電気使いは今日もノリで生きる

歩海

認識の違い

葉月二週目風曜日


魔法を発動させる。やはりというべきか『電気鎧armor』の形態を同時でいくつか使うことは意識しないとできないようで『第三形態』は切れてしまった。それと同時に右手の力が抜ける。どうやらこの魔法は強制的に体を動かすことはできないみたいだ。


「なら、時間をかけるわけにはいかないな」


とにかく走ろう。でも動けるのはこの『領域』の範囲内だけ。そしてそれはシオン先輩に気付かれてしまうわけにはいかない。幸いにしてさっきの攻防でシオン先輩は『領域』の中にいる。だからまずは、


「はっ」


加速して今度はこちらからシオン先輩に近づく。先輩が避けようとしたけど僕の方が早い。そのまま腹に一撃を入れる。ここで追撃を決めればいいんだけど今は右手を動かせないのでそれは無理。一旦距離をとって後ろに下がったけどすぐに飛び上がり先輩の背後を取る。振り向かれる前に回し蹴りを叩き込み、バランスを崩させる。


「『水の玉』」
「『放電thunder』」


水の玉が出現したけどそれは僕の電撃で全部分解されたみたいだ。今の状態の時は通常時と比べても威力が高まっているような気がするな。あ、もしかして今なら


「『電気の玉』…はできないか」


『第四形態』の時のように使えるかなって思ったけどそれは無理だったみたいだ。まあそれはいい。できることを探すのも大事だけどあんまり探索しすぎてもよくない。てかなんで僕は初めての魔法をシオン先輩というなかなかに強敵に使っているんだよ。


「…」
「逃がすか!」


シオン先輩が距離を取ろうとしたのでそうはさせないと僕は回り込んだりする。でも絶対に『領域』から出ないように心がける。回り込んでは蹴りを入れたり殴ったりする。先輩は水の玉を作り出したり氷の槍を作り出したりしているけど僕の電撃で全部消し飛ばすことができる。というか段々自分の電撃が強まっている気がするけどどういうことなんだろう。これもこの魔法の効果なんだろうか


「『水柱』」
「なんの!」


目の前に水の柱が生まれたけどそれを蹴り飛ばす。そしてシオン先輩に近づいてまた一撃入れる。あ、今の攻撃で先輩が『領域』の外に出てしまった


「…『氷の槍』」
「まじかっ」


先輩が外に出てしまったら接近できない。こんな時にも遠距離魔法が使えないなんて…


「『創造creat』…うおおおおおお」


砂鉄の剣を生み出して斬りつけようとしてもそれは水の壁で防がれてしまう。もっと細かく攻撃することができれば突破することができるはずなのに。なんで僕は『電気の玉』みたいな魔法を使うことができないんだろう。どうして…


放電thunder』とかで電気を作り出すことはできるのにそれの形態を変化することはできないのか。わからないけどもし、最初から「電気」があるのならそれを元手に様々な形に変化することができるようになるのかな…って今考えてみれば水とか氷とか火とかそもそも自然界に普通に存在する物質だよな。


砂鉄の剣を振り回しながらそんなことを思う。ん?砂鉄の剣?もしかして…これなら


「砂鉄ならここにある・・・・・


そうだよ。てか今更すぎるか。砂鉄は剣のようにつなげるかそれか適度に分散させて爆発させるかぐらいしか思いつかなかったけどこういう用途というか使い方もできるだろうな。


「それで…どんな形にしようかな」


いや、どんな風に砂鉄を扱えばいいんだ?でもまずは砂鉄を集めるところからだよな。『創造creat』で砂鉄を集める。そしてそれを一点に集約していく。イメージとしては一つの巨大な塊にしてそこから小さく砂鉄を吐き出していく感じ。それでいいや


「『砂鉄の…雨』」


ある程度の大きさに砂鉄を集めてそれらを水にぶつけていく。一つの大きな塊ならそれを防いでしまえば終わりだが今みたいにたくさんの物質をぶつけてしまえばたくさん、砂鉄が水の中に侵入していく。僕の電気をまとった砂鉄がたくさん水の中にある


「『遠隔起動remote』…」


壁を爆発させる。壁の向こうにいたシオン先輩の姿が見える。爆発するとは思っていなかったみたいで少しだけ驚きで動きが止まってしまったみたいだ。まあそりゃそうなりますよね勝手に干渉したんだし


そのまま突っ込んでいく。『領域』の外に外れてしまうけどでも、勢い自体はなくならないからね!


「『電気鎧armor第三形態third』」


魔法を切り替えて走る。切り替える直前にできるかぎり加速をしておく。そのままの勢いで近づくと


「目を覚ましてください!」


シオン先輩を思いっきり殴る。…うん、冷静に考えてみることができればきっとここら辺おかしいよね。僕思いっきり先輩を躊躇なく殴っているし。まあいいや。


「『水の…』」
「いまだ!『誘導root』」
「???」


よし、これで動きを制限できるぞ…?あれ、すぐに弾かれてしまった。そっか今シオン先輩はあの王様に操られているわけだしさらにその上から洗脳じみたことをしてもあんまり意味ないのか


「うっ…ミライ…?」
「シオン先輩!」


急に意識が戻ったかのように声を発した。僕の魔法を弾いたことで一時的に洗脳の力が弱まったのか?


「…タイミングを合わせてくれ『Water』」


水が生まれてシオン先輩の体を包んでいく。えっと、これはどういう?


「ミライの電撃で僕を思いっきり感電させるんだ!そうすれば…できる!」
「…わかりました『放電thunder』」
「ぐぐぐっ」


シオン先輩の体に電撃を当てる。その結果水が電気を通し身体中に電気が行き渡る。これ下手したら感電死するんじゃないのか?大丈夫なのだろうか。そんなことを心配するくらいなら少しは加減をしろって話だけどさ。今結構本気で電撃を打ったし


「…」
「ちょっ、シオン先輩?」


しばらくの間シオン先輩はピクピクしていたかと思うとそのまま倒れ込んでしまった。えっと…これどうすればいいのだろうか。とりあえず引きずっていけばいいのかな。それとも電撃を当てて目を覚まさせてあげたほうがいいのだろうか


「引っ張っていくのも面倒だし自分で動いてもらうか『放電thunder』」
「うぎゃああああああ」
「よし、おきた」
「お前もっとまともな起こし方あっただろうが」
「僕にそんなエロげのヒロインみたいなのを期待しないでください」
「エロゲ?ヒロイン?」
「あ、気にしないでください」


どうやらこのあたりの知識はないみたいだな。まあそれもそうか。丁寧に解説してあげたほうがいいのかもしれないな


「ようはシズク先輩が先輩を起こすやり方ですよ」
「え?あの起こし方を?」
「どんな起こし方されてるんですか」
「あ、いや、昔のことな」
「ああ、そうですか」


ちょっと聞きたい気もしないこともないけれどもここは聞かないほうがいい気がするな。それよりも戻るとしますか


「いろいろと言いたいこともありますけど今先輩たちがあそこで戦っています。僕たちも向かいましょう」
「ああ、そうだな」


そして僕らは他の先輩たちを助けるために戦いの場所を戻ることにした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品