなぁ


『でも鳥類って蛇にとって天敵でしょ?試してみましょうよ。どうせ「領域」を使えばなんとかなるでしょ』
「身も蓋もねえ」


それを言ってしまえばおしまいだろうに。ようは蛇の向こう側に行けばいいんだ…あれ?


「それなら一気に突っ切った方が良くない?」
「あーわかったかも」


そして僕らは互いに拳を突き出しあって互いの魔力を行き渡らせる。あと準備しなければいけないことは…


「とりゃっ」


勢い良く地面に足を差し込む『少しやりすぎじゃない?』いや、ここまでしっかりと支えておかないと僕自身が吹き飛ばされるかもしれないからね


「それじゃ、いくよ『加速ブースト』」
「おう…『磁石magnet』」


磁石で反発するようにしてクレアを吹き飛ばす。それと同時にクレアが足でしっかりと地面を強く蹴って加速していく。僕は反射で吹き飛ばないようにしっかりと地面に足を突き刺して耐える。僕とクレアが入れ替わったとしても問題なかったけどまあ、クレアの方が精霊の炎で焼けるし適任かな。僕一人で出す速度では捕まってしまうだろう。でも、二人で協力したならば、きっと、蛇が反応する前に突き抜けることができるはずだ。


「もちろん、サポートは忘れないよ『地雷trap』」


もう一度蛇たちを麻痺らせる。二回目ということで、少し耐性がついてしまったのかさっきよりかは硬直時間が短い。でも、クレアが抜ける時間は稼ぐことができたと思う。


「抜けれたけど…尻尾の結び目ってどこにあるんだ?」
『え?あー…』
「とりあえず全部燃やすか『精霊の炎』」


蛇の向こう側で炎が燃え盛るのが見えた。うわークレアのやつ結構本気で燃やしているな。僕のところからでもしっかりと燃えているのが良く分かる。でも、ちゃんとアレで尻尾を切り落とせるのか?


『見つけた!そこよ…ミライもタイミング合わせて』
「僕も見えた!『炎の剣』」


タイミングを合わせるってどうするんだよ。まあ言いたいことはわかるけどさ…あーもしかしてアレか。普通に切るだけだと切り落とすことが難しいから爆発を加えることでなんとかする的な


「ま、イフリートが言っているのなら間違いないんだろう『遠隔起動remote』」
『よし、結合部分を切り離せたわ…これでバラバラになるはずよ』


そして、バラバラになった蛇たちは…バラバラになったことでパニックになることなく、それぞれがそれぞれで僕たちに攻撃しに向かってきた。

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