電気使いは今日もノリで生きる

歩海

早く移動しよう

葉月一週目月曜日


「男二人で旅とかやっぱりミライくん・・・」
「待て!それは誤解だ。僕の恋愛対象は女子だ」
「じゃあ今気になってる子を教えてよ」
「えぇ・・・」


やっぱりそんな誤解が生まれてしまったのか。なんでそういう方向に発想が飛ぶのだろか。これがいわゆるそういうタイプの女性なのだろうか。SNSとかいろいろとね、漁っているとそういう方がいることは知っているし僕もまあ・・・うん、女性と女性とかね?わからなくもないから趣味としてはわかるんだけどさ、いざそれが自分に降りかかってくるとは思いもよらなかったんだけど。


「どうしたの?言えないってことはやっぱり」
「わかったよ、同じギルドの先輩だよ」
「へえ〜そうなんだ〜あの女の先輩よね!なるほどなるほど、助けられてときめいちゃった感じかな」
「もういいだろ」


やっぱり言うんじゃなかった。こうしてからかわれることがわかりきっていたっていうのに・・・てかなんで真っ先にシェミン先輩がちらつくんだろうね。誰か教えてくれよ『自分で考えなさい』えー。


「さっさと家に案内してくれよ」
「はいはい、わかったわよ。メイいきましょ?」
「あ、うんお姉ちゃんがいうのなら」


メイさんがいるからなのかすぐに矛先を収めてくれて有りがたいな。メイさんいてくれてよかったー。いなかったら多分これまでの鬱憤ばらしばかりにめちゃくちゃにからかわれていたのは間違いないな。


「それで?クレアくんと合流はどうする?先に案内しよっか?」
「あー・・・」


なんだかんだでクレアのことを気にかけてくれているし根っこは優しいんだろうな。それはそうと、確かにクレアと一回合流しないとさすがにまずいよな。あ、イフリートクレアに居場所を教えることとかできますか?


『んー?できるわよ?だから一回案内してもらったほうがいいわね』


わかりました。イフリートがここまでいうのなら問題ないだろう。なので僕はフランさんたちに先に家まで案内をしてくれるように提案する。


「それでなんとかなるから案内してもらえる?」
「ええ、いいわよ。じゃあ向かおっか」


フランさんの案内のもと、ひたすら進んでいく。メイさんが裏路地を通ったのは要は近道のためだったらしい。とはいえさすがに女の子一人でこんなところを歩くのは賛成しないけどね


「どうしてミライさんがそんなことを言うんですか?」
「え?そりゃあ助けたから?」
「一度助けたくらいで保護者ズラはやめてください」
「ウッ」


この子、なんて的確に僕の心をえぐりにくるんだ。そんなことを自分よりも年下(だよね?)の少女から言われるダメージは計り知れないんだけど。あれ?そういえばナナさんと親戚だって言ってたよね?ということはこの子の親戚はみんなこの辺りに住んでいるのかな


「ねえフランさん」
「なあに?」
「フランさんの親戚にさ、ナナさんって女の子いるでしょ?」
「え?誰それ、そんな名前の人いたっけ?」
「え?」


ものすごく予想外の反応が返ってきたんですけど。え、だってメイさんは確かにそんなことを言っていなかったっけ?もしかして僕の聞き間違え。それがありえそうで困る。イフリートと話している時っていわば二人と同時に話しているようなものだしね。聞き逃しとかがあったとしてもおかしくない。


「だってメイさんが・・・」
「!、もしかしてメイ・・・」
「お姉ちゃんには関係ないでしょ」
「それは・・・」
「あー・・・」


これは、なんか僕地雷踏んでしまったっぽい?ものすごい微妙な空気になってしまったんだけど。えっと、ねえイフリート。この世界にはさ、なんていうか


『ああ、もちろん妾の子とかいう遺産問題はあるわよ?てかミライの世界よりも貴族文化とかがある分多いわ』


部外者である僕が突っ込んでいい話じゃないのだろうな。ここはさりげなく話題を移行させるのがコミュニケーション能力向上のテクニックだ。


「え、えっと。僕さこの都市とかあんまり知らないんだけど、フランさん教えてくれないかな?」
「別にいいけど・・・ミライくん何聞きたいの?」
「あー」


『そこで黙るからあなたはコミュニケーションが下手だって言われるのよ』


だって興味ないし。今興味あることって言ったらどうすれば強くなれるの?とかシェミン先輩の正体は?とかセリア先輩たちは無事だろうかとかそういうことだから。あとはまあ・・・帰還方法とか


『やっぱりそれは気になるの?』


そりゃあね。だって僕の居場所なんてもともとこっちの世界にあるわけじゃないし。帰ることができるのならばきっとそれが正しいのだろう。でも・・・


『人を殺してしまった以上、もう戻れないっことかしら?』


そうなんだよね。僕はもう、戻ってこれない、それぐらいの覚悟をしないと、ああ頭が硬いのは自分でも思うけどさ、前に進めなかったんだよね。今更平和な世界に戻ったところで・・・って思いもある。でも今はいろいろなことが多すぎて混乱しているってのが正直な気持ちかな。


『そうねーここしばらくは私のダンジョンで死にかけてたし余計なことを考えていられなかったわよね。まあ今は落ち着いていられるからゆっくりと考えてみたらいいわ。それこそ、この都市の散策とかしながら』


続きってことだね。ああ、それならちょうどいいや


「もしもーし、ミライくん急に黙ってどうしたの?」
「そういえば時々そんな風に黙ることありましたけどどうしたんですか?」
「え、ああごめんごめん。フランさんに何を質問しようとしたのか考えてた」
「へーそれで?聞きたいこと見つかった?」
「うん、ありきたりで悪いんだけどここ『命』の国について教えてくれないかな?」
「いいわよ」


というわけで僕はフランさんからこの国について簡単に説明を受けた。「てかこれ普通に学校で学ばなかった?」いや、そもそも僕まともに授業を受けることができていないってさっき説明したと思うのですけど。


『命』の国、ライフィア、ここはどうやらいわゆる学術国といった特色を備えているらしい。『命』と言われるだけあって医療技術は他の国と比べても世界随一の先進国になっているとか。この国では日々様々な病気の研究が行われている。一つの病気に対してどうすれば適切に対処できるのか特効薬はどんな感じなのか、それを研究者たちは毎日研究しているらしい。


『そういえばこの国って感染病の特効薬をよく生み出してるのよね〜医療技術はかなり進んでいるとみていいわ』


ふーん。イフリートからみてもそうだっていうことは、相当なものなのだな。ん?ていうか


「回復魔法でなんとかできないの?」
「そんな魔法誰でも使えるわけじゃないわ適性がいるのよ」


でも、僕が知る限りシェミン先輩に四万十さん、セリア先輩、ユリさんと回復魔法を使える人かなり多いけど・・・


「それはあくまで肉体破損でしょ?風邪とかはまたちょっと別の魔法が必要なの。でもそんな魔法を使えるのはほんの一握り。というかそもそも回復魔法の使い手自体少ないんだからね」
『さすがにフェアじゃないから伝えるけどあんたの周りの人たちは相当やばい人たちだってことを忘れないでね?転移者なんてそれこそ稀代な魔法の使い手だし先輩たちも国のトップクラスだから比較するのは間違いよ。そんなユリでも血液の補充とかは無理だったじゃない』


それもそうか・・・まあ回復魔法はやっぱり貴重なのか。そこのズレだけは早いとこなくすことができて助かったよ。田舎もんと思われるのは構わないけど非常識人と扱われるのは嫌だからね


『あんたはもう十分非常識よ』


えぇ・・・え、まって?本当に?本当に僕って常識がない?


「初対面ですけど確かにミライさんは常識がなってないです」
「確かに常識を疑いたくなる場面は多いわね」
「う、嘘だろ・・・」


まさかのフルボッコ。これが僕にもたれている印象ですか・・・普通に辛い。

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