電気使いは今日もノリで生きる

歩海

作戦会議?

葉月二週目火曜日


「着きましたわ。ゆっくりとくつろいでください」


シズク先輩に案内をしてもらって僕らはシズク先輩の家にたどり着いた。はあ、にしてもここがシズク先輩の家なのか。かなり大きいな。そしてこれがシズク先輩の部屋かぁ。かなり広いな


『勘違いしているところ申し訳ないけれどここはシズクの部屋じゃないわ』
「え!?言われてみれば…確かにそんなにオシャレじゃない」
『あんたは女子にどんな期待をしているのよ』
「私の部屋も結構質素ですよ」
「そ、そうなんですね」


女子の部屋って言ったら可愛いもので埋め尽くされているのかと思ったけどそういうわけではないのかな。てか僕が夢を見すぎているだけなのか?『単に女子の部屋に行ったことないんでしょ』それを言われたら何も言い返せません


「てかミライって女子と話すの?」
「ここしばらくはお前と同じだよ!」


一ヶ月ぐらいはずっとお前と一緒にいたじゃないか。お前とほぼ同じ交友関係を結んでいたよ。ま、まあイヨさんとかは僕の方が関わりはあったとは思うけどね。


「二人とも、一体どんな生活を送っていたのでしょうか」
「いろいろあったんですよ」


シズク先輩の部屋に着いたということで僕らは情報交換を行うことにした。ダンジョンに突入してからユンさんたちと出会ったこと、イフリートとクレアが契約をしたこと。そのあとに『命』の国に行ってクローン研究が行われることを知ったこと。そしてそこで『吸血鬼の王』と戦い勝利したこと。それらを全部話した


「なかなか刺激的な日々を送っていたのですね」
『まあ「王」クラスを倒したのは素直に凄いと思うわ』
「あれはみんなの協力あってこそです」
「ですが、記憶を失うのですよね…」
「あー…」


うっかりしてた。勢い余って僕が『metamorphose』を使いすぎたことによって記憶が一部消えてしまったことを話してしまった。イヨさんのおかげでその記憶も回復することができたけど…ほんとイヨさんには感謝してもしきれない


『その件だけどもう大丈夫よ』
「どういうこと?教えてくれない?」


イフリートが意味ありげに答えてくれる。えっと、大丈夫っていうのはつまりこれから沢山使っても記憶が失われることがないってことですか。でも一体なんで?


『ミライの魔力にイヨの魔力が混ざったのよね。そのおかげでいい感じにバックアップとなって記憶が失われることがなくなったわ』


そういうことがあったのか。ちなみにだけど僕とほぼ同じ魔法を使うことができるクレアはイフリートと契約を行っている関係上記憶の乱れがないみたいだ。つまりこれでお互いに記憶を失う恐れがなくなったわけか。


「そんな危険な魔法を使っていたんですね」
「あーもう大丈夫ですよ」
「これはシェミン先輩やサリア先輩に相談ですね」
「やめてください」


多分だけどこれ知られたら怒られるだろうな。じゃあそんな魔法を作り出さなければいいって話なんだけどもまあもうしょうがないよね。たまたま閃いたんだからそれに危険な魔法は…もうしょうがないよね。『電気鎧armor第三形態third』の地点で分かりきっていることだし。あのーシズク先輩、そんな目で見ないでいただけますか?その目かなり辛いのですが。僕は変な性壁に目覚めることもありませんし


『もし目覚めてたら変態ってことで一生蔑むわよ』
「本気で洒落にならないんだけど…」
『はいはい、イフもからかわない。話題がずれているわよ』
「すみません」
『シズク、現状なにが起きているのか説明できる?私なりに説明しているけどより詳しい話が聞けるだろうし』
「はい」


シズク先輩からこの国についての説明を受ける。まあ大体のことはウィンディーネから聞いているから新しいことはあんまりない。明後日にシオン先輩とサリア先輩の結婚式が行われるとか今王宮がどんな感じなのか。ただ、気になるのはシズク先輩がここ数日見張られているらしいこと、これってつまり僕らのことが伝わっているんじゃないのか?


「そうですね。だから…」
『明日の朝、殴り込みに行くしかないわね。シズク、相手の人数と情報を』
「はい、まずはですね」


この国でおそらく僕らの敵になるであろう人物のことを教えてもらう。ただ、その中にシズク先輩やシオン先輩の父親の名前があるのが意外だった『シオンの父親はある意味元凶よ』それはそうなんだけどさ…シズク先輩は辛くないのかな


「私は自分の信じているものを決めていますの。だから、あとは進むだけですわ」
「そういうものなんですね」
「やっぱり強いですね」


先輩たちが先輩たる所以でもあると思う。こんな風に覚悟を決めきっているなんてとてもできない。今まで僕はいろいろな人たちと戦ってきたけれど身内…は絶対にありえないけど知り合いとまともに戦うことはなかった。ダンジョンの最後でクレアと戦ったのは…あれはノーカウントで。でも、もし敵として角先たちが出てきたらどうするだろう。楠を始めとするクラスメートたち、フランさんたちもいる。その人たちと戦うってなったら僕は本気で戦えるのだろうか。ミイさんはまあ最初が最初だったからね


『それでも、戦うしかない。この世界はそういう場所よ』
「…そうだね」


わかっている。ここがそんなに甘い世界ではないことぐらいは。だから僕は強くなりたいわけだし


『暗くなる話はやめておきましょう。これからどうせ暗い現実をまじまじと見せつけられるわけだしね』
「それは…?」
『こっちの話。それで、どうしようかねぇ』
『あーそれなんだけど』
『なに?ウィンディ?』


突然何かを思い出したかのようなウィンディーネ。それから視線を少しだけ彷徨わせると…


『こないだもここに来てからシオン連れ去られたし…もしかしたらあなたたちの存在ばれているかも』
「?」
「えっと…?」
『館単に言えばこの家にスパイがいて…ってことよ』
「…」


なんでそんなことを失念していたんだ!?てかそういう大事なことはシズク先輩にも伝えておいて欲しいんだけど。それならばここに不用意に連れてくることがなかっただろうし


「じゃ、じゃあどうすれば…」
『まあこちらから撃って出るしか』
『それはいいわ』
『?』
『ミライ、クレア、感知魔法の準備』
「了解」
「そういうことか」


さて、感知魔法を使うのはいいんだけどどちらから使うべきかな。まあここは対人において優秀なクレアの方からがいいだろうね。


「クレア、先にお願い」
「『熱探知』…一応近くに大勢の人間がいる気配はないね」
『了解。誰かが近づいてきたら教えて。それから適度なタイミングでミライと交代』


こうして交代で感知を行なっていれば不意打ちに悩むことはなくなる。それに僕らには魔法を発動させる魔力が山ほどある(らしい)し持久戦になったとしても問題ない


『それじゃあ話し合いを続けましょう』


僕らはその日1日を使ってどうやって王宮に乗り込むかの話し合いを行った。

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