電気使いは今日もノリで生きる

歩海

電気vs風、決着

長月二週目火曜日


「どう?俺の魔法は…」
「いや、精霊の力がやばいだけだろ…でも結局僕の『領域』は打ち砕けてないよね」
「そうかな?それじゃあ」


またしても天衣に巨大な魔力が集まり始める。僕も準備をするか


「いくよ!『精霊の息吹』」
「くっ」


巨大な風の塊が僕をめがけて向かってくる。地面をえぐりながらこちらに進んできている。さて、普通ならここは真正面で受けるのが普通の人の行動なんだけど…


『ここで逃げたらあんただけでなく姫までも悪口の対象になりかねないわよ』
「…わかったよ」


これが普通の模擬戦ならば問題なかったんだけどギルド対抗戦だっていうのが辛い。多分だけど天衣のことを見にきているせいかやけに人が多い。僕だけが悪く言われるのならいいんだけどシェミン先輩までもが巻き込まれるとなればさすがにいやだな。ちらほら聞こえてくるし


「『電気の領域field』」


イフリートに突きつけられてしまったのでしかたなくだけど受けるしかないので僕は『領域』を発動して『精霊の息吹』を真正面から受け止める。


「ぐっ」


受け止めているんだけど他の魔法とは明らかに違う。クレアも同じように精霊魔法を放ってくるけど全部毎回毎回避けているからね。ゆっくりと、ゆっくりと僕は後ろに押されてしまってきた。直撃だけは避けているような感じだ。


「耐え切れ…ない」


そのまま思いっきり後ろに飛ばされる。『領域』が初めて負けた…でも『精霊の息吹』も消えたようで防ぐことに成功したみたいだ。


「うわっ、防がれた」
『二回目だから少し魔力が足りなかったようですね』
「一発目は避けてよかった…」


これで威力が落ちているんだっていうのなら最初の時は確実に押し負けていたじゃないか。確かに言われてみれば最初の時と比べたら地面がえぐれている幅が小さいような


「…ふぅ」
「どうやら魔力を大分使ったみたいだね」
「まあ…精霊の力を借りているからね」


そうなのか?クレアは何発も放ってきてるけどそんなに魔力を消費しているようには見えないんだけど


『いやクレアの魔力量とあの子の魔力量を比べたらダメよ。違いすぎる』
「あ、そうなんだ…なら、僕にとってチャンスだね『放電thunder』」
「『風』」
「まだ戦えるか…『創造craet』」


また砂鉄を集める。そして天衣に向かって振り下ろす


「『解除』」
「また粉塵爆発か…それは無駄だよ『風』」
「天衣の近くで解除するわけはないでしょ」


そう、確かに僕は粉塵爆発を巻き起こそうとした。でも天衣の近くでするわけがない。そんなに近くでしたってどうせ風を吹かせて失敗してしまうに決まっている。だから僕と天衣の間くらいで砂鉄をバラバラにした。


「『爆発dynamite』」
「なんで…」


そりゃまた土煙を発生させるに決まっているでしょうが。でもまた突撃したのでは芸がない。それにさっきのことが頭をよぎって警戒しているだろう。こちらは常に感知魔法を使っているから天衣の位置はわかる


『テンイ、あいつは移動をしていないみたい…動けばすぐに知らせます』
「ああ、ありがと」


やっぱり風の精霊が僕のことを監視していたんだな。それで僕が近づいて行ったので警告を発したと。だから少し遅れながらも対処することができていたわけだ。というか天衣のやつかなり魔力がやばいみたいだな。こんな煙、風で全部吹き飛ばせばいいのに


「『風の舞』」
「!!!」


地面から突風が吹き荒れる。まじかよここで魔法を放ってくるか。しかもこの視界の悪いなか正確に僕の居場所に狙ってきた。


「『魔弾・風』」
「ちっ間に合わない『放電thunder』」


上空に向けて電撃を放ち、突風を相殺する。そうすることで重力と合わさって僕は下向きに加速していく。そのままの勢いで地面に激突する


「なっ」
「『放電thunder』」


すぐさま天衣に向かって電撃を放つ。今回は『風』を使われなかったな。これは一撃当てることができたのか?…ん?天衣の位置が移動していないか?


「うおおおおお」
「まじかっ」


土煙のなかから天衣が飛び出してきた。そのまま僕に蹴りつけてくる。天衣の移動に気がついていたからそれを避けながら反撃をする。天衣が蹴った足は右足。なので左側に回り込みながら


「『電気鎧armor第五形態fifth』」


体に電気を溜め込み、右足を軸にして左足で天衣の顎を蹴り上げる。爆発の力によってそこそこの速度になっているしきっとそれなりの威力になるだろう


「やっぱり反応してきたね」
「え?」


次の瞬間、僕は左足に衝撃を受けて体の体勢が崩れてしまう。この感じは『魔弾』?あらかじめ準備をしていたのか。天衣は僕が体勢を崩したのを見て、僕に近い左手で殴ってくる。まともに受けたら間に合わない…


「『電気鎧armor第三形態third』」


ギリギリ発動が間に合って僕は体を無理やりひねり右手で受ける。まあひねるといっても右足で蹴った勢いをそのまま利用して裏拳みたいな感じで受けただけだけど。


「!?」


天衣の左手に触れた瞬間、僕は後ろに弾き飛ばされていた。何が起こったのかわからず自分の右手を見てみれば紙やすりですったかのごとく擦れていた。ちょっと出血もしている


「これは…」
「紅の『電気鎧armor』を真似してみたんだ」
「なるほどね」


つまり風をまとっていると。確かに鎌鼬とかも結局は風だしね。強い風は皮膚をたやすく切り裂く。天衣の周囲を強風が吹いているとすればこの傷の正体も僕が吹き飛ばされた理由も明らかになったな


「近づけない…いや逆にチャンスか」
「さて、降参してくれないかな」


誰がするかっていうの。僕が負けを認めるとしたら僕が死ぬか気絶するかのどちらかだ。僕はまた接近する「『放電thunder』」


「?…無駄だよ」


電気鎧armor第三形態third』の状態でもそれなりに高く跳ぶことができる。ジャンプして上から殴りかかる。


「『鎌鼬』」
「『電気の領域field』」
「ここで『領域』か」


風の刃が飛んでくるけどそれは『領域』を使うことで全部弾き飛ばす。連続で飛ばしてくるから後のは防ぐことはできないけど数自体は多くないしそれは『電気鎧armor』を盾にして受ける。肩とかが切り裂かれたけどこれくらいなら問題ない


「強行突破かよ…『風』…あ」
「甘い!」


天衣は『風』を使おうとしたのだろう。でも、それをするには僕は天衣に近づきすぎていた。つまり何かと言えば、この位置で天衣が『風』を使えば僕はきっとかなりのダメージを負うことになる。それを天衣は嫌ったのだろう。今までのと比べるとかなり弱い風だ。だから僕は吹き飛ばされることなく天衣にたどり着くことができ、そのまま天衣の顔を思いっきり殴った。


「くっ、でもこれで距離ができたから『風の舞』」
「『誘導root』」
「え?」
『テンイの体にあいつの魔力があります…すぐに取るわ』


そいて一度でも僕が殴ることで僕の電気を天衣に送り込むことができた。そしてその電気を利用して天衣の魔法をずらす…精霊は厄介だな。すぐにこの仕組みに気がつくなんて…でもその隙が仇となったな


自分の魔法が思うように発動しなかったことに天衣は驚いてしまった。そして、天衣はそこで止まってしまった。


「『放電thunder』」
「うわあああ」


電撃でまずは一撃入れるとその後に左足で蹴りつける


「うぐっ」
『テンイ、魔法を使いましょう』


シルフリードがそう提案してくれているが残念、天衣は僕のことをあんまり傷つけないようにしているみたいだし魔法の発動はないだろう。


「『地雷trap』」


だから天衣の動きを縛る。かなり強い電気が流れているから痺れて動けないでしょ。でも


「くっ、『風』」
「ま、さすがに発動するよね」


さすがにこれは一旦距離を取らざるを得ない。でも、もう勝負はついた。天衣に向かって手をかざした僕を見て天衣は言う。


「また俺の動きを制限するのか」
「いいや、違うよ『遠隔起動remote』」


その瞬間、天衣の肩の付近が爆発して、そのまま天衣は地面に倒れこんでしまった…さすがに殺すわけにはいかないから肩とかにしておいたぞ。ま、実践なら僕が先に死んでいたかもしれないけどさ。だからかな、勝ったけどどこかスッキリとしないな


『そりゃ相手は正々堂々としていたのにあんたは卑怯な手を取り続けていたしね』


ま、そうでもしないと勝てなかったからいいけど…ああやっぱり死ぬ気で戦って欲しかったな。


『そりゃ無理よあの子、そんな覚悟はまだみたいだし…だよね?シルフィ』
『そうですね…むしろなんでその子がそんな経験をしているのかが不思議ですけど』
『色々あったのよ』
『そうですか…ねえテンイとかから聞いて入るけどあなたの名前は?』
「僕?僕の名前は紅、紅 美頼」
『クレナイ ミライ、ですね。わかりました』
「ああ、そうだ。天衣が起きたら伝えておいてよ…殺すつもりじゃないと僕に勝てないよって」
『そうですね…まあそれとなく伝えておきますよ』
『ま、こいつが特殊だからそこまで気にしなくてもいいけどね…それにこんなのがたくさんいても困るし』


おい、こんなのはさすがにないだろ『それはそうですけど』いや、シルフリードも同意しないでもらえませんかね…ってあれ?シェミン先輩とハルさん?


「お疲れ様ーってその様子だと勝ったのはミライか」
「そうですね」
「そっかーはぁ」
「そちらは…ああ、シェミン先輩が勝ったんですね」
「そうだよあー。シェミンに勝ちたかったけど壁が厚すぎるって」
「てことはこちらの勝利ですね」
「そうなるな。ひとまずはおめでと。ま、僕たちも敗退したわけじゃないし残りで挽回するよ」
「そうですか」


予選はトーナメント形式で行われる。さらに上位2チームが突破ということを考えるとつまりは一度なら負けてもなんとかなるということだ。まあ負けることを良しとするギルドはいないだろうけどね


「それじゃあ辛いけど次の試合の予定を決めないとな…ミライこの後時間ある?」
「あ、はい。大丈夫です…ではシェミン先輩、いってきますね」
「うん…いってらっしゃい」


そして僕はハルさんについていった。次の対戦相手を決めるために

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