電気使いは今日もノリで生きる
シェミン先輩の真実
長月二週目日曜日
「『土壁』」
「『創造』」
ハジキさんが作り出した壁を砂鉄の剣で切り裂いていく。以外と簡単に切り裂けるものなんだなぁ。
「甘い『硬化』」
「!」
突然斬ることができなくなった。何か硬い物質にぶつかったみたいだ。これは…おそらく性質をいじられたのかな。
「さっきから壁の後ろに隠れてばっかりで情けなくないのか」
「これも立派な戦術だよ。君の魔力切れを狙うってね」
『さっきのクスノキも魔力切れで勝ってるし戦術として間違っていないわ』
そうだったのか。でも、それが僕にも当てはまると思われているならそれは違うよ
「『感知』…そこか」
「感知魔法…厄介だね」
ひときわでかい壁のおく、そこにハジキさんはいる。さすがに慎重派だからフェイクを仕込んでいると思っていたけれどそんなことはなかったな
「『電気の領域』」
『領域』を展開して『創造』を強化。そして砂鉄を伸ばして壁の横から後ろにいるハジキさんを狙う。壁の横幅がそこまで長くないっていうのがありがたいな。
「まあそこから狙うよね」
「当然読んでいたわけですか」
あんまり手応えがなかったし普通に避けられてしまったか。近づいて見てみれば死角になる位置に土の壁が作られていた。なるほどね、横から回り込もうとした敵を一瞬怯ませるって感じか
「一旦整理しよう『解除』からの『爆発』」
爆発で壁を一旦打ち砕く。これである程度平地になるので相手の姿を見ることができる。一応感知魔法は継続しているから完全に見失うなんてことはない
「『アリ地獄』」
「!」
突然、地面がぬかるんで足がもつれてしまった。いやぬかるんだといよりもどんどん沈み込んでいく感じがする
「くっ『電気の領域』…外れない」
『領域』で吹き飛ばすことができない。辺りの砂によって沈み込んでいるからなのか?もともとここにあったものだしな
「そのままなすすべなくやられるといいよ」
「ふざけんな…『変化』」
足は地面にロックされているけど上半身はまだ動くことができる。そのまま前後に揺れて反動をつける。そして勢いよく前に倒れるその瞬間に足を電気に変化させる。これでアリ地獄から抜け出すことに成功した。
「…そんな魔法があるなんてね」
「『放電』」
「ちっ」
油断してかなり近くまで接近してくれていたから大体の位置に狙って電撃を放ってみたけれど狙いがかなり甘かったみたいで普通に避けられてしまった。まあ感知魔法に頼っている状態じゃあまともに当てるなんてできっこないよね
「自分の体を変化させるとは…それが君の切り札か」
「…」
僕の切り札は『領域』なんだけどそれは黙っておくことにするか。この魔法はイヨさんのおかげでデメリットがなくなっているとはいえ乱発だけはしたくないんだよね。よっぽどのことがない限り
「『創造』」
「砂鉄の剣か…」
剣を構えながらハジキさんの方を見る。ハジキさんには電撃とかは多分だけどほとんど効かないだろう。だから物理攻撃で殴るしかないな
「うおおおおおお」
牽制の意味を込めて横に振り抜く。ハジキさんは慌てたようにしゃがんで回避する。でもその動きは愚策だ。僕は近づくことに成功した。まずは左手で殴る…いや、待てよこれは違う
「よく気がついたね…『起爆』」
「しまっ」
目の前のハジキさん…いや土人形が光ったと思うとそれが爆発した。何で…さっきまでずっとこの土人形から電気の気配がしていた。だから本人だと思っていたのだけど
吹き飛ばされながら僕はその原因を探す。なにか魔法が使われたのだとしたらまた同じような展開が起きる可能性があることは容易に想像できる。だからちゃんと原因を解明しておきたいんだよね
「うぐっ」
吹き飛ばされて地面を転がっていく。電気の鎧をまとっていたからかなり衝撃が緩和されている。爆発の熱による火傷とかも特にない。まだ戦える
「立ち上がるか…」
「はぁ…はぁ…」
「でも君の感知魔法の仕組みはかなり解明できたよ…君、ただの電気信号を感じているだけなんだね」
「…!!」
ばれた。ということはバレる原因が起きたはずだ。どこだ。どこで気がつかれたんだ…
「ふふふ、悩んでいるね。でもこれは勝負だ。自分の弱さを感じながら負けるといいよ『土の槍』」
「『電気の領域』そして『放電』」
「『避雷針』」
『領域』で防いだけどこちらの電撃も向こうの魔法によって防がれる。でもどうしてだ?どうして土の壁を生み出さないでわざわざ『避雷針』を使用したんだ?僕の今の電撃に何か細工がしてあるとでも思ったのか?いや、違う
「…」
感知魔法を解除。これは無意味だ。今まではまだ意味があったかもしれないが電撃を放ってしまった以上、電撃を吸収されてしまった以上、意味がない
「ふぅ…」
楠や天衣と違う、この人はただ単純に強いのではない、戦いの中で学んでいることを生かした戦い方をしている。これがこの世界で戦い続けている…いや、この学校のギルドマスターの実力か
「おや?顔色がかなり悪いけど?」
「余計なお世話ですよ」
「そうかい…でも心配だよ。すぐに治療をさせてあげよう『アリ地獄』『大地の鉄槌』」
「『電気鎧・第五形態』」
地面にまたはめられそうになったので沈み込む前に地面を強く蹴って脱出する。でも、それはハジキさんの狙いだった。
「うわっ」
空中に躍り出た僕が目にしたものは、巨大な人の形をした土の塊だった。土の巨人とでも言えばいいのだろうか。それが僕の目の前にみえてそして…僕に向けてその巨大な拳を振り下ろしてきた
「『電気の領域』」
『領域』を使って巨人を吹き飛ばす。今回の魔法なら吹き飛ばすことができたみたいだ。さっきのはどうして消すことができなかったんだろうか
「相変わらず厄介な魔法だね…あの女の差し金か」
「シェミン先輩は関係ない」
むしろ『領域』を最初に使うきっかけとなったのはシェミン先輩じゃなくてシオン先輩なんだけどね。
「そうかい?その不思議な魔法…あの女が教えたとしか思えないんだけど」
「どうしてシェミン先輩にそこまで固執するんですか」
本当ならあとでシェミン先輩に聞こうか…いやなんとなしにうやむやにしようかと思っていたけれども戦いで集中していたからなのかつい、反射的に聞いてしまった。僕は自分的に精神的に成長したのかと思っていたけれども自分はまだまだだったみたいだ。
「ああ、そっか。君は知らないんだね。彼女の正体を」
「え?というかさすがに言いがかりが過ぎるでしょ。シェミン先輩が何をしたっていうんだよ」
僕は戦うのをやめて…といってもハジキさんが何かしようとしたら対応できるぐらいの警戒はしておいて、ハジキさんの話を聞いていた。ずっと気になっていたということもある。だから、つい、聞いてしまった
「彼女は人間じゃない」
「は?」
だが、語られた言葉はこの世界に来て一番、意味がわからないものだった。
「彼女は、吸血鬼と呼ばれる生き物…その、生き残りだ」
シン…と静まり返ったこの場所でハジキさんの言葉が響いた。
「『土壁』」
「『創造』」
ハジキさんが作り出した壁を砂鉄の剣で切り裂いていく。以外と簡単に切り裂けるものなんだなぁ。
「甘い『硬化』」
「!」
突然斬ることができなくなった。何か硬い物質にぶつかったみたいだ。これは…おそらく性質をいじられたのかな。
「さっきから壁の後ろに隠れてばっかりで情けなくないのか」
「これも立派な戦術だよ。君の魔力切れを狙うってね」
『さっきのクスノキも魔力切れで勝ってるし戦術として間違っていないわ』
そうだったのか。でも、それが僕にも当てはまると思われているならそれは違うよ
「『感知』…そこか」
「感知魔法…厄介だね」
ひときわでかい壁のおく、そこにハジキさんはいる。さすがに慎重派だからフェイクを仕込んでいると思っていたけれどそんなことはなかったな
「『電気の領域』」
『領域』を展開して『創造』を強化。そして砂鉄を伸ばして壁の横から後ろにいるハジキさんを狙う。壁の横幅がそこまで長くないっていうのがありがたいな。
「まあそこから狙うよね」
「当然読んでいたわけですか」
あんまり手応えがなかったし普通に避けられてしまったか。近づいて見てみれば死角になる位置に土の壁が作られていた。なるほどね、横から回り込もうとした敵を一瞬怯ませるって感じか
「一旦整理しよう『解除』からの『爆発』」
爆発で壁を一旦打ち砕く。これである程度平地になるので相手の姿を見ることができる。一応感知魔法は継続しているから完全に見失うなんてことはない
「『アリ地獄』」
「!」
突然、地面がぬかるんで足がもつれてしまった。いやぬかるんだといよりもどんどん沈み込んでいく感じがする
「くっ『電気の領域』…外れない」
『領域』で吹き飛ばすことができない。辺りの砂によって沈み込んでいるからなのか?もともとここにあったものだしな
「そのままなすすべなくやられるといいよ」
「ふざけんな…『変化』」
足は地面にロックされているけど上半身はまだ動くことができる。そのまま前後に揺れて反動をつける。そして勢いよく前に倒れるその瞬間に足を電気に変化させる。これでアリ地獄から抜け出すことに成功した。
「…そんな魔法があるなんてね」
「『放電』」
「ちっ」
油断してかなり近くまで接近してくれていたから大体の位置に狙って電撃を放ってみたけれど狙いがかなり甘かったみたいで普通に避けられてしまった。まあ感知魔法に頼っている状態じゃあまともに当てるなんてできっこないよね
「自分の体を変化させるとは…それが君の切り札か」
「…」
僕の切り札は『領域』なんだけどそれは黙っておくことにするか。この魔法はイヨさんのおかげでデメリットがなくなっているとはいえ乱発だけはしたくないんだよね。よっぽどのことがない限り
「『創造』」
「砂鉄の剣か…」
剣を構えながらハジキさんの方を見る。ハジキさんには電撃とかは多分だけどほとんど効かないだろう。だから物理攻撃で殴るしかないな
「うおおおおおお」
牽制の意味を込めて横に振り抜く。ハジキさんは慌てたようにしゃがんで回避する。でもその動きは愚策だ。僕は近づくことに成功した。まずは左手で殴る…いや、待てよこれは違う
「よく気がついたね…『起爆』」
「しまっ」
目の前のハジキさん…いや土人形が光ったと思うとそれが爆発した。何で…さっきまでずっとこの土人形から電気の気配がしていた。だから本人だと思っていたのだけど
吹き飛ばされながら僕はその原因を探す。なにか魔法が使われたのだとしたらまた同じような展開が起きる可能性があることは容易に想像できる。だからちゃんと原因を解明しておきたいんだよね
「うぐっ」
吹き飛ばされて地面を転がっていく。電気の鎧をまとっていたからかなり衝撃が緩和されている。爆発の熱による火傷とかも特にない。まだ戦える
「立ち上がるか…」
「はぁ…はぁ…」
「でも君の感知魔法の仕組みはかなり解明できたよ…君、ただの電気信号を感じているだけなんだね」
「…!!」
ばれた。ということはバレる原因が起きたはずだ。どこだ。どこで気がつかれたんだ…
「ふふふ、悩んでいるね。でもこれは勝負だ。自分の弱さを感じながら負けるといいよ『土の槍』」
「『電気の領域』そして『放電』」
「『避雷針』」
『領域』で防いだけどこちらの電撃も向こうの魔法によって防がれる。でもどうしてだ?どうして土の壁を生み出さないでわざわざ『避雷針』を使用したんだ?僕の今の電撃に何か細工がしてあるとでも思ったのか?いや、違う
「…」
感知魔法を解除。これは無意味だ。今まではまだ意味があったかもしれないが電撃を放ってしまった以上、電撃を吸収されてしまった以上、意味がない
「ふぅ…」
楠や天衣と違う、この人はただ単純に強いのではない、戦いの中で学んでいることを生かした戦い方をしている。これがこの世界で戦い続けている…いや、この学校のギルドマスターの実力か
「おや?顔色がかなり悪いけど?」
「余計なお世話ですよ」
「そうかい…でも心配だよ。すぐに治療をさせてあげよう『アリ地獄』『大地の鉄槌』」
「『電気鎧・第五形態』」
地面にまたはめられそうになったので沈み込む前に地面を強く蹴って脱出する。でも、それはハジキさんの狙いだった。
「うわっ」
空中に躍り出た僕が目にしたものは、巨大な人の形をした土の塊だった。土の巨人とでも言えばいいのだろうか。それが僕の目の前にみえてそして…僕に向けてその巨大な拳を振り下ろしてきた
「『電気の領域』」
『領域』を使って巨人を吹き飛ばす。今回の魔法なら吹き飛ばすことができたみたいだ。さっきのはどうして消すことができなかったんだろうか
「相変わらず厄介な魔法だね…あの女の差し金か」
「シェミン先輩は関係ない」
むしろ『領域』を最初に使うきっかけとなったのはシェミン先輩じゃなくてシオン先輩なんだけどね。
「そうかい?その不思議な魔法…あの女が教えたとしか思えないんだけど」
「どうしてシェミン先輩にそこまで固執するんですか」
本当ならあとでシェミン先輩に聞こうか…いやなんとなしにうやむやにしようかと思っていたけれども戦いで集中していたからなのかつい、反射的に聞いてしまった。僕は自分的に精神的に成長したのかと思っていたけれども自分はまだまだだったみたいだ。
「ああ、そっか。君は知らないんだね。彼女の正体を」
「え?というかさすがに言いがかりが過ぎるでしょ。シェミン先輩が何をしたっていうんだよ」
僕は戦うのをやめて…といってもハジキさんが何かしようとしたら対応できるぐらいの警戒はしておいて、ハジキさんの話を聞いていた。ずっと気になっていたということもある。だから、つい、聞いてしまった
「彼女は人間じゃない」
「は?」
だが、語られた言葉はこの世界に来て一番、意味がわからないものだった。
「彼女は、吸血鬼と呼ばれる生き物…その、生き残りだ」
シン…と静まり返ったこの場所でハジキさんの言葉が響いた。
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