電気使いは今日もノリで生きる

歩海

限界の先に

葉月一週目火曜日


「『放電thunder』」
「くっちょこまかと。スルト、ケンゴなんとかできないのか」
「砂鉄の塊がうざったいんだ」
「小生はそろそろ魔力が切れてきたので厳しいでござる」
「あいつ、魔力化け物かよ」


よし、向こうはかなり疲弊してきているみたいだ。これは押し続ければ勝てるか?いやそうは言ってもこちらもそろそろ魔力が切れてきそうだしな。さっきからもう『感知feel』は切っているぐらいだし。やっぱり3つ同時でもかなりきついわ。


『普通それ自体無理なんだけどね』


じゃあなんで僕はこんなに可能なんだよ。結構繰り返しているから?


『それもあるけどまあなんどもなんども魔力を使い切っていれば必然的に増えるわね。あとは転移者補正』


なるほど。そういうものなのか。じゃあ最初のときに角先の充電がいっぱいになるまでに何度もなんども電気を放ち続けたのってよかったんだな。今こうして負けていないし


「そういうルドーはどうなんだ?」
「もうすぐだ」
「そろそろ貫いてくれ『放電thunder』……!」


電撃を放った直後に自分にかかっていた『電気鎧armor』が解除されたのを感じる。それだけじゃない。発動していたすべての魔法が解除されてしまった。幸い放った電撃はルドーという男のもとに向かっている。


「君の魔力が尽きたようだね。それじゃあこの攻撃で最後だ……?」


効くだろ?僕が今までお前に放っていた電撃は普通のとは少しだけ違うんだよ。いや普通のがどれだって言われてもどうしようもないけどさ


『なるほどねぇ、砂鉄を纏わせたことで電撃により高熱を帯びた鉄を電気を吸収する服に当てて無理やり溶かしたのね』
「そんなことが可能なのか」


まあ服って高熱の鉄を当てたら溶けるって習った気がするし。それにあいつの服は熱に弱いってなぜか知っていたし。


「昨日、私がルドーさんの服を脱がしましたのでその時にミライさんも見てましたよ」
「ああ、そうなんだ」


なるほどね。昨日の僕が見ていたから覚えていたっていうかわかったっていうことか。それにあの男の名前はルドーね。で、ルドーに僕の電気を与えることができたわけなので


「『遠隔起動remote』」
「しまっ」


電気をショートさせてルドーさんごと爆発させる。これで一人。あと残りは二人だ。


「なぜ魔法が使える。君はもう魔力切れなんじゃ……」
「同時に展開することができなくなっただけだ」


それに『電気鎧armor第三形態third』みたいな設置型の魔法ができなくなっただけで『放電thunder』みたいな魔法ならしばらく使うことができるんだよ。それでも膝に力が入らなくて崩れ落ちてるけどね


「ミライさん」
「まだ……まだ」


ここで倒れるわけにはいかない。まだ相手が残っている。あと二人倒すまで倒れるわけにはいかない。


「まあ三人を相手によく頑張ったと言っておくよケンゴ」
「小生に任せるでござる『鎌鼬』」


僕に向かって風の刃が向かってくる。くっ、直に受けるわけにはいかないんだよな


「『電気の領域field』」
「『領域』使いが」
「はぁ、はぁ……」


苦しい。頭がかなりふらふらする。魔力が切れかかっているのが、残り少ない魔力をひねり出した感じがする。どうする。おまけに『電気鎧armor第三形態third』が切れたことによる反動でもう動くことができない。今はなんとか魔法を吹き飛ばすことができたけれど連続で放たれてしまったら……


「……うぐっ」
「無駄なあがきをしやがって。これで終わりだ『鎌鼬』」


再度僕に向かって風の刃が放たれる。さっき『領域』も使ってしまったしこれを防ぐ手段がない。あとは首とかが切られて終わりかな。あーイヨさんの目の前で殺されてしまうのだけが少しだけ心残りになっちゃうけどイフリート、僕が倒れたあとイヨさんを頼む


「『ふむ、諦めてしまうのかな?』」
「!」
『ちっ、やっぱりいたのね』


僕の前に人の気配がすると思って目の前を見てみたらそこに立つミイさんの姿が見えた。まあ要はあいつがいるってことなんだけどね。ていうかこいつ今なにしたんだ?風の刃を打ち消した?よく見えなかった。


「『まったく明日我と再戦をするというのにここで倒れていいのか?ミライよ』」
「うるせぇ」


実際諦めてたことは事実だから何も言えない。あ、でもちょっと待ってこいつが今ここにいるということはイヨさんが


「『諦めたどの口でそれを言うのだ』」
「!……ちっ」


前言撤回。死ぬまで諦めてやるかよ。こいつの言うように諦めたらその時点で他人が決めたことに口を出すことができない。いわゆる死人に口無しってやつだ。改めて突きつけられるとは思わなかったけどね


「『その意気だ。それに我はその小娘を殺さね』」
「よかった」
「おい、お前もそいつを助けるのか。死にたくなかったらそこをどけ」
「『はあ、あいつらも貴様や炎の精霊みたいにきちんと区別できればいいのに』」
『残念だけど普通の人間は区別することはできないわ。メイはともかく、ミライが特殊なだけよ』


というかイヨさんたちがみんな電気のスキルを持っていたまあ要はかなめとなっているメイさんが僕と同じ電気のスキルを持っていたっていうのが全てなんだろうな。多分これが火のスキルとかだったら今ここにいるのは僕じゃなくてクレアだっただろうな。


「『お前ら、いい加減誰が誰だかの見分けぐらいつけるようになれ』」
「あ、あなたは」
「なぜここに」


そんな僕を放っておいてあいつはスルトとケンゴの二人のもとに歩いていく。まあ話し方とかも明らかに違うしすぐに目の前にいるのが誰なのかわかったみたいだ。彼らの目が見開くのが見える。これは、助かったとみてもいいのだろうか


「『なに、我はあの者と戦いたくてな。それより移動の準備はいいのか?』」
「え?あ、はい。大丈夫です」
「なぜ今殺さないのです?」
「『我は全力のあいつと戦いのでな。先ほども今も満身創痍。そんなやつをあ相手にしてもつまらぬ』」
「は、はあ」
「そういうものなのですか」
「『それに、そもそも貴様らの標的はあやつではなかろう?目的は達した・・・・・・。速やかに帰るがよい』」


あ、なんだか帰るみたいだ。よかった。これで無事に終わったのかな。ちゃんとみんなで家に戻ることができるんだな


「それでも一撃はいれておきたいですぞ『鎌鼬』」
「!」


再三飛んでくる風の刃、あいつの言葉も聞かずして僕に向かって放たれる魔法。時間的にはもう『領域』おw発動できるのだろうけど魔力がない。風の刃は『領域』に吹き飛ばされてかき消されることも、先ほどみたいにあいつが消し去ることもなく僕の方に向かってきてそして………




肉を引き裂き、引き裂かれた体から血が吹き出した………僕をかばうようにしてたったイヨさんの体から


「………え?」

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