電気使いは今日もノリで生きる

歩海

失っていたもの

???


「う………うぅ」


あれ、ここはどこだろう………どうしてこんなところに眠っているんだろか。あれ?そもそも僕さっき何をしていたっけ?全く覚えていない


「お、起きたか」
「あ、クレア」


部屋の扉が開いてクレアが顔を出す。少しだけ心配そうな顔をしていたからきっと今まで僕は眠っていたんだな。………だんだん思い出してきた


「クレア!あいつは、あの吸血鬼の王は」
「落ち着けミライ。それについてはイフリートから説明がある」
「イフリートから?」


というか説明ってどういうことなんだ?なにか面倒なことでもあったのか?クレアの口ぶりからすればまだあいつは倒されていないということになる。また僕もこうして生き残っているから殺されたわけでもないし


『そうねあなたもあいつも生きているわ』
「イフリート!」


クレアの横にひょこっと出現した。それで?説明ってどういうことですか?話してもらえますよね


『ええ、あなたに関係のあることだし………いいわ。簡潔に伝える。あなたはクレアと一緒に明日あいつと戦ってもらうわ』
「なんで!?」
『理由は今は語れないわ。でもこれがラストチャンスよ』


それもそうだな。何がどうなってこんなことになっているのかは知らないけれどもう一度戦ってくれるっていうのならそれはまたとないチャンスだ。クローン研究を潰すという目的を達成するために是非ともモノにしなければ


「そういえば今日はいつだ?」
『安心して日付は変わっていないわ。もうすぐ夜ね』
「まだ夜!?」


あんだけめちゃくちゃな戦いをしてこんなに早く回復するものなのか?体を少しだけ動かしてみたけれど特に問題はない。『電気鎧armor第三形態third』の反動すら消えているってそれかなりやばいぞ。


『メイに感謝ね。あの子本当に天才だわ。精霊のこの私が言うんだもの間違いないわ』
「よっぽどなんだな。てかどうして僕を治療するために外に出したんだよ」
「いや普通そういうものだろ」
「あ、そうなのか?」


まったく、こいつは一体何を言っているのだか。治療をする時はあんまり他の人間を近寄らせないのが基本だっていうのに。それにしてもメイさんというのか。治療してくれたっていうのならちゃんとお礼を言わないとね………?


「ミライ?どうした」
「頭が痛い」
「まじかまってろ今メイちゃんを」
『それはダメ』


外に出て行こうとしたクレアを止めるイフリート。というか本当に頭が痛いんだけど。どうしてだ。メイさんって人のことを考えただけでこうまでも痛むのか


「なんでだよ」
『いいから。ミライ。一つだけ聞くわ………メイって子わかる?』
「何を言っているんだ「誰だ?」………は?」


なんでクレアはそんなに驚いているんだ。彼女の名前を聞いたのは初めて・・・だぞ。あれ?どうして会ったことがないはずなのに女性ってわかるんだ?


「ミライそれって」
「そういえばここって誰の家なのか?」
『フランって子の家よ』
「ああ、フランさんか」
「メイはフランの妹よ」
「なるほどね」


もしかしたら昔にフランさんから少し話を聞いていたのかな?覚えていないけどそれで女性だとすぐにわかったのかな?後はまあ………メイって名前の響き的にかな


「イフリートこれって」
『簡単な話よ。ミライあなたは「目が覚めたんですね!」………まずいわ』


またしても扉が開かれて少女が顔を出した。あ、可愛い。その子は僕に近づいてきてそして


「………!」
「おぉ」
『あー………』
「よかったです。本当によかったです」


寝ている僕に抱きついてきた。やっぱり女の子っていい匂いするんだな………っておい。


「あの」
「目が覚めてくれてよかったです。私、私ミライさんが死んでしまうかと思っていました」


その子は僕に抱きついたままなきじゃくる。えっと、その………え?なんで僕会ったこともない・・・・・・・・子にしかも女の子に泣かれているんだ。まったくわからない。イフリートそこで笑っていないで教えてくれよ


『いや………さすがに助けたいけどどうすれば被害が少ないか考えているのよ』


被害?普通に説明してくれるだけで済むんじゃないか?何をそこまで悩む必要があるっていうんだよ。この子がメイさんなんですよね?


「イヨ?何してるのよ」
「あ、ミライさん目が覚めたんですねー」
「………イヨのあんな姿初めてみた」


ひょこひょこひょこそんな効果音が出てきそうな感じで次から次へと顔を出された。


「四つ子?」


思わずそんな声が僕の口からこぼれ落ちる。いやにしても四つ子にしたって似すぎだろ。同一人物っていうかドッペルゲンガーだって言われてもおかしくないんだけど。ていうか


「ナナさんに似てるな」
「え?」
「ミライさん?」
「あーどうしてみんな僕の名前を?」
「「「「「え?」」」」」
「ん?」


なんでみんな同じ反応を?僕そんなにおかしなことを言ったっけな?思い返してみても何もわからない。


『あーやっぱりこうなったか。最悪ね』
「最悪ってどういうことだよ」
『えっとね………』


イフリートが頭を抱えている。あれ。こいつってこんなに人間らしかったっけ?それでもイフリートが話し出そうとした時に別の人が話し始めた


「ミライさん………何も覚えていないんですか?」
「え、あ、うん」
「もしかして。全部?」
「全部?」


いや全部って言われましてもね。覚えていないから何が全部とかまったくわからないんですよね。だって僕は君たちとは初対面なはずだし………うっ。また頭が痛い


「私に、いろいろな感情を教えてくれるって言ったこととか、研究所を潰すって言ったこととか………あとは、わ、私が笑っていると嬉しいとか」
「え、えっと………」


感情を教える?なんでそんなことをわざわざ言うんだ?てか研究所ってなに?そんなものがこんな所にあるのか?てか何しれっと口説くようなことを言っているんだ?


「それ、本当に僕が君に言ったの?」
「!」
「さすがにひどい」
「それは最低です」
「そんなことを言っていたのね」
「いやだから僕は」


そんなことを言っていないっつうの。てかなんでここでイフリートは絡んでこないんだ?こういう時に真っ先に絡んでくるものだろうに


『いや〜全部わかっているとねさすがに責めれないわ』
「それは一体「もう知りません」ん?」


どういうことなのか聞こうとしたら一方的に叫ばれて僕から離れていく。あ、やっと離れてくれた。別に女の子に抱きつかれて悪い気を思う男はいないと思うけれど見知らぬ人だから少しばかり戸惑いがあるな。


そのまま少女は部屋の外に出ていく。そしてそれは僕を含めクレア、イフリート、四つ子の子達誰も引き留めることができなかった


「でもさすがに」
「ええ、まるで記憶がないような態度」
「さすがに酷いよ」
『待ちなさい』
「「「!」」」


他の子達もここから出て行こうとしたけどそれをイフリートが止めた。そしていきなり見ることができたのか急に現れたイフリートにかなり驚いている


「精霊様?これはどういう」
『簡単なことよ。本当はイヨにも話さないといけないけど今はあなたたちだけでも伝えとく必要があるわ………ま、気がついている人もいるだろうけど今クレアは記憶を失っているわ。恐らく………この国に来たくらいから』
「え?」


記憶を失っている?まあなんとなくそんな気はしていたけどさ。一方的に相手から思われているって普通ありえないし


「記憶を?」
「でも、どうして?」
『私も見ていないから全てはわからないけどミライの魔法の副作用?いやデメリットという方がいいかしらね………ねえミライあなたあいつと戦った時に「metamorphose」をどれだけ使った?』
「わからないけど………一回しか記憶がない。あいつに腹を貫かれた時に避けようと思って」
『まあそうでしょうね』
「あの」
『何?』
「ミライさんの記憶は戻るんですか?」


それもそうだ。記憶を失ったというのなら取り戻すことはできないのだろうか。でもそれに対しての返答はかなり厳しいものだった


『残念だけどそれは無理ね』

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